ジビエを食べて、将来の食卓について考えてみました。
先日、長野県飯田市にある「Cafe&Restaurant BergWind」で、ジビエを使ったコース料理をいただいてきました。私にとってはかなり贅沢な内容で、今回、大奮発しました。でも、料理はもちろん、ペアリングとして用意されたワインも、とても印象的でおいしかった...! また、ワインの勉強になっただけでなく、ジビエについて色々と考えるきっかけになったので、諸々ブログに残しておこうと思います。
まずは食べた料理から。
最初に提供されたのは、「フォアグラ・ハンバーガー 猪・ゼリー寄せ」。「フォアグラ・ハンバーガー」が濃厚な味わいなのに対して、「猪・ゼリー寄せ」は、どこかさっぱりとした味わい。さっぱりとしつつも、なめらかな脂も感じられ、後を引きます。なお、料理と一緒に飲んだのは、「楠ワイナリー・デラウェア・オレンジ」。ほのかに渋みがあり、食事と合わせると、脂っぽさが切れて口中がすっきりとします。
ちなみにオレンジワインは、近年流行しているワインで、“幅広いジャンルの料理に合う”といわれています。また、その醸造方法は、赤ワインや白ワインの醸造方法とは異なります。今回飲んだ「楠ワイナリー・デラウェア・オレンジ」は、黒ブドウのデラウェアを原料としたワイン。デラウェアの皮と種を果汁に漬け込んで醸し、味や香り、色がほどよく移ったところで皮と種を取り出し、発酵を仕上げているようです。
続いて登場したのは、「蝦夷鹿のパテ・信州鹿のノワール」。舌触りがなめらかで、臭みのような気になる風味は全くありません。味わいにほどよいコクがあるので、赤ワインが進みます。
このタイミングで飲んだのは「デュブルイユ・フォンテーヌ ポマール・1級」。フランスのブルゴーニュ地方、コート・ド・ボーヌ地区で醸造されたワインです。上品な味わいで口あたりも優しいため、つい飲みすぎました。。
「蝦夷鹿」という言葉を聞いて思い出したのは、昨年12月に北海道・釧路を取材した時のこと。現地を取材中、北海道では、蝦夷鹿による深刻な農業被害があることを知りました。また、地域では、捕獲した蝦夷鹿を活用する取り組みも行われているよう。昼食時に蝦夷鹿の肉を使った丼を食べ、お土産として、蝦夷鹿のツノが持ち手になったフォークとスプーンを買ったことなどを思い出しました。
「バターナッツ南瓜のプリン」を挟んで登場したのは、「炭火焼」。天然きのこ、あか牛、アナグマなどを炭火で自ら焼いていただきます。この時、初めてアナグマを食べましたが、想像以上においしくてびっくり。脂が甘く、噛むほどに旨味が染み出してくる感じです。これまでさまざまな人から「アナグマ肉はおいしい」と聞いていましたが、たしかに、と納得。
熊、猪のしゃぶしゃぶも。熊、猪ともに脂が少なく、さっぱりと味わうことができます。肉の味わいが比較的あっさりとしているためか、一緒にいただいた松茸の繊細な味わいを余すことなく感じられました。
炭火焼としゃぶしゃぶを食べながらいただいたのは、「シャトー・バレール・ブルジョワ級 オーメドック・1998」と「シャトー・ローザンガシー マルゴー・2級・1997」、「シャトー・ラローズ・ブーレ サンテミリオン・特級・1994」。
いずれもとてもおいしかったものの、とくに印象に残ったのが「シャトー・ラローズ・ブーレ サンテミリオン・特級・1994」です。色合いは、なんともきれいなレンガ色。また、じっくりと味わうと、干しぶどうや落ち葉など様々な風味を発見でき、とても面白い。味わいにカドがほとんどなく、とにかくなめらかなのにも驚きました。
******
ひととおり、ジビエ料理を食べて実感したことは、ジビエのポテンシャルはかなり大きいということ。今回のコース料理のように、和食のテイストが多分に感じられる料理であれば、ジビエに対して苦手意識がある人もおいしく食べられるのでは。
近年、エコな行動の一つとして推進されているのが、週に1回、もしくは数回、肉を食べない日を設けること。その背景には、牛や豚を一頭育て上げるうえでは、多大な資源が必要という事実があります。1週間のうちに肉を食べない日をつくることで、地球上の資源が守られるというわけです。
しかし一方で、将来、人口増加や地球環境の悪化が進めば、肉の需要と供給のバランスが崩れ、当たり前のように肉が食べられなくなるともいわれています。
こうした現状を前にすると、食用としての牛や豚はすでに限界を迎えており、ほかのタンパク源に目を向ける必要があると感じます。すでに大豆ミートや培養肉、昆虫など、新しいタンパク源が登場しているものの、ジビエにももっと目を向けた方がいいのでは、と思います。
野生動物の肉であるジビエは安定的に供給するのが難しい、「ジビエ処理加工施設」の設立には多額の資金や手間がかかる、といった問題があるので、少し短絡的な発想になるかもしれませんが。ただ、ジビエが食卓にもっと浸透すれば、地球環境の保護や将来の肉不足の軽減につながるのでは? おいしいジビエ料理をきっかけに、そんなことを考えました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?