ミスチルと私

15歳のとき、高校受験失敗という人生初の挫折を味わった。中学時代の3年間を勉強に捧げたのにもかかわらず、第1志望の高校には手が届かなかった。絶対に大学受験ではリベンジしてやるという思いを持ちながらも、なかなかその現実を受け入れられなくて立ち上がれなかった。

そんな感じで悶々と過ごしていた高1の夏、あるアーティストとの出会いが、私の人生に大きな転機をもたらすことになった。

それはひょんなことからだった。現代文のメタファーの授業で、例として用いられていたのが、ミスチルのHEROという曲の歌詞だった。

人生をフルコースで深く味わうための     幾つものスパイスが誰もに用意されていて                     時には苦かったり渋く思うこともあるだろう  

その歌詞を読んだ瞬間、思わず涙が浮かんできた。というのも、人生で起こるのは必ずしも楽しいことばかりではなくて、辛いこともあるけれど、それがあるからこそ人生を堪能することができるというメッセージに大きく心を揺すぶられたのだ。そしてそれはやり場のなかった悲しみに、けりがついた瞬間だった。

その後、そのような歌詞を作る"ミスチル"というバンドは、どのような音楽を奏でるのだろうかと思い、彼らのCDを手にとるようになる。中でも、終わりなき旅の歌詞は絶望を味わった私の心の傷口に深く沁みた。

誰の真似もすんな 君は君でいい       生きるためのレシピなんてない ないさ

このフレーズを聞くたびに、何度も涙を流した。

生きるためのレシピなんてない。私は第一志望だった高校に行くことしか想定していなくて、それしか正解の道はないのだと信じていた。だけど、本当は決まったことなんてなくて、他の道でも間違いではないということを思い知ったからだ。それをきっかけにいい意味で、少しずつ自分の人生を肯定できるようになり、現実に向き合うことができるようになっていった。

綺麗事かもしれないけれど、多分、高校受験で挫折していなければ、ミスチルの良さや奥深さに気づくことはできなかっただろうし、そもそも本望ではなかった高校に通っていなければその現代文の先生と出会うことがなかった訳なので、ミスチルともこうして出会えていなかったかもしれないと思う。正直、ミスチルの音楽のない私の人生は想像できないし、したくない。というか、ミスチルを知らずに15年間も生きていたことが信じられない。彼らの音楽のおかげで人生は2倍も、3倍も充実した。私の人生はミスチルで成り立っていると言っても過言ではない。ミスチルの音楽があれば、どんなことが起こっても私はきっと生きていけるという確信がある。ミスチルと、ミスチルを知るきっかけを与えてくれた現代文の先生には本当に感謝している。本当にありがとう。


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