![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/153335524/rectangle_large_type_2_a023aa201a96f728ea15f6beaeda93e3.png?width=1200)
Photo by
snafu_2020
記憶のリブート(第十三話)最終話
美穂は伸晃の部屋で、結婚式案内状の宛名をチェックしていた。
「全部オッケーだね。私、あとでコンビニ行くついでにポスト入れておくね」
「頼むよ」
「あー、疲れたね。アイスでも食べよっか」
まだ二人で暮らし始めたばかりで冷蔵庫も一人暮らし用のままだった。伸晃は美穂にカップのバニラアイスを渡した。
「ありがと。それにしても、美希さんこそリセット症候群だよね」
「ああ。記憶なくして、でもやっぱり好きになっちゃうってか」
「わかるなあ、その気持ち。やっぱり同じ人好きになっちゃうの」
「美穂はもうリセットしたいと思わないの?」
「思うよ」美穂は小さく笑った。「この結婚式リセットしたい」
「おいおい、冗談だろ」
美穂はいたずらっぽく笑った。「冗談だよ、伸晃。本当はすっごく楽しみにしてる。じゃ、これポストに入れてくるね」
「おう」
美穂が玄関を閉める音がやけに大きく聞こえた。
伸晃は二人の紹介ビデオを編集していた。気がつくと四〇分はたっている。
美穂はまだ戻ってこない。
「遅いな」
一番近いコンビニはここを出て左に行くと小さな川が流れていてその橋を渡った先にある。五分もあれば着くはずだ。ポストはそのすぐ先にある。
美穂に電話をかけると、ソファの上で鳴っている。
「ったく、美穂何やってんだ」伸晃は外に出て橋を渡っていた。知らない番号からスマホに電話がかかってきた。
「田中伸晃さんのお電話ですか。」
「はい、そうですけど」
「…落ち着いて聞いてください。奥さんの田中美穂さんですが、交通事故に遭われて、お亡くなりになりました。午後四時十五分、即死でした」
「そんな…」
伸晃はスマホを川に投げ捨てて、獣のような声をあげて叫び続けた。
(完)
いいなと思ったら応援しよう!
![河村 恵](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/163254068/profile_dea0a33dc7dcc7e5c09f70be44782473.jpg?width=600&crop=1:1,smart)