みなも舎
カフェにまつわるエッセイです。
おやつにまつわるエッセイです。
あんこにまつわるエッセイです。
ごはんにまつわるエッセイです。
「バスクチーズケーキのバスクってなんですか」 「スペインのバスク地方のチーズケーキのことですよ」 「なるほど…!ふつうのケーキと何が違うんですか」 「高温でがっと焼くんです。あとは粉っぽさが普通のケーキより少ないかな」 ✳︎ はじめて「バスクチーズケーキ」を食べたのはついこの間のこと。 がらりと秋の空気に変わり、そよ風をあびながら向かった先の「喫茶ストーブ」さんで、バスクチーズケーキに出会った。 いつもは絶対そんなことしないのに、つい質問攻めしたくな
実家に帰らないはじめての夏。 花火もない。夏祭りもない。フェスもない。(そんなに毎年行かないけど…) 実家に帰る途中の高速バスから見える景色が少しずつ緑に変わる時とか、お盆過ぎたあたりから急に夜が涼しくなるあの感じとか、それを体感できないまま過ぎていく夏。 楽しみにしていたことを次々とドタキャンされたような寂しさを抱えながら、夏を感じるきっかけは、セミがうるさく鳴いていることくらいかもしれない…。 油断すると減点方式な思考になりがちな自分のために、心躍った出来事を書き記そ
ついてないことが多すぎて、くさくさしていた。さっきまで晴れていたのに、台風みたいな雨と風でずぶ濡れになったり、お気に入りのグラスが割れて粉々になったり、行きたかったお店は臨時休業だったり。 その日も朝から洗濯機を回し、朝ごはんを作り、化粧をして…いつも通りの普通の休日だった。それなのに、いつも通りのんびり寝転ぶ夫が憎たらしく思えた。天気は、どんより曇り空だった。 全部がくだらなくてつまらなくてどうでもいい。そんな日だった。 「ちょっと、そこどいて」 ソファーで化粧水をパ
小学生の頃、大好きな洋食屋さんがあった。 老夫婦が営む「ドンキホーテ」という名前のお店だ。休日になると、家族4人でよく訪れていた。 お目当てはカニクリームコロッケだった。外はサクサク、中はドロッとチーズのような濃厚で熱々なクリームが溢れだし、絶品だったのだ。 母に「何食べたい?」と聞かれると、「ドンキホーテのカニクリームコロッケ!」と必ず答えていたほどだ。 わたしが中学生になった頃。残念ながら「ドンキホーテ」は閉店してしまい、二度とあのカニクリームコロッケは食べられな
大好きなお店が幾つか、知らぬ間に5月で閉店してしまった。 この街に引っ越してきてから、1人で何度も訪れたカフェ。 友達や母が遊びにきた時にも、必ず連れていった大好きな場所。 最後に足を運ぶこともできず、しばらくはその事実が、ふわふわと雲のようにただ浮いているだけだった。 * 梅雨がちょうど始まった頃。 「あの喫茶店の店主、元気かな」 ふと、ある喫茶店の店主の顔が浮かんで、久しぶりにお邪魔することにした。 お店の近くまで行くと、ガラス越しに見える花柄の壁紙。そのお
どういうわけか、家にあんぱんが5個ある。 銀座木村屋のものだと思い込んで買った玉出木村家のあんぱん(粒あん)。 あんぱんが5つ袋の中できゅうきゅうに寄り添っている姿は、見ているだけで幸福である。しかし手の平に軽く収まるくらいの小さめサイズなので、このままだと一瞬で袋の中のあんぱんたちが消えてしまいそうな予感がする。せっかくだから(?)、このあんぱんたちを一番おいしく食べる方法を探りたい。 近頃はとにかく暑い。もうノースリーブを着ているわたしは、真夏をどう過ごしたら良いの
やっと新しい生活に少し慣れてきたと思ったら、また新しい生活へ。人生に変化はつきものだけど、身体がうまいことついていかない。 5月でテレワークが終わる。4月・5月は通勤時間がない分、必然的に増えた家の時間。環境が変わって時間が増えたら、コーヒーを毎朝、当たり前のようにドリップして飲むようになっていた。 なんてことない日常の小さな変化だけれど、日常をちょっとだけゆたかにしてくれたなあと、振り返ってみて、しみじみ思うのだった。 自称コーヒー音痴のわたしは、コーヒーの味が全然わ
突然、義理のお母さんから電話が掛かってきた。 「はい、もしもし…」 「・・・・・・・・」 電話に出ると無言で、だけど、かすかに鼻をすする音が聞こえる。 「ありがどねえ、本当に嬉しくってさあ」 「???」 なんのことだろう。 そうか、母の日の贈り物が届いたのかな。 「こちらこそ、いつもありがとうございます」 うまく言葉にできず、ひたすらその言葉を繰り返す。 「ありがどねえ、本当に嬉しくってさあ」 泣きながら話すお義母さん。 時におちゃめで真っ直ぐで、とってもチャ
