小さな手、大きなぬくもり #シロクマ文芸部
北風とたわむれていたワタシを誰かが捕まえた。
小さな手。
「ママ、ママァ」
男の子がママを呼んだ。
「見て」
男の子はママにワタシを見せる。
少し誇らしげな顔をしている。
「落ち葉? きれいな色だねぇ、拾ったの?」
「つかまえたの、あのね、とんでてね、それでね、つかまえたの」
彼にはワタシが飛んでいるように見えたんだ。
ホントはワタシは飛んでたわけじゃないんだけど。それってなんだかステキ。
「飛んでたの? へぇ、すごいね」
ママはきっと、一生懸命に彼が言おうとしたことを考えたはず。
驚いたような顔をしたけど、すぐに感心のことばを言って、温かい笑顔を見せた。
「あのね、これもね、ペタペタするの」
次に男の子が言ったことにも、ママはちょっとだけ考える様子を見せた。
もちろん、ワタシにもわからない。
「あっ、わくわく帳だね。うん、そうしよう、そうしよう」
わくわくちょう?
ママにはわかったみたい。
わくわくちょう。わくわくちょう。
……あ、わかった、かも、しれない。
わくわく帳、だ、たぶん。
わくわくするようなことを集めているんだ、たぶん。
彼はワタシをその小さな指先にそっと、だけど落とさないようにしっかりと持ってくれている。
指先からは彼の温かさが伝わってくる。
ワタシはもう飛べなくなるけれど、それでも彼の体温にワタシはどこかホッとする。
彼のわくわくのひとつに、ワタシはなれるんだ。
それはワタシを、とってもわくわくさせた。
#シロクマ文芸部 企画に参加しました。
久しぶりに参加できました〜〜◎
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2024.12.08 もげら