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私的ジャズ論:オーディオフォーマット聴き比べ<その4>聴き比べてみた!

皆様、こんにちは!みなさん新年はいかがお過ごしでしょうか?思いのほか寒い日が続きますね。インフルエンザも流行っているようですのでお気を付けください。

今回は、いよいよ4枚の聴き比べです。前回記事はこちらです ↓

聴き比べる作品はチックコリアの傑作「リターントゥフォーエバー」。

Chick Corea / Return to Forever(1972)

ジャズだと私の記事でもたびたび登場しますが、米国のブルーノートというレーベル(発売元)が非常に有名です。この作品の発売元であるECMはドイツのレーベルなんですが、「静寂の次に美しい音」という誰が考えたのか最高に胸が高鳴るキャッチフレーズで有名なレーベルです。必ずしもジャズレーベルと言うわけではありません。

今回比較する媒体は以下の4種類。

<比較する媒体>
・レコード  → 昨年に中古で購入した国内版で再発ではなさそう
・CD(スタンダード) → 1992年前後に発売されたものと思われる盤
・CD(SHM-CD/スーパーハイマテリアル) → リマスターの記載無し
・CD(SA-CD/スーパーオーディオ)→ タワレコ企画盤でDSD音源

レコード盤とSA-CDは前回の比較と同じ組み合わせです。正確にはレコードは前回は輸入盤で今回は国内版です。他に前回比較と違うのは、他のCD2種類ですね。前回のコルトレーンの時はルディヴァンゲルターの24BitリマスターとケヴィングレイがリマスターしたUHQ-CD盤でしたが、そこが今回は素のCDとSHM-CDになります。どちらも新たなリマスターはされていないようです。

最近再発されるCDは何かしらリマスターやら高音質化が図られており、素のCDはかえって珍しいと思えてしまいますが、90年代にレコードから一斉にCDにコンバートされた当時の盤はレコードよりも音が良いのか気になりますよね(多分)?

SHM-CDは、ディスク読み取り面の素材の透明度向上で再生機の読み取り精度を高めたもの。いわばハードウェア側の品質向上を目的とするもので、音源そのものは素のCDと同じだと思われます。このSHM-CDでの再発も近頃は多くみられますので要注目です。

なお、前回聴き比べの時の記事はこちらです ↓ ぜひ確認してください。

前に聴き比べた時と同じように、今回も要素ごとに点数とかではなく聴いた感じをみなさんに分かりやすく文章でお伝えしようと思います。

リスニング環境は前回記事にもありますが、こんな感じです。

レコードプレーヤー: DENON DP500M(カートリッジ(針)は純正)
CDプレーヤー: Marantz SACD30
アンプ:Marantz MODEL30
スピーカー:Bowers & Wilkins S2
ケーブル:ブランド・型式は覚えていませんが別売りで購入
電源:専用電源タップではなく、一般家庭電源タップ

では、聴き比べに入りましょう!


<レコード>

レコード盤の音は全般的にこんな感じでした。

・中古で盤の状態が良くないのか、プチプチ・チリチリノイズが多い
・音そのものは立体感、メリハリ、分離感もあって良い

前回のコルトレーンの時の比較では、レコード(アナログ)盤は最下位でしたが、今回は少なくとも最下位ではありません。コルトレーンのアナログ盤は新品(輸入盤)で買いましたが、プレスする型が昔からの使いまわしとかで良くなかったんでしょうかね?コルトレーンのレコードのフラットさはこちらでは感じられず、むしろメリハリや分離感も出ていて良い感じでした。

ただ、毎度ですがレコードならではのプチプチ・チリチリノイズが結構入ります。特にこの作品は静かな部分も多いので、そこではずっとプチプチ言うので気になると言えば気になる。

皆さんに勧めるわけではないんですが、このプチプチノイズだったり手垢やほこりが気になると、私はキッチンに行って軽く水洗いしてしまいます。このレコードも過去に2回ぐらいざっと洗い流してから聴いているんですが、1回洗ったら5%ぐらいはノイズが減る気はするんですが、劇的な効果はないですね。最近出回っている新品のアナログではこういうノイズはかなり少ないんですけど、さすがに数十年経っていると埃からは逃れられないようです。

次からはCDです。


<CD(スタンダード / 素のCD)>

こちらは意外にも

・レコードよりも音がフラットに聴こえる
・楽器の音の立体感や分離感、音圧も今一つ

という感じでした。

もう少し例えると、音の手触り感がちょっとだけ減って、音空間が縦に2ミリ縮まり、奥に2ミリ引っ込んだ感じですね。ダイナミックレンジが小さく音像がフラットになり、やや奥まった感じ。そもそも録音レベル(再生音)がレコードよりも小さいことも影響しているかもしれません。が、それでも明らかにレコードにはあった立体感が減っていて、楽器出すかすかなニュアンスは聴こえてこない。

昔々、CDなんて聴けたもんじゃないと言っていたジャズおじさんとかがたくさんいたと思うんですが、この音像だとするとわかる気がします。前回のコルトレーンの時にはレコードがこのような感じでした。こじんまりしている。

ただ当たり前ですが、プチプチノイズがないので、そこは大きなメリットです。あと音質も完全に比較の問題なので、普通の人がこのCDだけ聴いて「音の立体感が足りないな」と思うことはないはずです。この作品のもつどことなくアンビエントな雰囲気はむしろフラットな音像の方が好きと言うリスナーが居ても不思議ではないでしょう。

次はSHMフォーマットのCDです。


<CD(SHM-CD(スーパーハイマテリアルCD))>

結論から言いますと

・音質的には素のCDと同じ

と感じました。

何度か聴き比べましたが、音的な違いで明確に違うなと思うところがありませんでした。何か違うかもしれないな?と思わなくもないですが、じゃぁどこが違うのかと言われても、明確にXXと言えるところがない。気のせいの可能性もあるわけです。

