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小説ですわよ第3部ですわよ7-4

※↑の続きです。

 特異点。全マルチアヌスの因果に干渉し、影響を与えうる存在。ギャルメイドたちにとっては宇宙秩序を乱しかねない危険因子。それが森川イチコだ。特異点は全マルチアヌスにおいて、唯一無二である。だが、特異点に限りなく近い者――『近似存在』がいる。その中のひとりがミュージシャン/タレントである、田代まさしだ。
 かつてアヌス02の神沼は、特異点への直接的な接触を避け、近似存在を手中に収めようとしていた。特異点を迂闊に刺激すれば、全マルチアヌスが滅びかねないからだ。しかし田代まさしへの干渉は失敗。そこで神沼02が次に目をつけたのは『田代まさしの近似存在』である、田代マサヨだった。
 ぬーぼーのCMダンスを踊って光進丸の帆先で悦に浸っているアホ美人は、実のところイチコに次いで特殊な人間なのである。そのため、綾子たちでは侵入できないアビス・オブ・アヌスへ来ることができたのだろう。

 マサヨは愛助や渡部と一緒に帆先から飛び降り、舞たちに呼びかける。
「水原とイチコは宇宙お嬢様のところへ。この危機に立ち向かえるのは、あんたらしかいない!」
 舞は、イチコの相棒の座を脅かされたくないとマサヨに嫉妬心を燃やしたこともあったが、マサヨはとっくに舞を認めてくれていた。心のひだから、じわりと感動のような、友情のような、一言で形容しがたい熱いものがジワリと溢れ出る。でも……
「ギャルメイドたちは人智を超えた化け物ですよ!」
 舞の心配に、マサヨはムエタイ特有のアップライトフォームを取る。愛助は顔面ディスプレイをピカピカ光らせた。渡部は……『エッチな聖地♪』で拾ったのだろう、刀身が燃える剣を掲げる。
「あたしは特異点の近似存在である田代まさし! ……の近似存在!」
「ワガハイは愛助。本名はAssassin Intelligence Support  Ultimate Killing Expert。元は神沼工業がスカラー電磁波の意思を殺すために作った兵器ナリよ!」
「この燃える剣はぁ、レーヴァテインという北欧神話に出てくる神器らしいですぅ。ギャルメイドさんの何人かはぁ、倒せると思いますよぉ」
 三者三様に物騒な自信を示す。イチコが「ハハーッ!」とテレビ屋のような笑い声をあげた。舞はマサヨたちの頼もしさと、イチコが元に戻ったことは嬉しかったが、心配の矛先がギャルメイドに向かった。

「あの……ギャルメイドあいつらを殺したら殺したでマルチアヌスが大変なことになるかもしれないんで、程々にしといてくださいね」
 光進丸に跳ね飛ばされたギャルメイドたちが、一斉に起き上がろうとしている。舞とイチコは互いに顔を見合わせ、うなずきあってから人民大学習堂のような建造物へ走り出す。援護するべくマサヨたちが並走しながら、舞とイチコを取り囲み、ふたりに手が出せないよう陣取る。
 だが相手は全マルチアヌスの宇宙秩序。人間を超越した者。守りに入っていては、攻め込まれる一方だ。マサヨたちは自らギャルメイド軍団に飛びかかる。
「てめえらを倒してミニにタコ……耳にタコができるくらい説教してやる!」
 マサヨが真似た、田代まさしの名言が雷鳴のごとく轟いた。それを皮切りに戦いが始まる。

つづく。