見出し画像

統合失調症の話をしてみる その1

「統合失調症って精神病でしょ?関係ないや」
病名だけ聞いてそんな風に感じる方は少なくないと思います。
でもね、
実は「うつ」をきたす病気のひとつで、
人口の1%が発病する病気なんです。

そして、
典型的な精神病の代表ですから、
どうしてもその急性期の了解しがたい奇妙な様子からマイナスのイメージを持って、
怖いもの、考えたくもないものと捉えてしまう。
自分や家族が発病したことに対して懐疑的となってしまう。
またどう対応したらよいか悩んでしまう。

まあ、メンタルヘルス問題の極端なところが出やすい。
今回はそんな統合失調症について知っておいたら役に立つかもしれないことを書いてみます。

臨床心理学中辞典(2023)から

統合失調症(拙稿)
「定義」
Schizophrenia、Schizophrenie(独)
統合失調症とは、精神障害のひとつである。正式名称は2002年に精神分裂病から統合失調症に変更された。

「概要」
古来より存在する精神障害であり、三大精神病のひとつである(他は気分障害とてんかん)。
生物学的、脳科学的定義は長年の研究にもかかわらずいまだ定まってはいないが、歴史的証明から、統合失調症の存在自体は疑う余地はない。
脳の機能的障害によって生じるが、その発生期序はいまだ解明されていない。
古来よりその発病率は1%である。発病に遺伝的要因が関連することは自明であるが、一卵性双生児でも両者発病率は50%であり、親兄弟が統合失調症である場合の発病率は10%に過ぎない。
かつては妄想型、緊張型、破瓜型という下位分類がされていたが、これらに当てはまらない患者も多く、典型例としての理解以外にはこれら下位分類は意味を失った。
 
その症状は陽性症状と陰性症状、認知機能障害に大別される。
陽性症状とは幻覚や妄想、自我障害といった「一般から見て明らかに奇異な言動、感覚」を言う。シュナイダーの一級症状「考想化声、対話性幻聴、自分の行為を批判する幻聴、自らの身体への被影響経験、思考奪取、思考吹入、考想伝播、妄想知覚、作為体験」は典型的な陽性症状である。
陰性症状とは「本来あるべき機能が失われている状態」であり「意欲減退、無為自閉、感情鈍麻、連合弛緩」などを言う。
認知機能障害は集中力、論理的判断力などさまざまな知的能力の障害である。
 
入院治療は初期にはしばしば強制入院の形を取り、患者の人権を守るために精神保健福祉法により精神科入院の手続きは定められている。
適切な入院治療は患者と周囲の安全を確保し、治療を導入するために必要かつ有意義なものである。
しかし統合失調症を回復する疾患として捉えられていない医師や病院が未だ存在することも事実である。
薬物療法の功罪については、適切な薬物療法の継続により生命予後と再発率が低下することはメタアナリシスで示されている。すなわち、統合失調症と診断された際には薬物療法は当然に選択されるものである。
薬物療法はドパミン仮説により説明されることが多いが、仮説に過ぎないことは治療困難者の数からも自明である。
電気けいれん療法も有効な治療手段である。
 
統合失調症治療の中心は精神科医療である。発病の初期には抑うつ症状を呈することはまれではなく、心理治療の場面にも統合失調症者は現れる。背景にある思考障害に気づき、精神科医療につなげることは心理治療に携わる者の責務である。
 
司法判断において可知論が前提とされ、不可知論が退けられているように、統合失調症という診断名のみで心理的治療の対象外とすることは過ちである。
病状悪化の際には「色、金、名誉」に表される本人の躓きやすいパターンがしばしば存在する。病状の安定期に自らの行動を振り返り、パターンに気づくことが病識を深め、回復を支持する。

職場ではどんなふうに始まるだろうか

典型的には、
発病は10代後半から30代です。
始まりの症状は、
「元気がない」「眠れない」といったありふれた症状であることがほとんどです。
統合失調症、といえば「幻覚妄想」、と浮かびましょうが、それは後からだんだんと出てきます。

元気のなさは、
「なんだか自分のことを周りの人がじろじろ見ている感じがする」といった漠然とした被注察感によるものであり、それで元気がない、ということもあります。
また、発病に伴う漠然とした消耗から元気がないこともあるでしょう。

元気のなさからミスが増えるなど業務にも影響が出てきます。

非注察感が更に発展して、
「周りの人に悪口を言われている」
「自分が何かをすると皆が話題を変えるのはそのためだ」
といった関係被害妄想になってしまうと、
出勤できなくなってしまうことや、
まれには職場での激しい行動化に至ることもあるかもしれません。

「独語空笑」という一人なのに会話するようにぶつぶつとつぶやいていたり、奇妙なタイミングでニヤニヤしていたりする症状もあります。
独り言も奇妙な表情も、人によっては癖としてあるものですが、
その人のもともとの様子と違う奇妙な感じ、というのが見分けるポイントになるでしょう。

職場での対応

職場でできる対応としては、
いわゆる「うつ」と変わるところはありません。
職場のメンタルヘルスの常として、事例性に着目して対応していきます。

元気がなくてミスが出ていたり、
悩んでいる様子であれば、
話を聞いて、
メンタルヘルスの問題だと感じたら精神科の受診を勧めてください。
まともな医師に出会っていただけることを祈るのみです。

回復のための基本はしっかりと休養を取ることと薬物療法です。
働ける状態であれば、
主治医からの意見を参考にしながら、
配慮はしても遠慮はしすぎず、
本人の状態と能力に合わせて働いてもらう。

もちろん人に拠りますが、
統合失調症があっても職業人として頼りにされ、活躍している方はいます。
私個人でも何人も知っています。

業務内容については、
成果を挙げ、要求されている内容に応えたら評価し、
そうでなければ指導し、当然の水準への改善を求める。
これが治療と仕事の両立支援の基本であり、
偏見に惑わされずちゃんと人間扱いする、ということに他なりません。

ちょっと一般論ばかりで長くなってしまったので、一区切り。
この項続く

いいなと思ったら応援しよう!