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ジャズに興味がある人に贈る私的ジャズ論 その5 密室型ジャズの傑作ライブ

今回はジャズ聴き始めの皆さんに送る3枚目のご紹介になります。1枚目、2枚目の紹介記事はこちらです。ご覧ください ↓

<2枚目>

<1枚目>

今日の1枚はこちら。ギターの巨匠 ウェスモンゴメリーの代表作です。

3枚目:ウェスモンゴメリー 「Full House」
   (邦題:フル・ハウス)

Wes Montgomery

カリフォルニア州バークレイにある「ツボ(壺?)」というライブハウスでの演奏を録音したライブ盤です。ライブといってもこの頃(1962年)のジャズライブですので、ライナーノーツ(解説)にある写真を見る限りこじんまりした狭いライブハウスですね。

このアルバムのおススメポイントは、

・ジャズギターを堪能できる
・テナーサックスとの掛け合い的なノリを味わえる
・1曲目のかっこよさに加え、バラードありスウィングありで飽きない
・小技の利いたドラムのリズムや煽りが心地よい

といったところでしょうか。

まず、50年代60年代のモダンジャズにおいて、ギターはそれほど花形楽器と言うわけでもありません。今はロック普及の影響もありギター人口は多いのですっかり人気楽器ですが、当時はピアノや管楽器と比べれば、ジャズの世界では人気ジャズメンやアルバムでも絶対数で少ないかな?という感じです。

私個人はこの時代の作品でこれ以上のジャズギターアルバムは見つけられませんでした。ハードバップ期のジャズギターではナンバー1のアルバムと言ってしまいましょう。事実、ジャズアルバムの人気投票があれば、このアルバムがギターの中では一番上に来る作品です。

では、何がそんなに良いのか?先に理由を挙げましたが、少しかみ砕いて説明します。

まずジャズギターを堪能できます。しかも、このライブアルバムでの彼のプレーはノッているというかフレージングも冴えていて純粋にカッコいい。ジャズギターを弾いている人なら「あ、ここのフレーズ弾いてみたいな」といようなフレーズの宝庫です。選曲の良さもあるのかもしれません。このアルバムが良すぎて他のウェスのアルバムも聴きましたが、個人的にはこのアルバムが一番好きですね。

ここまでウェスがノレたのは、サイドメンの活躍もあると思います。特に、テナーサックスのジョニーグリフィンはノリノリだし、ギターだけだとジャズのスウィング感や躍動感が足りなくなりがちですが、彼のサックスでしっかりとバンドに音圧がみなぎっているのがイイ。ギターとのユニゾンもカッコいいし、ソロもイケてます。長めのソロがある3曲目なんかが特に出来が良いのかなと思います(バンドがノッてくるのが分かるし観客も声を上げて拍手している)。ちなみに、ジョニーグリフィンはリーダー作品も出ています。

ピアノは普通は主役級の楽器ですし、実際に1枚目で紹介したオスカーピーターソンのアルバムでは音の中心でしたが、このアルバムでは完全に脇役。でもそれが良い。あくまでもウェスの冴えたギターとジョニーグリフィンのノリノリテナーをバックで支える。

これで伴奏なのにデカい音で難しいことをやったりソロで出しゃばると、ギターとテナーとのバランスが崩れます。ちなみにピアニストはウィントンケリーと言うこちらも有名ジャズメンで自身名義のアルバムもある人気者。ポロンポロンとファンキーでスウィンギーなフレーズやコードをリズミカル
にガーン、ガーンとブロックで弾くところなんかは彼らしいこの時代のピアノジャズの一つの完成形で楽しい。

ベースはポールチェンバースという、こちらもジャズファンで知らない人はいない人気ベーシスト。「どんだけ仕事してんだ」というぐらい録音が多く、この時代のジャズアルバムは3枚に1枚ぐらいはベースは彼がやってます笑(実際に数えたことはないですが)。

前回までで紹介した2枚と比べれば、ベースの音はやや奥まったところにありますが、それでも充分に聞こえますので、ベースの「ブンブン」サウンドが好きな方も楽しめますし、このアルバムで聴かれるアップテンポ曲でのウッドベースの音は聴いていて気持ち良い。

あとこのアルバムでは実はドラムが結構凄いなと。ドラムが他のバンドメンバーを煽って「オラ!オラ!」と演奏で盛り立てることはよくありますが、そういう場合だいたいが強く叩くとか音数が増えるとかそういう感じで煽っていくんですが、このアルバムの彼の場合、音数も音の大きさもそんなに変わらないのに、シンバルのチチーンとかリムショット(カンカンというあの音)でしっかりと味付けしながら、様々な小味でリズムを盛り立てます。単純にバスドラムとスネアを交互に叩くようなドラムではないんです。そこがかっこいい。ドラマーはジミーコブと言うこれまた超有名ジャズメン。

ちなみに、ピアノとベースとドラムの3人は、マイルスデイビスのリズム隊としても有名です。こんな後のお手本となる様な伝説のジャズメンが小さなライブハウスでこんなライブをやっている時代。ただただ凄い。

選曲も良い。1、4、6曲目がウェスのオリジナル曲ですが、どれもクオリティが高い。特に1曲目はライブの掴みとしてカッコいいしスウィングと言うよりは少し黒いグルーブが感じられる曲調。

2曲目はウェスのギターをフィーチャーしたバラードでこれも良い演奏。3曲目はノリノリの速めの曲でバンドやライブ会場がノッてくるのが分かる。4曲目はラテングルーブが心地良い。5曲目は有名なミュージカル曲でジャズではスタンダードで親しみやすく人気がある曲。最後の曲はウェスのオリジナルで、アップテンポの曲でスリリングな演奏が聴ける。ドラムの「スタン、スタン」と刻む細かいリズムも演奏を強力にサポートしている。

オリジナル発売時は全6曲でしたが、今はCDになる際にボーナストラックが付いてきます。私の所有するCDでは、別の日?のライブ演奏3曲(うち2曲は本編収録の別バージョン)が入ってました。名盤ですので、様々な形で再発されているはずで、それぞれ本編以外は少し違うかもしれません。

観客の歓声や拍手も聞こえるこのライブ盤。少しだけ音量を上げて聞くことができれば、会場が徐々にノッてくる空気感やバンドの気分の高揚感なんかもより一層伝わってくるに違いありません。

気になった方は、ぜひ今回のおススメ聴いてみてください!

次回もアルバムを紹介します。

またお会いしましょう。

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