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小説ですわよ第3部ですわよ8-3(完)

※↑の続きです。

 舞はイチコから受け取ったイカ焼きを頬張る。雑に焦げた醤油の風味だが、これもまたお祭りのラフな味わいと考えれば許せた。珊瑚はたこ焼きが熱かったのだろう、小さく飛び上がった。それを見てイチコが「ハハッ」と短く笑うと、口の端から焼きそばの麺が吹き出た。舞が手ぬぐいでソースまみれの口元を拭ってやる。
 と、後方で花火が2発、3発と上がり、空中でパラパラパラと散っていく。舞たちは腹の中も、耳の奥も、お祭りの空気で満たされていった。イチコが出店で食べ物を大量に買いたくなる気分もわかるというものだが、とても3人では食べきれない。

 そこへ聞きなれた声が、下駄の歯を心地よく鳴らしながら近づいてくる。
「イチコ、飛ばしすぎでしょ。それじゃあ射的やら金魚すくいやら、できないでしょうが」
 代弁してくれたのは、マサヨだった。紺色に花菱模様の浴衣に一本歯の下駄と、渋くキメている。
「おお~っ、マーシーじゃん!」
「よっ、イチコ。相変わらず食べ方汚いね」
 傍らの愛助は、白地にサクランボ柄の浴衣を羽織っている。子供用で丈が短く、普段にも増してチンチクリンだった。愛助は顔面ディスプレイに「(^o^)」と期待を表示する。
「射撃があるって本当ナリか? 早くヤクザを撃ち殺したいナリ!!」
 舞は愛助の頭を撫でつつスルーしながら、マサヨに歩み寄る。
「マサヨさん、この前はどうも。ていうか愛助に物騒なこと教えるのやめてくださいよ」
「違うって。この子、元々暗殺用のロボットだから何教えても変な方向に解釈すんのよ。で、これからどうする?」
 綾子や軍団も会場に来ており、流れのままに合流する予定だった。マサヨは「適当ね」と呆れる。綾子は毎年お盆になると、マサヨたちの暮らすアヌス02へ迎えに来てくれるのだが、今回は「今日お祭りがあるから、あとでね」とゲートの向こうから顔も出さずに伝えてきたらしい。

 というわけで4人+1体は、綾子たちを探しながら会場を散策することにした。人の波が激しくなってきたので舞とイチコが前列を、珊瑚とマサヨが後列を歩く。その後ろを愛助がピョコピョコとついてくる。
「マサヨさん、かっこいいです」
「ふふん、そう? 七宝もいい感じだよ」
 舞は後ろの会話に振り返る。マサヨの浴衣は紺色だ。ネイビーが見たら、また色被りを自虐するだろうなと予想がついた。辞めた軍団メンバーと会うのは1年ぶりだ。近況を聞くのは楽しみなようで、何をやらかしているのか怖くもあった。

