わたしは犬である。名前は・・・今はもうない。
その昔、軍人として地元と幼馴染みと別れて新生活を手に入れた。そこで腕を買われて
秘密の部隊に入れられて、たくさん殺したよ。スゲーたくさん。狩りをおこなった。
そしていつしか、いや始めからだったかもしれない。犬になった。
犬になったとき、家族が死んだ。実家がなくなった。片腕を失った。職も失った。
負傷による病気除隊で野放しになったわたしは実家のあったはずの故郷に帰ってみた。
実家のあった焼けた土地と残骸を前に立ち尽くしていると、偶然幼馴染みがそこを通った。
「あれ?もしかして■■■?どうしたの?いつ帰ってきたの?え・・・その腕どうしたの?」
わたしはなにも言えなかった。ただ泣くことすらできず、鳴くこともできなかった。
わたしは幼馴染みから黙って目をそらした。すると、なにかを察したのか幼馴染みは
私を抱き締めた。
「わたしは味方だよ」
そういってくれた。わたしはつい口に出した。
「居場所がほしい。わたしは犬になった。どうか私を拾ってほしい」
こうして、わたしを拾った幼馴染みは独り暮らしをしているアパートにわたしを連れて帰った。すぐにわたしの頭を撫でてきて、いつのまにか押し倒されてなすがままにされた。
抵抗はしなかった。するわけがない。わたしは犬で、彼女は飼い主だ。飼い主に犬は逆らえない。だが、嫌な気持ちはなかった。ここに愛があった。こうしてわたしは彼女に飼われることになった。
わたしは犬である。名前はまだ・・・ない。

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