記憶のリブート 第九話
臨床試験
臨床試験は8月に行われることになった。
ケント
美希
美穂
3人は同意のもと、面会し、自分の状況や手術に対する期待や不安を話し合った。
美穂は6月にはだいぶ落ち着いていたので、手術は受けないことを決めた。
臨床試験を終えて、ケントは母からの記憶をなくした。
美希はAI依存症の彼氏恒雄の記憶をなくした。
お互い、手術の成功を喜び、退院してから、美穂を呼んで、ささやかな祝賀会をした。
「私も、手術しても良かったかも」
晴れ晴れとした2人の様子を見て、美穂は明るく言った。
「美穂さんは自分の力でコントロールできているから、もし、またこういうことがあっても、自分で修正する方法を身につけている。そこがすごいと思うんですよ」
「そうかなあ。ほとんど先生の力だよ」
ケントのシリアスに捉える感じや、美希の恋に生きる様子がなくなっていて、普通の明るい人になっていた。ちょっとつまらない、そう感じた美穂は、もう一軒行くという2人と、駅前で手を振って別れた。
美穂はもうリセットしなくなっていた。
両家とも家族ぐるみの付き合いが濃くなり、2人の結婚はもう目前だった。
週末には結婚式場の見学をすることになっている。
ケントの母親は、ケントが会社に行っている間に殺害された。
(第十話に続く)
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければサポートお願いします。いただいたサポートは創作活動に使わせていただきます。