 そんなことを考えていると、射的の屋台が近づいてくる。マサヨは愛助が余計なことを言わないよう。ディスプレイを目隠しするように腕を回して抱きかかえた。しかしその心配は無駄に終わった。すでに先客が店の主人と揉めていた。それも舞たちのよく知る人物が。
「ちょっと貴方、貰えないってどういうことよ。ほら見なさい、弁財天の像が倒れてるじゃないの」
「倒れるわけないんですけどねぇ。両面テープでがっちり固定してあるんだから」
「それじゃあインチキじゃない!」
「お祭りがヤクザのインチキ商売なんて暗黙の了解でしょうが! 今さらそれ言いますかね!?」
「社長、なにやってるんですか……」
 聞けば綾子はゲン担ぎに、芸能の神様である弁財天の像が欲しくなり、射的で撃ち落としたのだという。陶器製の像は2~3kgあって倒せるものではない。あくまで景気づけの飾り、ジョークみたいなものだ。しかし綾子は魔法をコルク弾に込めて倒してしまったというわけだ。
「水原さんたちも言ってやってよ、300円も取られたんだから」
 綾子は黒に菊柄の浴衣で、髪を朱色のかんざしでまとめあげ、いつも以上にミステリアスで大人びた雰囲気を漂わせているが、言動で台無しになっていた。
「いいでしょ、それくらい。祭りってそういうもんです」
「だって……」
 子供のように唇を尖らせる綾子を後ろに下げ、舞は店主に謝罪した。
「すみません。この人、長生きしすぎて頭がおかしくなってるんです」
「よくわからんけど、揉め事はよしてくれよ。こっちも年々やりにくくなってるんだからさ。ピロピロ笛あげるから今日のところは勘弁してくんな」
 店主は景品の『吹き戻し』をくれたので、撤退することにした。吹くと先端に巻かれた紙が伸びるという笛のようなオモチャだ。綾子はまだ文句を言いたそうだったが、舞が吹き戻しを口に突っ込むと大人しくなり、ピロピロと不満げに紙を伸び縮みさせる。イチコも一緒になって吹き戻しを吹いた。

 それから舞たちは軍団を探しながら、いくつかの屋台をのんびり楽しんだ。
「揚げ玉ボンバー! バインバイ~ン♪」
 イチコはシン・ヤキソバンのお面をかぶり、途中で釣り上げた水ヨーヨーを綾子の顔に軽くぶつける。
「このっ!」
 綾子もムキになり、自分の水ヨーヨーで対抗する。すぐに互いのヨーヨーが破け、ふたりとも水浸しになった。珊瑚が呆れながら手ぬぐいで拭いてやっていた。
 そんなバカなことを繰り返しながら屋台通りを1往復したが、軍団と遭遇する気配は一向にない。急に綾子が思い出して立ち止まった。
「そうだった。軍団は競馬場を出禁になってるのよ」
 競馬場内はサッカー場や野球場があり、レースが行われない日などは一般開放されている。かつて軍団は事務所から一番近いここで草野球を練習していた。
「最初に言ってくださいよ! でもなんで出禁になったんですか? どうせ水を飲む順番で喧嘩になったとかなんでしょうけど」
「ザリガニ祭りをやったのよ」
「は?」
 競馬場には敷地を横切る形で川が流れており、水害を防ぐ目的で貯水池が作られている。そこではザリガニが生息しており、近所の子供たちがよく釣りにきていた。軍団は小遣い稼ぎのためにザリガニを乱獲し、それを調理して勝手に商売を始めたのだ。出禁は当然の結果である。
「ハハッ、バカだよね~」イチコがヘラヘラ笑う。
「あなただって美味しそうに食べてたじゃないの」
「姐さんもでしょ。しかも『一流の私にはわかるわ。これは高級なロブスターね』な~んて知ったかぶっちゃって! ハハーッ!」
「お黙りっ!」
 とにかく軍団は競馬場にはいないようだ。人の波も激しくなってきたので、舞たちは事務所へ戻ることにした。

 途中、コンビニに立ち寄って酒やジュース、菓子などを買い、事務所に帰り着く。ピンキーとMMがライトをパッシングして迎えてくれた。
「あら、お早いお帰りですね。なにか問題でも?」
「人が増えてきたから、事務所で花火を見ようと思って。軍団いるよね?」
「ええ。皆さん勢ぞろいして、屋上にいますよ」
 舞たちが外階段を2階、3階と通り過ぎて屋上へ昇ると、魚介類が焼ける香ばしい煙が漂ってくる。色とりどりのジャージたちが、折りたたみ椅子やコンロを並べ、缶ビール片手に花火を見上げてバカ笑いしていた。そこまではよかったのだが……鉄網の上でこんがり焼かれている『赤いハサミと甲羅』を見て、綾子の雷が落ちた。
「貴方たち! また競馬場で獲ってきたんでしょう!」
 ザリガニ色のジャージ男が、あわてて弁解する。
「ご、誤解ッス! IKEAで買ったんスよ!」
「やっぱIKEAのザリガニは美味いな。泥臭さがないもんな」
 小太りの金色ジャージが、わざとらしくザリガニの頭を咥えチュパチュパと気色悪い音を立てて中のミソを吸う。
「じゃあレシート出してごらんなさい」
 綾子の追及に軍団が揃って目を背ける。さらに屋上の隅から、ザリガニ釣りに用いたであろうタコ糸と餌のスルメが発見された。綾子の怒りが頂点に達し、軍団全員に『競馬場に立ち入ったら尻に高圧電流が流れる呪い』を与えた。
 二度と会うことはないと思われた者たちとの再会。そこに何の感慨も生まれないのが軍団らしいと舞は思った。

