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「25歳」を見て

買ってあったKANさんのライブBlu-ray、「25歳」を見ました。
明後日KANタービレに足を運ぶことになっていて、私は先に見ようかどうしようか迷っていたけれど、手元にある彼の姿をやっぱりはやく見たくなったので再生することにしたのでした。

2022年1月のバンドライブ映像。ファンにとっては大きすぎる意味を持つ今回のBlu-ray。
しかしながら、KANさんとバンドメンバーの華やかでポップな衣装、ダンサブルなステージングに、気がつけばずっとニコニコしていました。

ピアノを叩きながら歌うKANさん、ギターをかき鳴らすKANさん、ステージマイクで踊りながら歌うKANさん。
ある時はスティービーワンダーのように、ある時はマイケルジャクソンのように。
またある時はトシちゃんのようなターンを決めて。

MCもずっと知的で上品かつナチュラルに笑いが取れてしまう、生粋のエンターテイナー。
音楽界に蔓延する問題(!)に言及したかと思えば、何食べたかの唐突なクイズを出し答える隙を与えない緩急自在なそのトークにやっぱり心を掴まれました。

私は、最後まで一粒も涙を流さずに見ました。

KANさんは未来をたくさん描いていたし、過去の作品をすごく大切に改めて紹介してくれて、何よりバンドメンバーといっしょに楽しそうに演奏していました。
矢代さんが亡くなられたことにも触れて、彼の音楽と本当に長い間寄り添っていらしたことも話してくださって、そしてそれをしまってライブを楽しんでくださいねと話を畳むKANさんには、音楽家としての矜持のようなものを感じました。

途中、とある場面での「ありがと。」が嬉しかったです。

KANさんの後姿を、ステージ後方からとらえたカットがたくさんありました。
私はグレイヘアでダンディな60歳のKANさんも好きだけど、シルエットが浮かび上がった時に髪が黒く見えて、30代とか40代の時のKANさんをはっきりと思い出せる瞬間がありました。
記憶がどんどん甦ってくる。

ああ、この人といっしょに歳をとってきたんだなぁ。
そんな風に思いました。
私がどんな過ごし方をしていようと、KANさんはずっと音楽家であり続けてくれて、たくさんの作品を聴かせてくれて、私を、みんなを楽しませ続けています。
そう、今もなお。

こんなことを書くのは少しつらいけれど、このライブツアーがバンドツアーであったことはなんだか救いのように感じます。
多分それは彼が楽しそうだったから。
メンバーときっとスタジオでいろいろ話し合って、みんなで練習して、きっと夜にはシャンパンを飲んだりなんかして。

でも、アンコールの最後はひとりでピアノに向かい、ひとりで歌って、いつものように
「ありがとうございました、KANでした!」
と言って深々とおじぎをして、やりとげた男の顔でステージから去っていきました。

KANという看板を背負って、彼の名でお客さんを集め音楽家として生きてきた木村和さんは、やっぱりとてもかっこいい。
そりゃたくさんのミュージシャンが彼の仲間になるわけです。
きっと頑固でめんどくさい音楽家であり、それが魅力なんだと思います。

最後にKANさんがステージを去ってから、誰も座っていない、空席のピアノが数十秒映像として収められていました。
そこに何を感じるかは人それぞれかと思いますが、私は
「そこにいるべき人の姿が、あなたの心の中にずっとありますように」
という祈りのようなものとして受け取ることにしました。

きっと私はこれからもこのBlu-rayを何度も再生するだろうし、見返すたびに注目する点も変わって、何度でも楽しめるような気がしています。

そして、来るべきKANタービレは、なるべく単純に・凡庸に、楽しみにいこうと私は思っています。
ライブは楽しむものですから。KANさんがこのライブでおっしゃっていたように。

いつかKANタービレもより多くの人が見ることのできるコンテンツとなることを祈っています。

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