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ロシアへのバレエ留学について

最近は国内外のコンクールでのスカラーシップをはじめ短期留学や入学オーディション権利など、海外のバレエ学校への留学が身近になり、ハードルが下がっているように感じています。

私自身が留学した90年代でも既に沢山の留学生がいましたが、その時の比ではないほど、情報も多く現地の様子が事前に分かる状況です。

しかしそれでもやはり、行ってみないと分からないと言うのが現状であり、
また想像とは違う世界が待っていることもあります。

現在世界情勢が混乱した中でも、バレエ、音楽や語学・大学など、ロシアへの留学生は後を断ちません。

特にバレエや音楽などの文化や芸術分野は、国が守っているものではありますが、政治とは関係なく制度は崩れず、人の間で継承されています。
バレエ学校という特殊な環境で勉強が出来ることは、バレエで生きていくと決めた10代の子達にとっては大きなチャンスであり、また学べる「年齢」は限られています。(これはスポーツ選手やオリンピックなどのアスリートを目指す方々も同じですね)

そして学校側も現在のような状況でも、問題なく受け入れる体制があります。

ロシアへのバレエ留学は、確かに行きやすくはなりました。
昔と比べると随分と発展し、生活環境も住み心地も良くなっています。
しかし確立された国立のシステムの中で、他の国とのバレエ教育の違いを考慮すると、まだまだ整理・共有されていないのも現状です。

日本ではクラシック・バレエをお稽古事として学びます。
しかし海外のバレエ学校は職業訓練として制度を整えています。


「上手に踊ること」を、教育上目指しているところは同じですが、それで生きていくための、舞台上でのノウハウを、ロシアでは8年かけて育てていくというところが、明確に違っています。

クラシック・バレエの基本を学ぶことは勿論ですが
作品理解のために欠かせない歴史や、音楽史、音感とリズム感を身につけるピアノ、キャラクターダンスや歴史舞踊、ロシア民俗舞踊やリトミック、コンテンポラリーダンスや演技。そして一般教養、5教科やフランス語・英語など、通常の学校と変わらない授業もあります。
バレエだけ出来ても駄目なのです。踊ることは理解力が必要です。

具体的な振り付けを覚えるということだけではなく、原作者や演出家の意図を汲み取ること、音楽性を理解すること、歴史背景を鑑みて舞台上の振る舞い・演技の仕方を考えるなど、踊ることを深掘りするための知恵や知識が必要です。そして他のダンサーや舞台関係者たちとのコミュニケーション能力も大事です。

クラシック・バレエ以外の教育を充実させることで、ダンサーとして生きていく技と芸を身につける力を与え、自信を育てていくのです。

日本人や他の国籍の子供達も、ロシアや欧州などでのその教育を受けるチャンスが巡ってくることはとても光栄なことです。
だからこそ、その機会を存分に自分のものにして欲しい。

留学生たちにはそれを切に願います。

留学費用も決して安くありませんし、書類などの事前準備も手間がかかります。
それでも、行きたいと願う子供の夢を後押しする親御さんたちがいる。

そういった子供たちや親御さんのサポートが出来たらと考えています。


留学の機会を、ただ単にバレエが上手になることだけではなく、色んな知見を広めるチャンスと捉え、自分のために集中して頑張ってほしい。
違う国で暮らすことや自己管理の難しさ、思春期の友達とのやりとりなど、学校と家が分離されている日本のようにはいかない人間関係の難しさにも直面します。特殊な環境であることが大前提です。

ただ単に送り出すだけではない、事前準備や生活上の注意点、またレッスンで使われる用語や日常生活で必要な最低限のロシア語など
行く前に準備出来ることが沢山あります。
行ってみないと分からないのも事実ですが、環境の変化への耐久性を少しつけていくと、本人や親御さんの安心材料にもなると思います。


もちろん、留学したからといって残念ながら皆がプロになれるとは限りません。世界を知ってバレエを諦める子、怪我が原因で辞めざるを得ない子も沢山います。
それでも、日本を飛び出して挑戦したこと、身を置いた環境から学んでいたことなど、バレエ以外にも沢山あることが後に身についているのだと実感を伴って分かることあります。

個人的には、色んな道に進んで良いと、いつだってそう思っています。

私自身がボリショイバレエ学校で学んだのはもう随分前になりますが、留学時の怪我の経験、日本でのバレエカンパニー生活、大学受験や海外での就職や起業、ボリショイ劇場との仕事やロシアでの実際の生活、
そしてバレエだけに拘らず、生のロシア生活、文化や芸術の奥深さなどを改めてここで発信していきます。



実際に経験したことしかお伝えすることは出来ませんが、
そこから繋がったご縁や経験を、これから必要な人に繋げていけたらと思っています。





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