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私的ジャズ論:「レコードコレクターズ 2024年11月号ブルーノートベスト100」 <その1> トップ5を確認!

みなさん、お元気ですか?今回から私的ジャズ論に戻りました。これから何回かジャズのお話をする予定です。

「レコードコレクターズ」と言う音楽月刊誌があります。ジャンルにこだわらずに毎月様々な角度から音楽を掘り下げる雑誌でして、特集以外にもマニアックな記事や連載、アーティストの再発情報なども多数掲載されており、音楽ファンにも一目置かれている雑誌です(多分)。

そんなレコードコレクターズがジャズの名門レーベル(販売元)のブルーノートベスト100を特集していたので、ついつい買ってしまいました(ブルーノート系のこの手の企画はもう"耳タコ"なので迷いましたが)。

この手のランキングには総じて言えることですが、そのまま順位を信じて聴き続けても報われないことも多いかなと思うところがあります。ですので、私なりに今回のレコードコレクターズのブルーノートベスト100 の聴き方とマイベストの見つけ方について説明しようかなと思った次第です。

このブルーノートレーベル(ブルーノートレコーズが正式名称のようです)ですが、ざくっとどんなレーベルか私なりに説明しますと、

1939年設立のジャズ業界でNo.1 の ブランド力を持つ老舗レーベル。創業者兼プロデューサーのアルフレッド・ライオンのジャズへのこだわり、およびサウンドエンジニアのルディ・ヴァン・ゲルターのジャズらしい音、より良い音の追求で常に業界をリードしてきたレーベル。また、写真家フランシス・ウルフとデザイナーのリード・マイルスが生み出す特徴的なアルバムジャケットはそのデザイン性や斬新さでNo1ジャズブランドの地位確立に大きく貢献した。

ザクっとこれぐらい覚えておくと便利です。ジャズを長く聴いて情報を追いかけていれば、今後もブルーノート伝説はたくさん見聞きするはずです。私のライフスタイルだと、織田信長の天下統一の話よりもこのブルーノート伝説の方がよく出くわします笑。

ではさっそくランキングのトップ5を見てみましょう。

1位:Out to Lunch!  /  Eric Dolphy
2位:Blue Train  /  John Coltrane
3位:Somethin' Else  /  Cannonball Adderley
4位:Maiden Voyage  /  Herbie Hancock
5位:Midnight Blue  /  Kenny Burrell

レコードコレクターズ 2024年11月号特集記事より

ジャズをこれから聴こうかなと思う人は1位の「Out to Lunch!」から聴いてみようかな、と考えてしまうと思うんですが、やめておいた方が良いです。なぜなら、「Out to Lunch!」はフリージャズっぽくて、一般的なジャズではないからです。個人的にはなぜこれが1位なのかは理解に苦しみます。

レコードコレクターズでは過去にも多数ランキング特集をやっていますが、そのランキング集計の方法が書いてあることが多いです。が、今回はランキングのもとになる集計方法について何も書かれていません。恐らく企画自体が、ブルーノート85周年の再発ラッシュの広告を兼ねた記事だからではないかと邪推するのですが、それにしても意外です。実際に音楽評論家の個別ランキングがありますが、そちらでもこの作品は何人かが1位に挙げています。

一応フォローしておくと1位のエリック・ドルフィー自体は嫌いではないです。私も彼のアルバムは何枚か持っていて、好きなアルバムもあります。が、1位ですと言われると "?" が付きます。

この中で個人的かつ圧倒的なおススメは2位の「Blue Train」と4位の「Maiden Voyage」です。一言でこれらの作品のすばらしさを表現するなら、「今後30年間聴き続けられるジャズ」ですかね。「Blue Train」はジョン・コルトレーンのベスト5には誰がリスト化しても入るでしょうし、「Maiden Voyage」もハービー・ハンコックの作品の中では同じく誰が考えてもベスト5には入ります。

しかも、どちらの作品も全く古くないし、ちゃんと時代に挑戦した新しさを感じさせながら、一方で1位の「Out to Lunch!」のようなフリージャズの感じは全くない。

「Blue Train」は若々しい曲が多くてハズレがない。ジョン・コルトレーンのアドリブも素晴らしく、正に王道で文句のつけようがない。欠点があるとすれば、管楽器が3人いるのでジャズ初心者にはどの音が誰のプレイなのか分かりづらい所でしょうか?が、それも一つのジャズ耳トレーニングなので、頑張ってもらうしかない。そこを除外すれば、このアルバムに欠点は見つからないブルーノート縛りとは全く無関係の傑作。

「Maiden Voyage」はピアノジャズの新しい境地とでもいいますか、とにかく鳴っているコードや音が斬新。ジャズのもとを辿ればダンス音楽なんですけど、ダンス音楽ではなくなってからのジャズでもリズムやメロディの抑揚感は重要なエッセンスであり続けました。しかし、この「Maiden Voyage」で聴けるジャズはもはやそこにはこだわっていない。モードと呼ばれる音階を使い、踊る音楽ではなくじっくり聴く音楽に変貌していることがよくわかる。しかもハーモニーや旋律は、同時代の人気ジャズピアニストですら達成できない境地。彼が明らかに他のジャズピアニストから頭一つ以上抜きんでていることが分かります。こちらもブルーノート縛りとは無関係な傑作。

じゃぁ、3位の「Somethin’ Else」と5位の「Midnight Blue」はどうなのか?と言う話にはなりますね。個人的には先の2作品ほどおススメしませんが、何枚か聴くのであれば、そのうちの1枚として聴くのは良いと思います。

3位「Somethin' Else」はキャノンボール・アダレイの人気作ですが、実際に仕切っているのはマイルス・デイヴィスという話は、これまたブルーノート伝説と同じぐらい有名な話です。しかも、このアルバムの1曲目が人気曲の枯葉(Autumn Leaves)で、かつ歌の部分がマイルス・デイヴィスのトランペットで始まるので、なおさら神格化されている印象です。個人的な感想だけで言うと、取り立てて新しいとか凄い演奏と言う風にも聴こえませんし、「枯葉」自体がちょっと聴き飽きているモチーフでもあるので私の愛聴盤ではありません。念のため今回のこの記事のために通して聴いてみましたが、やはり全般的に古い感じがしてしまう。逆にいえば、この時代の典型的なジャズとは言えるのでその意味ではおススメできます。

5位「Midnight Blue」も人気作です。音数も全体的に少な目で、しっとり感とブルース感が作品を支配しているので、そういうのが好きな人には良いですね。あと、ケニーバレルのギターが主役なのでジャズギター好きにはハマる可能性が高い。ただ、日本のマーケットでブルースがそれほど市民権を得ているとは思えないのと、全体的に作品の雰囲気がアダルトすぎるので、万人向けとは言えないかなと思います。

お伝えしておきますと、「Somethin' Else」も「Midnight Blue」もブルーノート縛りに関係なく人気作かつ有名な作品なので聴いておいて損はないです。これらを好きになる人もたくさんいると思います。その意味で3位と5位というのは理解できる順位ではある。

が、もっと下の順位のアルバムの方が個人的におススメ度が高いものもありますので、その辺りを次回説明したいと思います。

とりあえず今回は「Blue Train」と「Maiden Voyage」を聴く、これを覚えて帰ってください。

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