森見登美彦 著「きつねのはなし」考察その2 地理の時間

「きつねのはなし」は、森見先生の多くの作品に見られるように京都が舞台です。場所に関しての記述は実際の地名を使っているもの考えています。そこで、ここに収められている4つの物語について、どこでその話があったのか、その近さ・遠さ・違いなどについて考えます。

# このページで使われる地図は GoogleEarthPro 7.3.3.7786 で作成したものを無加工で添付しています。

注意:これより下には小説「きつねのはなし」のネタバレがあります。

全体地図

まずは物語の主要エリアを同じ地図上に書き出してみます。

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1.きつねのはなし:舞台は北東のエリアが中心です。後半の祭りで中央の吉田神社が出てきます。
2.果実の中の龍:北から南東へ細長く”私”の話の舞台が移ります。先輩の物語は検証が必要なのでここには含まれません。
3.魔:これは西の荒神橋エリアでの話です
4.水神:話のほとんどは吉田神社から東に行った、細長い緑色ゾーンの北端の屋敷で起こります。範囲外の重要地点として、琵琶湖の南も後述します。

話のあちらこちらで琵琶湖疎水がでてきます。これも同じ地図上に青・水色で描いています。蹴上発電所から荒神橋のほうへ流れている方を琵琶湖疎水、同発電所から北へ伸びていき、鴨川デルタ以北の賀茂川・高野川のほうへ流れているのを琵琶湖疎水分岐路と以降の考察では呼びます。

話を読んでいて、天城さんのいたところと水神のでてきた屋敷は同じころかも?と思ったことがありましたが、地図で見ると場所が違います。

1.きつねのはなし

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今回の舞台では北東が中心となる第一話。伏見稲荷大社などもでてきますが、話の中心は天城さんの屋敷と芳蓮堂。屋敷については鷲森神社そばとあるので、神社にピンを立てています。芳蓮堂については一乗寺としかなく結構エリア広いのですが、車で天城さんのところに行くということは南の方、琵琶湖疎水分岐路に近い方と考えてピンを立てました。

2.果実の中の龍

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先輩のアパートは、叡山電鉄脇でありかつ酔っぱらって歩いて琵琶湖疎水に行ける場所なので範囲を狭めやすいです。シルクロードノートは南禅寺そばで手にすることがあるのですが、どうもこの辺りは魔が濃いようです。

3.魔

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荒神橋を渡った先に舞台があり、酒屋は御苑のそば。かつ帰り道で高校のそばを通るので、南の方にあると考えます。道場やお寺の場所などはよくわかりませんでした。

4.水神

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舞台となる屋敷は鹿ケ谷エリア、かつ浄土寺から東に歩いて疎水を下が流れている。以上から蹴上発電所から琵琶湖疎水分岐路を北へ2㎞ほど行った場所と分かります。ここからあふれ出た水(水神)は蹴上発電所まで達します。すごいエネルギー量です。

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疎水を取水口までたどると、花江さんの故郷も含められます。水神はここまで行きたかったのではないでしょうか。

まとめ

物語の記述から、この辺が舞台になっているのではないか、ということをまとめました。話を読めば読むほど琵琶湖疎水が重要だということはわかるのですが、私は京都在住ではないので、これがどこを流れていて舞台とどれくらいの距離なのかがわかりませんでした。いったん同じ地図上にまとめると、ほとんどの話が琵琶湖疎水・分岐路そばで起きていているのがわかります。また、鷺森神社がこの水路から離れているところにも意味があるのでは、と考えて背景を想像していきます。

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