ミニ小説「誰よりも優しい君の魔法」①
「ただいま。兄さん。」
そう一人の青年が、視界の奥には白い岩肌をのぞかせ丘の中心に広がる花畑を目の前に独り言ちる。彼の名はウィルド。
「…ここがあなたの言っていた場所ね、ウィル。とても美しい場所だわ。」
彼を大切そうに愛称で呼ぶ女性。うっとりと眦を薄ピンク色に染めあたり一面に広がる景色を見つめる彼女はウィルドの婚約者 、エマだ。
彼らは妖精王の森と呼ばれる場所に向かうため、人知れず消えていくようにこの山々へ足を踏み入れた。
ここはフィヨルド地形の広がる巨大な岩が張った渓谷や