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森見登美彦 著「きつねのはなし」考察その5 物語前半

前回私の仮説を話しましたが、あれが考察全体のクライマックスのようなものです。今回は、その仮説を元にこの話をどのように解釈していったかという紹介をしたいと思います。

まずは1.きつねのはなしと2.果実の中の龍について考えます。

注意:これより下には小説「きつねのはなし」のネタバレがあります。

1.きつねのはなし

主な登場人物は4名。水神ゲームのプレーヤーが2名とその駒となった2名がいたと考えます。

仮説5:天城さんとナツメさんはある種のゲームで競っていた
直接的にものを奪ったりすることはできず、ほかの人に自主的に何かを交換させるゲーム。ある種のレアアイテムが狐の面や金魚の泳ぐお盆などであった。
これに私や須永さんは巻き込まれ、私は彼女を失いかけ、須永さんは死亡した。最後の直接対決で何かしらのレアアイテム交換に付随した強力なイベントがが発生した模様。
(妄想)病気の母が亡くなったことで何かしらのアイテムがナツメさんに引き継がれ、天城さんのマイ狐面やケモノを抑えてナツメさんが天城さんを溺死させる?

前回の仮説で述べたように、物語は水神を巡って狐と龍が争っていると考えます。プレーヤーは人間というより、それを超えた存在の化身といった感じがします。プレーヤーたちは、普通の人からすると謎の存在で、理解不能な要求・指示をします。しかし二人には何かしらのペナルティ発動条件があるようで、それらを恐れてか、二人とも時々何かに怯えるしぐさがありました。この辺のルールは直次郎が考えたと思われます。

1.天城さん:狐属性のプレーヤー
・何かしらの条件が揃うと相手を捻り殺せる
・水を恐れる?(天城屋敷は疎水から離れている)
・最後に溺死する
2.ナツメさん親子:龍属性のプレーヤー
・何かしらの条件が揃うと相手を溺死させられる
・狐アイテムを恐れる?
・ナツメさんの両親は狐面をして捻り殺される
・先輩の話の中でナツメさん曰く”いずれ元いたところへ帰してやるつもりです”
・最後に100年前の琵琶湖の水を開封して、水神の封印を解く
3.須永さんと”私”:コマ
・二人とも小心者で、小さな嘘をよくつく
・天城さんを恐れている
・ナツメさんも無意識に恐れ、いろいろ隠そうとする
・どんどん追いつめられる

二属性のプレーヤーが争い、最後に天城さんが破れ、龍属性が勝利しました。結果、水神の封印を解くことができたようです。

2.果実の中の龍

先輩のホラ話が今回の私の考察の大きなヒントになっているため、すでに考察1として取り上げました。

考察1(再掲):先輩は人々を繋ぐ不思議な糸に敏感に反応するようになり、そこからホラ話を描いていた。やがて糸に囚われて実際の記憶と糸の音との区別ができなくなっていく

南禅寺そばでみつけたシルクロードノートがどうして糸に反応するようにしたのかはよくわかりませんでした。ただ、「宵山万華鏡」にもこの糸に反応するような人が出てくるので、そういう素質があったのでしょうか。

この水神から響いてくる不思議な音が強力で、自らの記憶との区別がつかなくなってきているようです。ほかの話との関連で行くと次のようなことでしょうか。以下、糸に反応して記憶が干渉されることを”受信”といいます。

1.きつねのはなしとの関連?
ナツメさん、天城さんや須永さんが出てきます。バスタブを届けた時の人の描写は天城さんです。店主が須永さんといったのは何かしらのノイズか、あるいは須永さんのようだったという布袋様を誤受信したのか、創作かはわかりません。ナツメさんが最後の話で屋敷にいたのは、龍的存在がそこにいたのを受信したのでしょうか。

3.魔との関連?
先輩の話では、彼の友人が寺の息子なので、中学生の秋月に5歳くらい年上の兄でもいれば話が合うのですが、そのような話は出てきません。中学時代の、西田兄と秋月が夏尾のケモノを襲撃した頃の記憶を受信したようです。

4.水神との関連?
天満屋は誰か、というのが結構気になりました。最初見たとき毛玉のあの人かと思ったからです。かすかに近いと感じるのが伯父考二郎で、彼は最近退官した上に昔手品をやっていました。天満屋は元高校教師で幻術士です。それ以外にヒントは見つけられず、話をつなげるための先輩の創造かな、と思います。大宴会の記憶は受信しているようでした。

物語後半に続く…

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