平和について考えた4日間。Nagasaki Peace-preneur Forum 2024を振り返る
前回のブログで紹介したとおり、5月10日から13日まで開催されたNagasaki Peace-preneur Forum 2024では、濃密な4日間を過ごしてきました。ここでは、参加したフォーラムの様子などについてご紹介いたします。
グローバルリーダーと平和について対話
初日は、各国から集まってきたグローバルリーダー達といっしょに、長崎原爆記念館や平和公園内を巡り、どんなことが起こったのか、いま、長崎は世界平和にむけてどのような活動を行っているのかといったことを平和ガイドさんに教えていただきながら、静かに各所を巡り、それぞれが平和について考える時間となりました。
参加者の多くが若い世代にとって、原爆による様子を知る場所として長崎の原爆記念館はとても貴重なものであり、参加した方々も、熱心に展示内容やガイドさんへ質問をするなどしていました。
世界にはまだ多くの核兵器が保有されており、いつまた核兵器が使われるかはわからない状況です。実際に、ロシアとウクライナが戦争を始めたように、きっと簡単に戦争は始まってしまうでしょう。そして、一度戦争が始まったら、かつてアメリカが日本に原爆を落とし、国や人々が兵器を使わざる得ない「no choice」という状況を作ったように、私たちはno choiceの最後の選択肢として兵器を肯定化し使ってしまう恐れがあると思います。
選択肢とは、日常の中でも選択肢がある方がよいとされていますが、世界平和の維持においても大切な要素として、常に対話や他の方法を検討できる選択肢を残しておくことが平和には必要だと考えます。
長崎原爆記念館は、ハンズオンで展示物に触れることもできる素晴らしい展示内容なので、ぜひ、まだ訪れたことがない人は足を運んでみてください。
国連事務次長・中満さんによる平和への力強いメッセージ
フォーラム2日目であり基調講演やトークセッションの本番の日には、フォーラムゲストの一人である日本人女性初の国連事務次長の中満泉さんからの基調講演から始まりました。
国際連合事務次長であり軍縮担当( UNODA )上級代表の中満さんの素晴らしいプレゼンテーションを通じて、平和について議論するにあたって気を引き締める機会をいただけました。
中満さんの平和に対するメッセージは、こちらから視聴できます。
https://www.youtube.com/watch?v=BXRIsqituPA
中満さんに実際に対面でお会いしてみて、力強い、軸のあるメッセージを発信されていたことに本当に感銘を受け、ロールモデルとしてふさわしい女性だと感じました。自分の言葉、英語で考えをお話ししてくださっている姿やグローバル社会で具体的に軍縮活動を行っていらっしゃる姿に大変刺激を受けました。
人を中心に据えたテクノロジーの可能性
後半、いくつかのトークセッションが行われました。私が登壇したTechnology for well beingのディスカッションでは、Julian Castellón Odabachianさん(Biomechanical Engineering of Augmental Tech)とSuya Lu(Co-Founder of SheisDAO / Mrs Japan Worldwide 2022)さんと一緒に登壇し、責任あるテクノロジーやhuman-centered technologyをキーワードに話が進みました。なかでも、人を中心に据えたテクノロジーが大切であり、誰のために開発をするのかという目的を間違ってはいけないという内容が議論の中心となりました。
このような議論の中で、デジリハの事業について紹介させていただき、障害児者のために立ち上げた会社設立ストーリー、アプリやセンサーを利用したデータ取得とその活用方法について、多くの方から共感いただきました。私自身も登壇者との議論を通じて、デジリハの事業が、実は平和構築の一助を担っている技術なのだと改めて認識することができたと同時に、テクノロジーを通じて人の可能性を引き出したり人の尊厳を活かしたりするようなものになれるんだ、ということへの期待や確信を持つことができました。
「平和ではない状態」を回避することが平和への一歩となる
本フォーラムのディナーパーティーでは、国内外でインパクト投資を推進する渋澤健さんともお会いしました。渋澤さんは「平和のイメージはつけにくいけれども、逆に戦争のイメージは想像することができる。戦争とは、人を人として扱わない世界。虐殺や殺人が起きる世界。そう思うと平和という状態は、人を人として扱い、個人を大事にする。そんな世界ではないかと思うんです」とスピーチされていました。
平和についてのイメージの統一が難しくても、戦争、つまりは「平和ではない状態」はみんなで共有することができます。「平和ではない状態」を回避することが、結果的に平和へとつながっていくんだ、という発想は新たな視点をいただけたように思います。
同時に、デジリハの事業は、障害児者、リハビリを必要としている全ての人の個にカスタマイズし、その人の持つ可能性ややる気を引き出していく新しい仕組みなのではないかと考えることができました。「平和ではない状態」では、人の可能性ややる気を引き出すことはできません。障害者や高齢者など、リハビリを必要とするすべての人が尊厳を持ち、自律して行動できる社会になることが、平和に近づくものなのだ、という発想になれました。
本フォーラムは「平和」というキーワードに集った方々であることから、普段、「平和について語る!」というと、少し恥ずかしい気もしてしまうテーマにもかかわらず、思いっきり平和をベースに意見を出し合える環境があり、これが長崎で行われていることは本当に素晴らしい機会だったと思います。また、国連職員や日本に留学している国際留学生が多く参加したことも、意見交換が活発化する中でとても刺激的だった要素の一つでした。
日本は平和という文脈でもっと世界に貢献できるはず
最後に強烈な印象を残してくださったのは、リチャーズ駐日大使(H.E.Ms. Shorna-Kay M. RICHARDS, Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary of Jamaica to Japan)さんでした。会場では、デジリハのプレゼンを聞いて、とても刺激を受けて、テクノロジーの可能性を高く感じたとわざわざ挨拶にきてくださるような、大変フレンドリーな大使でした。その大使が、裏の控室で一生懸命、自分のスピーチを登壇直前まで校正していた姿はとても印象的でした。
実際のリチャーズ駐日大使のスピーチは、ボブ・マーリーの「Get Up, Stand Up!」の曲を流し、みんなでステージの上で踊りだすという、インパクトのある演出でした。そして、まさに「今我々に必要なのは音楽ではないか」という冒頭からスピーチが始まり、そのプレゼンのつかみや音楽という国や国境を越えてつながれるものの素晴らしさを実感しました。
中満さんやリチャーズ駐日大使のような、言葉や行動が強いリーダーが世界にいるんだと思え、私もそんな人になりたい、と明確なロールモデル、思考や行動の参考になれる方々との出会いが生まれたことをとても感謝しています。
東京に戻ってきた後も、長崎での濃密な時間から、しばらく余韻に浸り、自分自身のこれからについても考えることができました。
日本は、平和という文脈でもっと世界に貢献できるものがあると確信できた時間となりました。改めて、私のミッションでもある「コミュニケーションを通じた平和の実現」に貢献できるような活動が一歩進んだ気がします。