まかないの出る会社
034
春なので、歯医者の帰りにノビルを引っこ抜き、ツクシを摘んでから出社した。
こいつらはそこいらにいくらでも生えていて、片手で容易に採取でき、調理も簡単だから、この時期に手軽にエンゲル係数を下げる強い味方である。
さて、知っている人もいるかもしれないが、僕の趣味のひとつに料理がある。
これは、やたらにスパイスや高級食材を買い込み、ガス代を消費してじっくり炒めたり煮込んだりして渾身の一品を仕上げる……というような、いわゆる「男の料理」ではなく、日常のなかで毎日持続可能なもの、いわば「日々の料理」に近い。
もちろん、釣りや野食を少しかじっているし、エスニック料理も好きなので、珍奇な食材が混じったり、一手間かかる料理を作ることもあるが、そういうことはどちらかというとまれである。
だいたいは、その時にあるもの、安いものを組み合わせて、30分もかけずに一食作るようなことが多い。
これを、会社にも持ち込んでみよう──というのは、実は創業当初から考えていた。
ただ、あまりに時間がなく、今日に至るまで会社できちんと料理をする余裕が生まれなかったのであった。
記念すべき一品目は、パスタとなった。
使用した食材は、ペンネ、トウガラシ、ベーコン、ニンニク、ノビル、ツクシの6種で、ノビルとツクシは採取したもの、トウガラシは自家製(自宅ベランダ菜園産)である。
一食あたりの食材費は100円ほどだろうか。これを食べながら、梁川くんと雑談をした。
毎日とはいかないかもしれないが、週に一度か二度くらい、アルバイト諸氏も交えてまかないを食べつつ、話に花を咲かせるのもいいかもしれない、などと考えている。
(これより下に文章はありません)
ここから先は
¥ 100
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
サポートは僕の生存のために使わせていただきます。借金の返済とか……。