見出し画像

緊急事態宣言中の海、あるいは北海道での赤潮について レプンカムイ

「緊急事態宣言」

今ではもう聞きなれてしまったという方も多いのではないだろうか。
 新型コロナウイルスの感染拡大により発令された緊急事態宣言も、当初は人々の危機感を煽り、感染予防対策への画期的な措置かと思われていたが、今では、はた迷惑な宣言へと変わり果ててしまっているように思う。
 そんな緊急事態宣言を、これから最盛期を迎える秋・冬の味覚にも発令しなければならないようだ。
 
 今秋初めから北海道にある道南地域にて発生していた赤潮により、北海道の秋を彩るサケの定置網漁やウニ養殖が被害総額数十億円~百億円を超える壊滅的な危機を迎えている。特に「ウニ」は生育に長い年月がかかるため、今回の赤潮によって今後数年の見通しが立たない状況である。

 「地球は青かった」という名言があるように、海は青い。この青さは、端的に言えば、海が青色以外を吸収しやすく、反射された青い光が我々の目に届くことで見えている色だ。
 「赤潮」は、多発する海域の瀬戸内海沿岸に住む人々は聞いたことがあるかもしれないが、その名の通り海が赤く(実際には赤~茶色く)見える海洋現象である。

 主な原因は、大量増殖した植物プランクトンであり、先ほどの海の色と同じく、この植物プランクトンたちが反射した光が、色付いて見えているのである。目に見えないほど小さな生き物が、大きな海を濁らせるほど増殖すると考えれば、この現象が如何に大規模な海洋現象かが分かるだろう。
 異常発生したプランクトンたちは、もちろん海中の酸素や栄養素を大量消費し、さらには濁りによって日光をも遮断し、有毒な物質を生成する種もいるため、海洋生物にとっては生死を分ける現象だ。

 ここまで読んでいただければ、養殖や定置網といった閉鎖空間に対して赤潮が起こった場合、その中にいる生物が壊滅状態になるのはご理解いただけるだろう。
 また、現在日本の漁業を支えているといっても過言ではない養殖業がこれほどの被害を被ることは、漁業の未来を揺るがすことになるのだ。
 
 地球温暖化による海水温度の上昇のみならず、生活排水に含まれる成分もこの赤潮に影響を与えている。環境の変化による不漁や漁獲対象の変化は、近年特に問題となってきている。
 因果応報。我々一人一人の日ごろの行動が、美味しい食卓へと繋がっているのである。食に感謝し、また、その食材に巡り合うために、今何をすべきか。ごちそうさまのついでに考えてみてほしい。


【赤潮の成因】
キーワード:海水温、生活排水、海流、栄養素
 考えられる赤潮の原因の一つとして、人間活動から排出される排水がある。沿岸に住む植物プランクトンとその餌となるバクテリアにとって、人間の生活から川を伝って流れてくる“栄養素”は豊富な栄養源となる。特に、瀬戸内海のような閉鎖的空間では栄養素が滞留しやすいため、赤潮の発生も頻発することが考えられる。

【対策】
 私の地元である兵庫県では、生活排水に含まれる成分の制限を厳しくすることにより、赤潮を抑制する対策をとった。もちろん、この施策により、瀬戸内海へ放出される栄養分が減り、赤潮は減ったように思えた。

【新たな問題】
 抑制した栄養分は、これまで守られていた養殖業への栄養分の供給を断つことになったのだ。赤潮対策のために抑制したことで、瀬戸内海の主要水産物の一つであるイカナゴやタコ、エビなどの生産量が減ってしまったのだ。

【好況と不況は隣りあわせ】
 海へと流出する栄養分が多い地域では、生物が良く育つため、養殖業が盛んになる。特に大雨による山からの栄養分の流入などがあれば、養殖業者も万歳である。
しかしながら、豊富な栄養素は赤潮を引き起こし、養殖魚を壊滅させる。このようなジレンマの中で、現在の養殖業は営まれているのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?