新連載:百沢烏のつぶやき(第1回)とある高額買取盤のはなし
みなんさん、こんにちは。
今回から雑談的な記事を書くことにしました。今までいろいろ書いてきた音楽レビューや書評(最近あまり書いてないですが)も続けるんですが、そればかりだと読み手を選ぶというか、読み手にも知識や土地勘が必要だったりして、読み手が限定されたり、読んでもらえたりしたとしても疲れることもあると思うんですよね。
あと書き手側からすると、テーマを決めて書く場合ある程度ネタが揃わないと記事にしにくい。音楽レビューで言えば、大物とか有名アーティストが多くなってきがちです。逆に1枚だけ聴きましたとか、勢いで買いましたなんて作品は記事になりにくかったりします。
そんなことで、まだまだ自宅には記事にしていない音楽や本も多いですし、今でも買って増えてますので、書きたいこと・知って欲しいことはたくさんあったりする。なので、そういうことも拾い上げながら記事に出来ればと思っています。
音楽レビューや書評よりは気軽に読めるものにしますし、お付き合いくださいませ。
第一回の今回は、レコード・CDショップの高額買取作品についてです。
先日、ディスクユニオンに行ったのですが、ハードロック・ヘヴィメタルコーナーにパンフレット(チラシ)があって持ち帰りました。要は「これらのCDやレコードをお持ちでしたら高額買取しますよ、売ってください」という店側の告知です。ディスクユニオンでは他のジャンルも含めよく見かけるもので、たくさんのジャケと値段が掲載されている楽しいチラシです。
冊子形式でなかなかのボリュームなんですけど、その1ページが上の写真です。CD買取のページですが、何か気付きませんか?最上段のジャケ写真付き作品が高額なのはすぐにわかりますが、そこじゃないです。
そうです、左列の下から2番目の作品です。松川敏也(Ran)の「バーニング」が12万円で買取なんです!これはなかなかの値段です。しかも国内アーティストの作品でここまでのものはロックやジャズでもなかなか見ない。売値はいくらなんでしょうか?
実はこの作品のレコードを持っています。レコードはこのCDほど高額ではないですが、これも買えば1万円ぐらいはすると思います。
この人は80年代に活躍した「ブリザード」というジャパニーズメタル(ジャパメタ)バンドのギタリストです。その人のソロアルバムがこの作品です。
ブリザードは恐らくですが、「イケメンぞろいのジャパメタバンド」を目指して事務所側が作ったバンドだと思います。なので、彼も細身でイケメンなんです。このジャケ写からもイケメン風な感じは伝わってきます。
話はそれるんですが、私は学生時代に地元でこの人のギタークリニックを観たことがあります。いつも行ってる楽器屋さんがあったのですが、そこで「ランさんが今ギタークリニックをやってるんですが、せっかくなら観て行きませんか?当日だしチケット代は要りません」と言われ(お店の常連だったのもあると思います)、偶然でしたが観ることができました。
このジャケットのままの長髪をなびかせた、話し口調も穏やかな青年という印象でした。事前にカセットテープに録音したバンドの音楽に合わせてギターを弾いてくれたんですが「やっぱりプロって凄いな!」と興奮した覚えがあります。彼自身はギター雑誌の人気投票で決して上位ではなかったんですが(ラウドネスの高崎晃の全盛期です)、それでもこんなに弾けるんだという、当時ギターを一生懸命練習していた自分としてはちょっと自信を無くした記憶すらあります。
で、話を戻してなぜこの作品が高額買取なんでしょうか?ランというギタリストの知名度はそこまで高くないでしょう、恐らく。
それは「Mr. Crazy Tiger」というゲスト参加の覆面ボーカリストが、昨年の紅白登場で話題をかっさらっていったB'zの稲葉浩志と言われているからなんです。
レコードを聴いた印象だと、声質については一聴しても稲葉とは分かりません。言われても「そうかなぁ?」という感じ。確かに時折出てくる歌いまわしの癖で「なんとなくB'zの稲葉ぽくない?」という部分はあるにはある。そんな感じです。
クレジットやライナーノーツを見たところ、曲作りにMr. Crazy Tigerは一切関与していないようで、歌メロも言ってしまえば80年代のB級ジャパメタソング集。ボーカルラインも当時のジャパメタにありがちな高音が続きすぎて、さすがにMr. Crazy Tigerも歌いにくそう。
肝心のギタープレイも今一つ吹っ切れたものや個性が無く、売れる要素は乏しいかなとは思います。ギターが上手いだけに残念です。プロダクション的にブリザード以前に所属したバンド時代の曲の焼き直しが中心のようで、ちゃんと時間と予算を掛けてオリジナル曲を作れれば、また違ったのかなと思います。
レコードジャケット裏面にあるクレジットなどを読むと、制作陣に「Being」(現在はB ZONE)というB'z所属の事務所名がところどころに見受けられます。稲葉がまだ松本からB'zに誘われる前に依頼された仕事なんだろうと思った次第です。ちなみに同年にこちらも今なお大活躍の浜田麻里が傑作「Blue Revolution」を発表しますが、そちらのギターは全てB'zの松本が担当しています。松本と言うとT.M.networkの木根の影武者的な話が有名ですが、ハードロックギターと言う意味では、浜田麻里の「Blue Revolution」はさすがのプレーでカッコいい。
この作品が高額なもう一つの理由はCDである点もあるかなと思います。当時はまだレコードが主流の時代です。のちにCDにコンバートされた枚数はかなり少なかったものと思われますので、コレクターズアイテムとしての値段なんだろうなと思った次第です。
この松川敏也というギタリストですが、90年代に Xジャパン の hide のバックギタリストで活躍していたという情報もありますが、現在の動向はわかっていません。
ブリザードに興味が出てきた方はぜひ自分の耳で確かめてください!
私のおススメは「HOT SHOT!」という作品です。今回取り上げた作品も「HOT SHOT!」 のような勢いとクオリティであればもっと評価されていたかなと思ってしまいました。やっぱり、ボツ曲の焼き直しが良くなかったようです。
第1回のつぶやきはここまでです。雑談のわりに長くなりました笑。すみません。
この連載は不定期ですが、また次回お会いしましょう。
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