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Bass For the Future!

・H.Holliger"Unbelaubte Gedanken zu "Tinian"" [Cb solo]
・廣澤芙々美 "Ringing shouting and singing" [Cb & Pf](公募作品①)
・G.Bottesini / コントラバス協奏曲 第2番 第1楽章
・美間拓海 "Double Recital II" [Cb(5str) solo] (公募作品②)
・青木聡汰 "Sonatine for Contrabass and Piano" [Cb(5str) & Pf (公募作品③)
]・松平頼曉 / DIALECTICS Ⅰ以上5作品
・G.Bottesini / コントラバス協奏曲 第2番 第2楽章
・小畑有史 "Down Deep for Contrabass solo" [Cb solo] (公募作品④)
・内垣亜優 "コン、とこ、バンッ!"[Cb solo] (公募作品⑤)
・G.Bottesini / コントラバス協奏曲 第2番 第3楽章
・久保哲朗 / Study of Cubes for contrabass and piano(委嘱初演)
・S.Gubaidulina / コントラバスソナタ

コントラバス 近藤聖也
ピアノ 大瀧拓哉

近藤聖也氏によるコントラバス・リサイタル。若手作曲家を対象に作品を公募、選出された作品について作曲者と意見交換をおこなって仕上げたという。非常に意欲的な企画ではあるのだけれど。

ホリガー作品…この作曲家らしい、繊細な味わいの小品だった。中ほどのハーモニクス、大丈夫かと思ったけど、終盤は立ち直る。プログラム・ノートにある通り、たしかに練習曲っぽい。

廣澤作品…堅実に書かれていると感じる。中ほどの躍動する部分がおもしろい。

ボッテジーニ…プログラム・ノートによれば、この楽器らしさを活かすことなく、高音部のvirtuosityをひけらかすのみというところに、近藤氏は決定的な嫌悪感を抱いているとの由。しかしながら、単に機械仕掛けのように、何らの情趣も込めずに弾くだけでは、アンチにはなりきれない。そもそも肝心のハイポジションがことごく不安定なのが致命的である(ピアノとの間で音が濁る箇所が散見された)。後半で久保氏が語ったようにこの曲を反面教師的意味合いで今回のプログラムの出発点とするのであれば、完璧な音程とフレージングで徹底的に歌い倒し、かつ皮肉に響かせるような境地をめざすべきだと考える。後半で演奏された第2・第3楽章ー分けて弾いた趣旨がよくわからないーも同断。

美間作品…弦楽器奏者らしい作品と感じられる場面もあったけれど、全体の印象は薄い。

青木作品…笙の音階を取り入れるなど、プログラム・ノートは饒舌でおもしろいが、曲はいささか冗長に感じられた。

松平作品…この作家らしい、無機的な響きがおもしろい。各種特殊奏法も、過不足なく配置されている。本作の絶対的な安定感の前に、申し訳ないけれど、前半の新作群は及ぶべくもなく霞んでしまう。

小畑作品…ペグの操作で最低音の響きを変容させる、とあるけれど、全体に「この楽器を使って曲を作る」ところにとどまり、残念ながら曲想に深みが感じられない。

内垣作品…特殊奏法は胴や指板を叩くくらいに限定され、プログラム・ノートにある通り、リズムを聴かせる作品である。素朴ながら、"この楽器を使って、こういうことがしたい"という素直な思いが感じられる曲だった。

久保作品…独自の響きが確立されていることは感じるけれど、安全な領域の中で手際よく仕上げているという印象が拭えない。

グバイドゥーリナ作品…終始沈鬱な曲調で、コントラバスは豊かに歌うけれど救いがなく、だんだん単調になる。この楽器のレパートリーの中でも、貴重な作なのだと思われるけれど、現代曲の古典という位置付けになる曲が本作というのではたしかに寂しい。巨大な躯体の活用の仕方等、依然未開拓なこの楽器の可能性を活かす術を真剣に探る必要があろう。今回の企画、趣旨は申し分ないが、披露された作品はまだ磨く余地のあるものが多い。今後に期待したいところである。

が、その前に、やはりボッテジーニはじめ古典を奏者自身が固めることが必須だと思う。現代の書法も、各種特殊奏法も、古典の蓄積を完全にものにした上で、それでは手詰まりになってきたからこそ導入されたもののはずである。したがって、伝統的な作品を完全にこなしたところからしか同時代の創作は始まらないものだと理解する。例えばケージにしても、伝統的なディシプリンを否定することはなかった。だからこそ「フリーマン・エチュード」などが書けたのに違いない。

共演の大瀧氏は手堅い演奏で、特に久保作品などではエッジの立った音を聴かせて好演。(2023年7月11日 トーキョーコンサーツラボ)

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