セックス
どこに住んでいるのかも、
名前も知らない誰か。
表情も無くまるで誰かの足元を
泳いでいた影みたいな存在と
動物のように抱き合って
舐めあって求め合う。
なめくじが移動した跡のように
ネバネバした物が手の指に絡まって心地悪い。
身体を纏う布で拭き取れず
たまらなくなってツバをつけ、
もう一度拭こうとするけれど、
髪の毛や綿、土や粉まで
絡まって思うようにいかない。
苛立ちで身体中が震えだす。
急いで風呂場に行き、
シャワーで洗い流すと
自分まで消えちゃいそうで
怖くて涙が止まらない。
何かから逃れるように
急いで服を身にまとい、
扉を開け、後ろを見ると
私の影から生臭い煙が
静かにとぐろを巻いていた。