考えてみれば、このフォーマットはCDの読み取り精度を高めるという媒体側の工夫です。つまり読み取りエラーがほとんど無ければ音はほとんど違わない。しかもエラーになる箇所は再生の都度異なるでしょうから再現性がない。さらに、ハードウェア側は音楽を奏でているのではなくゼロとイチのビットを読み取っているにすぎず、「ドラム音が小さいね」とか「ボーカルがメリハリが足りないね」などと人間が聴きとって意味がある場所が都合よくエラーになるわけではない。読み取りエラーが少ないという理論的な根拠があるものの、それを体感できることは無いんじゃないかなと言うのが聴き比べた感想です。

ただ、これはこれで問題はないんです。なぜかと言うと、このフォーマットにしたからと言ってCDは値上がりしていません。むしろ値段は再発で格段に下がっています。初CD化(90年代前半)だったであろう素のCDが2,233円(税抜)のところ、再発(2016年前後)のSHM-CDでは1,500円(税抜)になっているわけです。ぐっと安くなって性能が上がってるんだから、いいんじゃないでしょうか?世の中便利になったよねと言う話です。

この感想に納得がいかない方々もいると思います。「いやいや、私が聴いた作品では明らかにSHM-CDで音が良くなりましたよ」と。恐らくですが、それはCD再発時にリマスタリングが施されているんじゃないかと思います。SHM-CDの製造に切り替えるのは偶然ではないわけで、多くが再発によるテコ入れなどのレーベルの販売戦略があるはずです。その中にリマスタリングという売りが入ってくるんじゃないかと。実際、SHM-CDフォーマットで再発されたもので、XXXX年にリマスタリングと謳っているCDも多くあります(ちっちゃな帯やCDケースの背面に書いてある)。

この後に説明するSA-CDのライナーノーツに書いてあったんですが、ECMは音へのこだわりから、マスターテープの貸し出しは行わず、レーベルの音は完全に自社内で管理して来たそう。なので恐らくですが、リマスタリングでの再発というのもほとんど行われてこなかったんでしょう(配信用にハイレゾ化はあったらしい)。ということで、今回のSHM-CDもCDの素材が違うだけで音源は完全に同じと理解した次第です。

逆に言うと、そんな音にうるさいECMがタワレコ企画でSA-CDを出すというのは画期的なことなんです。

ということで、SA-CD盤に移ります。


<CD(SA-CD / スーパーオーディオCD)>

こちらは前回コルトレーンの時と同様、意味のある違いが出ました。

・音の質感は今回のフォーマットの中では最上級
・録音レベルも上がり、音像の立体感も最上級
・低音を強調し過ぎたせいか、サウンド全体にやや濁りを感じる

今回もさすがのSA-CDだと思いました。普通に音が良いかどうかではSA-CDが1位だと思います。楽器の音の質感も伝わってくるし音の分離も良い。この部分ではレコード盤が次点で大健闘ですが、プチプチノイズが全く入らないCDの方がトータルでは圧勝です。

が、問題点もあるかなと思います。3点目に書いた点ですが、低音が強調され過ぎているきらいがあります。この作品の良さは浮遊感がある音がたんたんと流れる様を感じ取れるところにあると思ってるんですが、低音が強調され過ぎたのと、楽器の音の立体感が増してアクが強くなった結果、作品のアンビエントな要素が引っ込んで、ロックバンドっぽくなってしまったかなと。

それを好むリスナーもいると思うのですが、ちょっとやりすぎたかもしれないなと思う私がいます。大雑把に言えば、低音はもう2%~3%は減らしても良いのではないかなと思いました。コルトレーンの聴き比べの際にはリマスタリングで左右のチャネルが分かれすぎてしまったのが気になりましたが、この作品では楽器のバランスや音像に変更を加えるような思い切ったリマスタリングはされていません。やはりECMの意向でしょうか?逆に、だからこそ違いを出そうと低音を強調したのかもしれません。


<総論>

今回の最終結果発表です。

良い音と言う意味で順位を付ければ、SA-CD → レコード盤 → CD(素のCDとSHM-CDは同点)という順番になります。ただ、レコード盤は私の中古盤の状態が良くなく、結構なプチプチノイズが出ますので(静かな部分はもちろん、大きな音での演奏中でも聞こえます)、人に勧めるのであればわざわざ(中古)レコードを勧めることはないですね。SA-CDもやや高価なので、初めて聴く方には廉価盤で値ごろ感のあるSHM-CDが一番良いのではないでしょうか?

既にこの作品を持っていてお気に入りだというリスナーの方にはSA-CDは良いと思います。私も普段聴くのであれば、やっぱり音が良いSA-CDを聴くかなと。

あとは、CDよりもアナログの方が音が良いということもあるんだなというのも分かりました(しつこいですが、プチプチノイズが欠点です)。

<理想形>

私の理想形はSA-CDの低音を2%カットしたバージョンかなと思いました。SA-CDを聴いてからレコードを聴くと確かに低音が物足りない感じはします。なので、多少低音が強調されること自体は良いのかなと。そのさじ加減が好みではなかったということなんでしょう。

今後もお気に入りの作品がSA-CD化されれば、ちょくちょく買うと思います。タワレコの社員の皆さん、今後とも企画と発売をよろしくお願いします!

今回の聴き比べはこれにて終了です。ちょっと記事が長くなってしまったんですが、楽しんでいただけましたでしょうか?聴き比べはまたどこかで企画出来たら良いなと思っています。

次回記事はマイルスデイビスをやろうかと思ってます。私なりのエッジの立て方を考え中です。お楽しみに。

では、またお会いしましょう!

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