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記憶遺伝症 ケント キャッ 前を歩いていた女性がめくれ上がったスカートを押さえた。 店先にくくりつけてあるヘリウムガス入りの風船がバタバタと揺れた。 白いレジ袋が一気に空へ舞い上がり、雲の中に消えていった。 神社の祭りに来ていたケントはまた、思い出してしまった。 母は祭りの日に、産気付いたんだった。 その日は強風で、中止が危ぶまれたが、早く切り上げることを条件に決行されたんだった。 神社の参道を吹き抜ける風は、人々の熱気と、さまざまな匂いを運んできた。 うず