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営業職は縄文時代から存在したはず。

急なことだが新人営業の研修を担当して欲しい、と言われたものの、明日は明日とて予定がしっかり入っているので研修資料になれば、程度の心づもりで執筆することにした。

彼女は入社してひと月余り、テレアポは少しづつ慣れたようだがそこから先についての教育が行き届いていないようだ。
そもそもの愚痴になるが、先輩営業に同行させるのは良しとして、本人が聞いているだけでは育つものも育たないのではないか。無論、慣れた人であれば自主的にポイントを掴み、メモを残しておき、自主的にロープレでもして本番に臨むのだろうけれども。年齢から見ても、経験から見ても、それを期待するのは酷だと言わざるを得ないだろう。

という事で、営業初心者向けの『営業の目的』について話していこうと思う。

そもそも営業職とは何だろう。
キツそう、大変そう、と言った抽象的なことを聞いているのではない。

何の目的があって、営業職という職業が存在するのだろうか?
この合理化のご時世、不要な職業は消滅しているはずである。
ところがこの職業、どうも数千年前から存在していたようだ。

遥か縄文時代より

近年の研究で、どうも縄文時代は単なる狩猟採集の時代ではなく、原始的な植物栽培がおこなわれ、定住化が進んだ時代であったらしい。
詳細についてはもう少し調べてから執筆したいものであるが、一方でこの時代、日本全域での交易が盛んであったらしい、という事も分かってきている。
代表的な交易品が長野県産の黒曜石であろう。
この黒曜石、石槍や鏃に使われたモノのようであるが、長野県産の黒曜石が遥か彼方の北海道(木古内町)で発見された、というのだから驚きである。
現代でも長野から木古内と言えば相当な距離であるが、高品質の黒曜石を求めて『誰か』が『黒曜石』を『運んだ』ことは間違いがあるまい。
(一人が運んだのか、いくつもの経由地を挟んだのかは分からない)

勿論、無料で…単なる好意と冒険心のみで輸送した訳ではあるまい。
間違いなく、何かの『利益』が存在していたはずである。
当時は貨幣というものが存在しなかったから、当然に物々交換であろう。
交換対象は何だったのだろうか。
土器だろうか。
食料だろうか。
貴金属かもしれない。
ともかく、『何か』と『黒曜石』を交換したはずである。
現在は『何か』と『貨幣』を交換するわけであるが、理屈は同じこと。
これこそ商人…原初の営業であったと思われる。

則ち、営業とは『自社の商品を』『貨幣に変える』ことが目的である。
まずはこの大原則を押さえておきたい。

何を、どのように売るのか?

果たして縄文の日本人はどのように『長野県産の黒曜石が高品質』であることを知ったのだろうか。
通信もない、何なら文字すらない時代である。
それでも道南にまで交易するのは(ヒグマですら越えられない津軽海峡を渡って!)、どこかで情報が伝わっていたから、と考えるのが自然である。
これも推測の域を出ないが、今でいう『クチコミ』であると思われる。
※もしかしたら最終氷期の影響で津軽海峡が陸続きだったかもしれない。

言葉の威力は偉大である。
おそらく、『この石を使えば狩猟の成果が何倍も良くなる』と『宣伝』した人がいて、実際に『試しに使った』人がいるはずである。
そして実際に効果があったから、『リピートした』と考えると自然ではないだろうか。

ふと思い出したのが『矛盾』の説話である。
出展は韓非子と言うから、古代中国は戦国時代の説話だろう。
ある商人が(この時代には『商人』という概念が確立していたようだ)、「この矛はどんな盾でも突き通し」「この盾はどんな矛も防ぐ」と『宣伝』したところ、ある男に「その矛でその盾を突いたらどうなるのか?」と尋ね、辻褄が合わなくなった、という故事である。
ここで重要なのは、
『商人』が「この矛はどんな盾でも貫く」と『宣伝』した、という事だ。

則ち、商品の良し悪しを見るのにまず初めに行うべきことは『宣伝』である。
これは文字ができると辻札(看板)になり、印刷ができるとチラシになり、ラジオやテレビができるとCMになり、電話ができるとテレアポをし、ITが発達するとクリック広告になっていった。

ところでこの古代より続く『宣言』の技法はその出現以来、現代にいたるまで微塵も進化していない。

コンビニやパン屋で「揚げたて」「焼きたて」を声高く伝える店員
店の前に立つ「バーゲン」の看板
いつも家のポストに入っている宅配ピザのチラシ
ドラマのいい所で挟まれるCM
日に何件かかかってくる法人向けのテレアポ
Xをスクロールすると現れるクリック広告(ゲームが多い)

要するに、人類はいつも何かを売りたがり、新しい技術ができるとまずは『宣伝』を行ったわけである。有史以来(韓非子は紀元前二世紀ごろの刊行と言われている)宣伝を続けてきた人類の事である。恐らく百年後も千年後も、人類が存続する限り変わらないだろう。

改めて、営業の目的とは

マーケティング技法、というのが発達してきたからついつい格好いいカタカナを使いたがるのは人の常ではあるけれど、営業の目的は単純明快である。
『商品』を『宣伝』して『貨幣』に変える。
以上である。

その間について、どのような技法があるのだろうか。
ここでは簡単に階層別に分けて目的を解説したい。
(一般的なマーケティング用語とは異なる)

〇認知
まずは商品を知らせなければならない。人は知らないことを買う事はできないのだから。弊社に置いてはテレアポが該当する。また、一部飛び込みを行うことがある。
かつ、目的は情報の収集である。
なぜ情報を収集する必要があるのかは後日執筆する。

〇商談
弊社は法人向け商材を提案している。店舗販売はしていないから、商談の場が必要である。
商談は上記の情報を仕入れることと、関係性の構築を主眼とする。
勿論、即決商材を販売している企業もあるだろうが、弊社の商材にはなじまない。
関係性の構築が必要な理由も後日執筆する。

〇クロージング
再提案(コンサルティング含む)および決裁者へのプレゼン、および契約締結を指す。
具体的な見積書を提示する。
正直に言うと私はクロージングが得意ではないが、この段階では極力返答を待たず、即決を促したい。

〇継続
契約締結後、納品までは勿論、納品後のアフターケアも大切な仕事である。
気に行って頂ければリピートは勿論、クチコミでの紹介も期待できる。
何なら外星人だって営業が大好きだ。
「アフターケアも万全です」


ところで誰も気づいてくれないが、私の名刺ケースは(限定販売の)メフィラス星人のモノである。

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