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ジャズに興味がある人に贈る私的ジャズ論 その2 ジャズを聴き始める人はこれを守って!

前回、第1回となる「その1」を公開したのですが、(私の記事的には)結構な閲覧数になっておりまして、皆さんのジャズへの関心の高さがうかがわれます。

今日は、そんな関心のある皆さんに「これを守ってください」というルール的なものをご紹介します。別にこのルールに従わなくても生きてはいけますが笑、ジャズの楽しみを充分に得られないまま「あぁやっぱりジャズって難しいな」で終わってしまう可能性だけが高まります。

前回の記事はこちらです。要するに「ジャズの黄金期というのはハードバップ期だよね」という話ではあります。

では、始めましょう。まず、一番最初に守って欲しいルールは

ルール1:最初の1枚にマイルスデイビスを選ばないこと

です。これには世界のマイルスデイビスファンが発狂する可能性もありますが、あえて言います笑。

マイルスデイビス(マイルズと濁点の場合もあります。英語ではズのようですね)はジャズ界では非常に有名でかつポピュラーミュージック界にもその名声は広がっていますので、ジャズを知らない人でもマイルスは知っていたり、ググればすぐに「マイルス天才!」、「マイルスは偉大!」みたいな文言が見つかります。

こういう意見に文句をつける気はさらさらありませんが、初心者にマイルスデイビスはおススメしません。理由は、マイルスデイビスはジャズの「じゃない方」、「誰とも違うジャズ」の制作に力を注いだミュージシャンだからです。

なので、マイルスデイビスには歴史的名盤というものがいくつもありますし、私も好きなアルバムはあります。が、これをジャズをほぼ聴いたことが無い人が理解して「おぉスゲェ」となることはまずないでしょう。

マイルスデイビスを理解するには、まずジャズの王道を理解して、さらに言えば「こういうジャズってありがちだよね」ぐらいの聴き慣れと少し飽きるぐらいの感覚が必要だと思います。もちろん、マイルスの作品でも今聴けば普通のジャズもありますが、それでもそういう普通のジャズなら、他のジャズメンのアルバムの方が良いアルバムがあったりします。

ルール2:自分が考えるジャズがどんなジャズなのかイメージしておくこと

これもとても重要です。「ジャズ」と一言で言ってもいろんなジャズがあります。例えば、ホテルのラウンジでピアニストから奏でられるジャズ。黒人が汗だくでサックスを吹いているイメージのジャズ。なにやらセクシーな女性がきれいなドレスを着てバックバンドを従えて歌うジャズ。クラブDJのサンプリングネタになるような踊れるジャズ、等々。

全部ジャズですが、音楽的にはほぼ別モノです。なので、ジャズを聴きたいなと思っても、まず自分が聴いてみたいジャズがどんなものなのかを理解しない限り、そういうジャズに到達できません。とっかかりとして自分が聴いてみたいジャズはどんなジャズなのかイメージしてください。

ルール3:CD(もしくはレコード)を買って聴くこと

サブスク全盛の音楽業界ですが、ジャズは特にですがフィジカルで盤を購入することをおススメします。理由は解説が付いていることと、「パーソネル」といって、そのアルバムに参加しているミュージシャンの一覧が記載されているからです。あとは、せっかく買ったんだから何度か聴いてみようというモチベーション(これは実は非常に重要!)。

例えば前回記事で、マイルスデイビスの曲で枯葉が云々という話を例に出しました。しかし、これはアルバムでいうとキャノンボールアダレイと言う別のジャズメンのアルバムでして、マイルスはこのアルバムで集められたトランぺッターという立ち位置です。

実際に Spotify でも確認しましたが、この「枯葉(Autumn Leaves)」はキャノンボールアダレイ名義であり、マイルスではヒットしません。が、ジャズファンは誰もキャノンボールアダレイの枯葉とは思っておらず(ちょっと言い過ぎか)、実質マイルスがリーダーでキャノンボールアダレイの契約を利用した吹込みと思っているわけです。曲もマイルスのトランペットが支配しています。これはほんの一例で、ジャズではリーダーも重要ですが、サイドメンと言われる、その演奏の場に呼ばれたリーダー以外のミュージシャンの活躍も非常に大事なんです。名盤と呼ばれる作品の多くは、こういうサイドメンの大活躍があることを忘れてはいけません。なので、そのアルバムに誰が参加しているかと言うのは重要なんです。

もう一つこのパーソネルが重要なのは、楽器編成が分かるからです。先ほどルール2で言いましたが、ピアノジャズを聴きたかったら、バンドにピアノが居なければ意味がありません。テナーサックスなど管楽器のジャズを聴きたいのに、ピアノトリオ(ピアノ・ベース・ドラムの編成)のアルバムを聴いても同じく意味がありません。

ジャズもある程度聴き込んでくると、好きな楽器や好きなバンド編成なども出てきます。なので、このパーソネルが非常に役に立つというかなければこまるわけです。ちなみに、私個人はテナーサックスが好みではあります。

解説の方ですが、解説は国内版のCDを買わないと付いてこないですが、昨今は高音質CDとかリマスターで再発とかがジャズでは過去の名盤のCD再発が頻繁に行われているので、そのあたりのCDを購入すればよくまとまった解説が読めると思います。ジャズの用語やミュージシャン、そのアルバムの当時の評価や今の評価などいろんなことが書いてあって、ジャズをこの先も楽しんでいく際の情報のとっかかりになるはずです。ジャズを知らない人はとりあえずわかった気になって10回ぐらい読んでおくと、数年後に「おぉ、今の私には解説の意味が分かるぞ!」となることは間違いないでしょう(多分)。

ちなみに、CDではなくてアナログレコードを入手することもジャズ愛好家の中には多いのですが、初心者の方は聴きやすさとか解説付きと言う意味ではCDで良いのではないかと言うのが持論です。もちろん、昔の雰囲気をまとったアナログ盤を持ちたいというのは分かりますので笑、買いたいという人を止めはしません。

ルール4:数枚ぐらいのCDを繰り返し聞くこと

ポイントは1枚のCDを聴くのではなく、最低でも数枚ぐらいは買って聴き比べることです。すぐには理解できないことも多いでしょうが、各アルバムを最低でも10回聴き込んでください。そうすると、自分の中で「これは好きかも」とか「このアルバムとあれとはちょっと違うな」とか、好みや違いに気づかされることが多くなってきます。そうすると、もうジャズファンの一歩手前です。

ルールは以上になります。この4つのルールを守って半年から1年ぐらいジャズを聴き込んでください。わからなくても良いです。そのうち分かってきます(多分)。

ちょっと私は世代は違うのですが、昔々ジャズ喫茶というのが大いに流行った時代があります。先ほどルールで説明したCDに付属する解説を書いているジャズ評論家の方達の多くは、こういうジャズ喫茶に通ってジャズを "学んだ" 人達です。レコード1枚が当時のサラリーマンの月給ぐらいの時代、舶来の大衆音楽であったジャズは、日本ではジャズ喫茶でしか聴けない貴重なものだったらしいです。最初は全然わからなかったけど、じっと耳を傾けていたら好きになってしまっていた、みたいな感じなんでしょう。なので、皆さんも慣れれば好きになれます。

じゃぁ、どんなアルバム(CD)を買いそろえたらいいんだ?という話になるかと思いますので、次回はそのあたりの話をしたいと思います。一応言っておきますが、この辺りは一晩中話せる熱いジャズ愛好家も多いと思いますが、あくまでも私のおススメです。

では、また次回お会いしましょう。

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