きっと誰にでもある“偏愛的おいしい”をこっそり聞いた時、胸がきゅーんと高鳴ってしまうのは、わたしだけだろうか。 あるシーンだけの特別な味、何度も何度も飽きずに食べてしまう物、自分だけのルール。 その人にしかない“偏愛的おいしい”は、とってもかわいくて愛おしい。 ✳︎ やさぐれた帰り道。 どうしても食べたくなるあんバターサンドがあるらしい。そしてそれは、分厚いスライスバターがサンドされているらしい。 セカアカ山フーズ先生の授業で、同じクラスのゆみさんからその話を
たんぽぽの綿毛がふわふわと舞い、洗濯物がパタパタと揺れる。気付いたら始まっていた、ゴールデンウィークの昼下がり。気温はすっかり初夏です。 そんなある日。我が家に「Mignon Bake(ミニョンベイク)」さんの、あんこを使った焼き菓子のセットが届きました!(バンザーイ!) (あんこのお菓子を作ってほしいと図々しくリクエストしたら快く作ってくださいました。涙 ありがとうございます) あんこの焼き菓子と合う飲み物も教えて頂き、勝手に“ひとりあんこパーティー”を開催。 なん
すっかり気温も春めいてきた頃、東京からお花が送られてきた。 なぜ送られてきたかというと、送ってほしいと頼んだからである。 注文先は、友人が働くお花屋さん。 その友人は前職の同期で、わたしが関西へ引っ越すために会社を辞めた後、すぐに彼女も辞めてお花屋さんで働き始めたのだった。 部署は違ったけれど、入社時からたまたま同じマンションで、一緒に帰ったり夜な夜なおしゃべりしたりした日がなつかしい。 めっきり連絡を取らなくなってしまっていたが、最近、久しぶりに連絡を取った時のこと。
最近の楽しみは、もっぱら、おやつとさんぽ。 「老後じゃん…」と友人につっこまれながらも、テレワーク前の朝やお昼休みのスキマを狙って楽しんでいます。 ◎ある日のおやつ◎先日、たまたまラッキーで手に入れた、五條堂さんの苺大福とフルーツパフェ大福。 老舗和菓子屋さんとは思えないほどモダンな包装。 フクロウのロゴとうすピンクの紐がかわいい。 ぽってりとして、ややいびつな愛らしいフォルム。 このまま、ぱくり、と食べてしまいたい。 しかし美しい断面図を見てみたい。 ぱかっ
先日大量に作ったあんこ。冷蔵で日持ち4日だったので少し冷凍してみたものの、結局すぐ食べたくなってしまって、完食。レパートリー少なめですが、あんこを家で楽しんだ記録です。 お家であんこ、いかがですか? その1:あんバタートースト(四角いバター編) 食べる時にポロポロが落ちてしまうけれど、それすら楽しいあんバタートースト。今回はチューブではなく憧れの四角いバターを。 バターを後のせしたら、全然溶けなくてもう一度温め直した… その2:あんマスカルポーネトースト
近ごろは、取り憑かれたようにあんこのことばかりで考えている。 あんこの本を買って、行きたいお店をリサーチしたのに…。 外に出られないのなら、家で炊けばいいのでは?そう思い立ってあんこを作ることにした。 少し前に見た樹木希林さん主演の「あん」という映画。 「餡作りはあずきのおもてなしなのよ。せっかく畑からきてくれたんだから」 あずきと会話しながら、丁寧に丁寧に粒あんを作るシーンはずうっと見ていられた。 あずきのおもてなし。 あずきを炊くなら、まずはあずきへの愛が
わたしはお菓子作りが大の苦手である。 しかし数か月前。ドラマ「きのう何食べた?」でシロさんが作るバナナケーキを見ていたら、「これならわたしにもできるのでは」と思い立って、何年かぶりにお菓子作りをした。 材料はバナナ、ホットケーキミックス、バター、砂糖、卵のみ。手順も混ぜて型に入れて焼くだけの簡単レシピ。 “何食べ”に出てくる料理はどれも簡単でわかりやすい。 材料を混ぜて型に入れ、オーブンで焼くこと数分。 中身が溶岩みたいにドロドロと勢いよく流れ出てきてパニックになる。
朝。いつもより1時間早く起きる。 早朝の白っぽい青色の世界をいつぶりに見たのだろう。 カーテンをサーッと開けたら、そこには山が連なる自然があってほしかった。山に囲まれて育ったわたしは、いつだって山が恋しい。でも目の前に見えるのは、隣のマンションと近くの高速道路だけ。 そのことを夫に言うと、「空が見えるからいいじゃん」と言った。 たしかに、窓越しに見えるほんの2割程度だが、空はすごく綺麗だった。 今ある目の前の物だけをちゃんと見れば、そのことに気付けたのかなと少し反省した