 花火が1発、また1発と夜を照らし続ける。舞たちは折りたたみ椅子を並べて空を眺めた。珊瑚が気を利かせて事務所から風鈴を持ってきて、物干し竿に吊るしてくれた(普段、屋上は軍団やイチコの洗濯物を干すのに使われている)。ぬるい風を爽やかな音が中和してくれた。
「キレイでちゅね~」
 イチコが赤ちゃん言葉で語り掛けるのは隣の舞ではなく、屋台で掬った金魚だった。ビッグアヌス02の屋敷で飼うつもりらしい。当の金魚は花火など微塵も興味がなく、小さなビニール袋に満たされた水の中で狭そうに泳いでいる。
「きんたまや~!」
 叫ぶイチコは、花火があがるたびにテンションが上がっていった。打ち終わればこの世界を去らねばならないというのに、ひたすら明るかった。無理をしていれば舞にもわかる。だがそんな様子はまったく感じない。心の底から今を楽しんでいるのだ。
 イチコの横顔を、赤や黄色の光が照らす。舞には言いたいことがたくさんあった。感謝とか、イチコに残ってほしいとか、去るにしても相談してほしかったとか。珊瑚やマサヨ、綾子も『伝えろ』と言いたげな視線を時折送ってくる。しかし舞は何も口にしなかった。言い切ってしまったら心残りがなくなってしまう。満足すれば、イチコを想うことがなくなってしまいそうでイヤだった。だから――
「イチコさん」
「ん?」
「金魚、ちゃんと毎日餌をあげるんですよ。水も取り替えて」
「大丈夫だって。セーヌ川みたいに澄んだ池で飼うから」
「金魚どころか、あらゆる生物が生きられないでしょ!」
 だから舞は、いつものような会話だけを交わした。
 最後の花火が上がり、黄色い閃光がパチパチパチと何度も空ではじけた。
 静寂が訪れ、余韻を感じさせる前にイチコが立ち上がる。
「水原さん」
「なんですか?」
「そろそろ行くよ」
「はい」
「フワちゃんが国民栄誉賞を貰ったときに帰ってくる」
「絶対に帰ってこないってことじゃないですか!?」
「ハハーッ、ハッ!」
 笑えないジョークをかまし、イチコは自分だけ高笑いした。
 そして――跡形もなく消えた。
 カサッと乾いた音が鳴る。イチコが屋台で買ったシン・ヤキソバンのお面が折りたたみ椅子に落ちた。
 強がりでも何でもなく、舞は悲しみを感じなかった。心に穴が開いたような感覚もなかった。
(ああ、楽しかったなあ)
 ただただ純粋に、心が満たされていた。
 耐えきれず「わっ」と声を上げ、両手で顔を押さえて泣き出したのは綾子だった。珊瑚とマサヨが続けざまに鼻をすする。軍団たちは各パーソナルカラーのふんどし一丁になって裸踊りをしていたが、立ち止まって肩を落とす。愛助は気を遣って舞の膝に乗り、頭を撫でてくれた。しかし鋼鉄の足に大腿骨をへし折られそうだったので、すぐに降りてもらった。
 気がつくと、風から熱気と湿気が消えている。
 風鈴が慎ましやかに揺れ、秋を奏でた。

