川に迷い込んだ熱帯魚のおはなし
最近なにかがおかしい
いつも通りに過ごそうとしているだけなのに
視界がぼやける
デスクの上には仕事が山積みで
周りに手を差し伸べてくれる人なんていない
だけど、
そんなのいつも通りの仕事風景なのに…
***
私は入社2年目の会社員。
だけど人手不足の問題は深刻で、こんな新人でも容赦なく責任が乗っかる。
もう随分前から体調を崩してしまって、毎日体が言うことを聞かない。
それでも必死にデスクにしがみついて、死にそうな顔でパソコンに向かっていると、違う部署の先輩がやってきて言った。
「ここの空気合ってないんじゃない?」
***
シュワシュワ…何かが溶けていくような音がした。
そっか。私が悪いんじゃなかったんだ。
私の体がおかしいわけでも、努力が足りていないわけでもない。
たまたまこの場所が合わないんだ。
それはきっと海の魚が間違えて川に行くようなもので。
だから息苦しいし、頭がクラクラするんだと思ったら、なんだか少しだけ肩の力が抜けた気がした。
***
さて、どうしようか。
このままここで頑張るのか、それとも海まで泳いでいくか。
逃げかもしれない。私に合う場所なんてないかもしれない。
だけど…私は泳ぐことにした。
溺れそうなこの川を出て、がむしゃらに泳いで…逆流を抜け出せばきっと、私の海までもうちょっと。
********
なんか合わないなーと思いながらも、頑張って合わせようとした経験は、誰でも一度はあるのではないでしょうか?
その努力ってきっと生きていく上で大事なものだと思うけど、必ずしも自分を幸せにするものではないと思います。
逆流に逆らうのは怖いことだけど。
それでも時には自分のために、自分の心地よい場所を探しに行ってもいいと思う。
逃げって言われるかもしれないし、見つからないかもしれないけど。
それはきっと自分を幸せにするための努力だから。
そんな想いで、『熱帯魚』という歌を作りました。ちなみにこのエッセイ風の小さな物語は、ほとんど私のドキュメンタリーです。笑
まだ "私の海" は探し中だけど、一生懸命泳いでいます。
こちらから音源を購入できますので、ぜひ聴いてみてください♪
********
FM86.2MHz FMおとくに
毎週火曜日18:00〜18:59放送
「花崎もえの 〜花うた la la Radio〜」
このラジオの中のコーナー「音楽の物語」で10月20日(火)に話した内容をエッセイ風にまとめてみました。
音楽には物語がある。
音楽が生まれるまでの物語、
聴いた人の物語…。
今回紹介したのは私、花崎もえの『熱帯魚』という歌です。
ラジオはListen Radioというアプリで全国どこでも聴けますので、ぜひ音声でもお楽しみください♪
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?