平和が訪れるとき #シロクマ文芸部
平和とはどんな世界にあるのだろう。
彼が誕生したその瞬間、——いや、遥か昔からずっとここは戦いの世界だ。
彼も、彼の仲間も、彼らが戦う相手も、戦う理由はわからない。もはや戦う理由があるのかさえ、わからないままだ。
彼らは人間によって造り出された。
始まりはもちろん人間同士の戦いであった。しかしそれではおさまりがつかなくなった。
そうして造り出されたのが殺戮のためのロボット。
人間同士の戦いは、ロボット同士の戦いへと託された。
世界のあらゆる叡智の結晶として造り出されたロボットには死、——つまり彼らにとって破壊されることは訪れない。
無敵のロボットだ。負けることはない。これで世界に平和が訪れる。
発明者たちは歓喜し、人々から称えられた。
しかし、殺戮ロボットはこの世界から人間さえも消してしまった。ひとりだって残ってはいない。
街も森も川も山も、なにもない。
何千何万ものロボットが、戦うことだけしかできないロボットが、決して破壊されることのないロボットだけが、この世界に残っているのだ。
ただただ戦えと命令されたロボットたちは、その命令を止められることさえない。
破壊することしか知らず、けれどそれは相手も同じであり、相手を破壊することはできず己が破壊されることもない。
まさに矛と盾の逸話のようだ。
永遠に終わることにない戦い。
平和とは、この世界そのものが破壊されたときに初めて訪れるのかもしれない。
#シロクマ文芸部 企画に参加しました。
まだ他のかたが書かれた作品を読んでいませんが……
ほのぼの作品がたくさんあるのでは~?? という予想をしながら、気がついたらものすごく殺伐とした物語が出来上がっていました。
読んでいただきありがとうございます。
2023.08.04 もげら
シロクマ文芸部 企画参加ショートショート:
・街クジラ お題:「街クジラ」
・今日は誰の日? お題:「私の日」
・私の日制度、導入 お題:「私の日」
・鍵穴を探している お題:「消えた鍵」
・ピアノの秘密。 お題:「消えた鍵」
・時計の針が止まるとき、それは食事の時間 お題:「食べる夜」
・楽しい時間 お題:「書く時間」
練習 ショートショート:
・君と何をしようかな
・台風はアイスクリームを食べる
・ペンギンのドライブ