 2030年8月31日(土曜日・仏滅)。
 舞は事務所の3階にある社長室で、何年ぶりかに24時間テレビを観ていた。今年のマラソンランナーを務めるのが探偵社の終身名誉顧問である綾子だからだ。綾子はここ数年、目論見通り『細木数子の再来』としてテレビに引っ張りだこだった。
 さらに驚くべきは今年の司会者がネイビーということだ。モデルとしてデビューしてから、顔の良さだけで芸能界を生き残り、綾子同様に今ではテレビの人気者になっている。
「顔がいいだけの私にも、綾子さんは優しくしてくださったんです」
 などと相変わらずの自虐風自慢をかましながら、嘘くさい涙をテレビの向こうで流している。

 と、インターホンが鳴った。時刻は12時半。となれば来訪者は決まっている。舞はテレビにかじりついたまま「どうぞー」と声を張り上げた。来訪者はスパイスの香りを漂わせながら、ノックもせずに社長室へと入ってくる。
「お待たせしました。洋食イエローの出前です~」
 6年前から体重が半分以下に減った黄色いジャージの男が、頼んでいたランチカレーセットをテーブルに置いた。イエローは実家の洋食屋を継ぎ、スパイス調合の知識と技術を活かして名物のカレーをさらにパワーアップさせていた。今では県外からも食べにくる客で殺到する人気店になっている。なので本来ならば、お昼時に出かける暇などないのだが、探偵社への恩義から特別に自ら出前に赴いてくれている。
「おっ、綾子さんもネイビーもがんばってるね。いや~眩しいな~」
 イエローはカレーセットのラップを外しながら、テレビを覗きこんだ。
「何言ってるんですか。イエローさんが一番出世してますよ、この前もテレビに出てたでしょ」
「いやいや。飲食なんていつ潰れるかわからない世界だから。探偵社の仕事は、いつどんなときだって必要でしょ?」
「まあ……ね。喜んでいいんだかわかりませんけど」
 加速する格差。国内外でのテロの頻発。戦争の長期化。不法滞在外国人コミュニティの拡大。混乱が進むばかりの経済。それらに伴って死者が激増し、一時は皆無に等しかった返送者の事件が過去最大を更新し続けている。なので休日である土曜日も出勤し、出前のカレーだけを心の支えにしている毎日だ。
 世間話をしていると、遠くから轟音が鳴り響き、部屋の窓がビリビリと振動する。一拍遅れて灰色の煙が遠くからあがった。舞は届いたカレーセットを素早くかきこむ。イエローは申し訳なさそうに頭を下げ、先に事務所を出て行く。
「じゃ、僕はこれで。食器は外に置いといてね」
「はい、毎度ありがとうございます!」
 舞はせっかくのカレーを味わうことなく飲みこみ、立ち上がった。綾子がわざとらしく辛そうな顔をしているテレビ画面が、一瞬だけ乱れる。直後もう一度、同じ場所から爆煙があがる。8年以上この仕事をやってきた舞の直感は、これがただの返送者案件でないと告げていた。
 舞は机の片隅に立てていた2枚の写真に微笑みかける。1枚目は珊瑚と、その夫である胡堂 彩斗こどう さいと、ふたりが授かった女の子の写真。2枚目は舞の家族写真で、去年に伊豆旅行へ行った際に撮ったものだ。舞は父を陥れたヤクザを自力で追い詰め、父の無罪釈放を勝ち取っていた。この幸せを守るためにも、返送者をのさばらせるわけにはいかない。

