アニメ「どろろ」感想叫び場(2)
前回に引き続き、2019年版アニメ「どろろ」の感想をつらつらと書いていこうと思います。
自己満記事ですが、公開はするので、もし見てない人でネタバレ禁止勢の方がいれば回れ右!です!()
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「どろろ」感想(3) 多宝丸
前回、百鬼丸について色々と書いたので、今回は多宝丸についての感想をば。
■何不自由なく育てられた御曹司
多宝丸は醍醐景光の次男で、百鬼丸の弟。
鬼神との約定によって何もかも奪われ、生家すら追われた百鬼丸に比べ、
五体満足で生まれ、醍醐景光の後継息子として生を受けた多宝丸は、醍醐の国で何不自由なく育ちます。
私は性格が悪いので、初めは
(主人公サイドが百鬼丸だから、多宝丸はワガママ坊ちゃんみたいな描かれ方をするのかな...?)
と思っていました。
しかし...
出てきた多宝丸は、驚くほどしっかりした少年でした。(まさかや!)
それもそのはず、醍醐の国の次期領主ですもん...あの厳格でザ・支配者思考の景光パッパの元で育てば、そりゃあしっかりした息子さんになるでしょうね...
与えられたものを存分に受け、剣術にも励み、もちろんアホではなさそうで、期待の次期領主...
(気になるのはマッマである奥方がなんとなく百鬼丸のことを引きずって、多宝丸へしっかり愛情を注いでいる描写があまり見られなかったことぐらい)。
奥方の態度には疑問を感じつつも、領主の息子としてすくすく育ってくれているようでオバチャンは安心したわよ(誰)...
■若気の至りと悟り
醍醐の国の村でクソデカ蟹の鬼神が出た時は、助けて欲しいと懇願する村人の願いを「妄言やろ、無理な。」と突っぱねる侍たちが多い中、
「俺が倒してやる!」と鬼神退治を請け負い、民の声を聞き、寄り添う姿勢を見せた多宝丸。
ただのすげぇいい奴なんだよな...
まあ、領主になる上では無理なものは無理だと見限って捨てるという取捨選択の能力も必要になってくるとは思うんだけど。まだ若いからね〜多宝丸は。
クソデカ蟹は多宝丸の渾身の策を実行しても仕留めるのが難しいかなりの強敵...
この時は百鬼丸がお助けマンの如く訪れて、従者の兵庫も陸奥も助かって良かったね〜という感じ。
無茶はいかん、というのはここで学ばなかったのかな...?と思いきや、この子、意外と最期まで無茶するから愛おしいのですよね。笑
その後、クソデカ蟹を倒した謎の美少年が自分の兄貴であること、鬼神との約定で兄貴の身体が奪われたこと、その兄貴の犠牲で醍醐の国は繁栄したこと...これを知ってしまった多宝丸の気持ちはいかばかりか。
兄貴の犠牲で醍醐の国が受けていた恩恵はそのまま、多宝丸も恩恵として受けているってことですからね...(シンドイヨー)
多宝丸には相反する想いが渦巻きますよね。
醍醐の国の繁栄のために犠牲になった兄・百鬼丸を助けてあげたい。
△
▽
醍醐の国の民のために、今後も豊かな国であり続けるために兄を犠牲にし続けなければならない。
上が性善説、下が性悪説とでも言いましょうか。
こんな選択を迫られる弟も、ずっと犠牲になっていた兄も可哀想すぎるでしょ...役満だよ...(泣)
良い子ちゃん多宝丸が選んだのは後者、
「醍醐の国の民のために、今後も豊かな国であり続けるために兄を犠牲にし続けなければならない。」
の方でした。
考えてみれば、当たり前なんですよね。
彼の立場は領主の息子。醍醐景光が家督を譲るかなくなりでもした場合、彼が跡を継ぐわけです。
つまり、何よりも誰よりも領民の事を考えていなければなりません。
もしここで、鬼神との約定を放棄して、再び荒れ荒んだ醍醐の国に逆戻りしてもみたら...
たくさんの民が飢え、命を落としてしまう。
百鬼丸ひとりの犠牲と、大勢の民の犠牲。
将来の領主として、これほど辛い取捨選択はないと思うけど、(泣)
結果彼は民衆に寄り添う事を選んだのですよね...まさに苦渋の決断。
もちろん、命の重さは数に関係なく全て等しく重いもの。百鬼丸ひとりの犠牲ですら、本来許したいものではなかったでしょう。
しかし、支配者としては時に、功利主義的な「最大多数の最大幸福」を優先させねばならない時もある...!
ということで、ここから兄VS弟の熾烈なバトルが始まりました。
「どろろ」感想(4) 兄・百鬼丸VS弟・多宝丸
■2人の争点
選挙みたいな小見出しになってしもたわ。笑
百鬼丸はというと、
たとえ犠牲を払っても、奪われた自分の身体を取り戻す
多宝丸は
今やこの国(醍醐の国)の鬼神と成り果てた百鬼丸を討つ
...うーん、哀しい兄弟のバトルロワイヤル。
多宝丸は、幼少期からずっと一緒に育ってきた陸奥・兵庫と共に、百鬼丸の欠損部位(両腕と目)をそれぞれ鬼神から宿すと、その体で戦います。
鬼神が「オレガホシイノハ百鬼丸ノカラダダケ」みたいな意思表示してましたが、まあ分かるで。ワイも百鬼丸欲しいもん(?????)
百鬼丸から見たら、多宝丸とその従者with欠損した自分の身体(と鬼神の力)vs自分って感じかな。
■完璧な人間なんていません。ex:わたし
兄弟対決では百鬼丸がチートすぎてヤバかったんだけど()
陸奥、兵庫を失って、とられていた腕が返ってきた百鬼丸。
ここら辺の兄弟のやりとりはとても辛いものでした。
多宝丸の方は、百鬼丸から満たされない心のうちを、見えない目で見透かされてしまっていました。
なぜ心が満たされないのか。
それは、兄弟のように育った従者を目の前で殺されたこと。それ以前に、母である縫いの方の意識があまりにも百鬼丸に向いていたこともあるでしょう。
つまり、醍醐の国の繁栄は百鬼丸のおかげでもあるけど、多宝丸の不幸は全部百鬼丸のせいであるということ。
逆に、百鬼丸は多宝丸がのうのうと生きている間、鬼神に身体を奪われていたわけで。
百鬼丸・多宝丸「奪われたものを奪い返す」
と...初めて意見が一致しました。()
身体が欠けている兄と、心の欠けている弟。
2人の一騎討ちのシーンは、感動ものですね...結局、2人とも完璧たり得ないところで鬼神にはなれないというか、人間なんですよね。
最期に多宝丸にとどめを刺さなかった百鬼丸も、情け、思いやりという人間らしい「情」を持っての、この行動です。
ようやく、一人前の人間になった。
百鬼丸という人間が生まれ落ちた瞬間なのかなと思います。
おわりに
「どろろ」、一気見して良い物語でした。
最後まで見て思ったのは、最終話が人間としての、百鬼丸の誕生であるということ。
物語が逆行しているような?感じがしました。
初めて目に映ったのが2人の「おっかあ」でしたし、ね...
百鬼丸がようやく人間としての人生を歩めると思うと、とても嬉しい反面、最期に母の本当の愛を向けられた多宝丸の辛さよ...
成仏してクレメンス....(違)
p.s.なんとなくwiki見てたら「シリーズ構成:小林靖子」と書いてあって、目ん玉取り出すところでした(危ない危ない)
道理で端折りながらも、多宝丸みたいな本来敵キャラも魅力的になるよう、良い話にまとめてある訳だな....