
[詩] ゆるやかにほどけて
まだ、ここにいる。
風が吹くたび
ほどけた糸が ゆれる。
結び直すこともできず
ただ 指のすきまから すべり落ちていく。
それでも まだ
そっと手を添えてしまうのは
なぜなんだろう。
月は何も変わらないのに
映る景色だけが 少しずつ
知らない色をしている。
あの夜と同じはずなのに
ひとつ、ふたつと
音もなく ずれていく。
まるで
何もなかったみたいに。
言葉にしたら、こぼれてしまいそうで。
だから 今日も
ただ 静かに夜を めくる。
ほどけた糸の 行く先を
見届けることもせずに。
きっと もうすぐ。
夜が終わるのか
私が終わるのか
それとも 何もかも
曖昧なまま 溶けていくのか。