 事件の現場は北裏筋駅前。事務所から数kmほどだ。舞はピンキーに運転を任せ、軍団に召集をかけながら、タブレットで過去のデータベースを漁って類似案件を探る。完全一致こそなかったが、いくつかの条件は舞が過去に遭遇した返送者と共通していた。舞はしばらく握ることすらなかった紫のウネウネ棒を手に取った。
 現場では尚も爆発が続いている。その原因は返送者の能力自体ではなく、ガスに引火させたたものだとピンキーの分析で判明していた。舞はシートベルトを外し、ドアノブに手をかける。
「水原社長、お気をつけて。イヤな予感がします」
「わかってる。ピンキーも無茶しないで……って言いたいけど、私がダメそうなら自分の判断で返送して」
「かしこまりました」
 舞はウネウネ棒を携え、爆発の中心部へ向かう。爆炎が晴れ、その中心に立っていたのは見知った男であった。
「ウラシマ王……!」
「久しいな、人の子」
 王は変わらず、持たざる人間を見下した口調だった。しかし風貌は大きく変質していた。全身にブラックホールのような穴が開き、その向こう側には銀河を思わせる白い斑点が見える。
「余は死さえ許されぬまま暗黒を漂うしかなかった。だが絶望の世界は、余に素晴らしい力を与えてくれたのだ!」
 王が舞に人差し指を伸ばす。
「ヴッ……!」
 唐突に、舞の肺を血が満たそうとした。それを吐き出す。痛みはない。だが確かな違和感。あるはずのものがない。左胸に、王と同じ漆黒の穴が開いていた。
「ワハハハ! 汝の肉体を媒介とし、虚無空間を作り出した。いずれ汝は汝を認識できなくなり、このマルチアヌスを飲みこむであろう。愛した世界を自ら滅ぼす絶望に震えるがいい!」
「こ、このクサレ……!」
 罵詈雑言を言い切ることすらできなかった。穴はみるみる広がるが、それを塞ごうと手を伸ばす意思すら湧いてこない。自我はおろか防衛本能さえ、王の虚無空間に削り取られてしまっているのだ。
「喜べ、次は余を再返送したオレンジジャージの女を虚無に送ってやる。寂しくはなかろう? いや、寂しさすら感じられぬか……ククク」
 その下卑た笑いに悔し涙を流すことすらできなかった。すでに舞の左半身の肩下が虚無の穴に侵食されてしまっている。
「汝に屈辱を与えて、余の気は済んだ。消えるがよい」
 王は舞を完全に消去すべく、人差し指を振り上げる。だが舞に向けて振り下ろされることはなかった。
 空が割れた。ガラスが割れるように。破片をまき散らしながら。そして割れた空の向こう側、虚無にも似た黒い空間から、赤い燃え盛るような球が飛来する。球は王と舞の間へ割って入るように着弾した。
「なっ、あ、ああっ……ど、どうして、汝が……」
「いつまで経ってもフワちゃんが国民栄誉賞をもらわないからさあ」
 来訪者の黒く艶やかな長髪が、巻き起こる風に揺れる。
「イチコさん……イチコさぁん!」
 舞は彼女の名を叫ぶことができた。肉体を侵食していた虚無の穴は消えていた。
「こ、こんなはずでは……くっ!」
 王はイタズラがばれた子供のように駆け出していく。イチコは王を追わず、振り返って舞の肩を叩き、ピンキーの運転席へ滑りこんでいく。
「追うよ、水原さん!」
「はい、イチコさん!」
 舞も助手席に滑りこんだ。ピンキーがエンジンを唸らせ、コンビの復活を祝福してくれる。
「感傷に浸りたいところですが……それは後ほど。水原様、イチコ様、あとはお二人にお任せしても?」
「うん、私らがやるよ!」
「あのクサレ外道、今度は暗黒世界にぶち込むだけじゃ済ませねえ!」
 イチコがアクセルを全力で踏み抜く。そして――
「ホラホラホラ、轢くぞ轢くぞ轢くぞ轢くぞ」
 ショッキングピンクのハイエースが、逃げる男の背中に激突した。

『小説ですわよ』 Never End