赤と黒 観劇記録(12/13昼公演)
曲がいい。
一幕最後の「赤と黒」など、YouTubeのゲネプロ映像でも聴けますが、登場人物達の心情をクローズアップする楽曲はどれも印象に残るし、CASTさんたちの歌唱力はどなたも、皆さん信頼出来る。
終演後も頭の中で繰り返し印象的なフレーズが流れるのだから間違いない。
演出もいい。
楽曲を際立たせる演出、アンサンブルの底力、レベルの高さといい、光と影の操り方といいこれぞ生で舞台を観る喜び。
冒頭のシーンなど席が舞台に大変近かったこともあり群舞に圧倒されるところから始まった。
CASTさんの演技も良かった。
この、どシリアスな演目で笑いを取りに来る場面があるとは想像もしていなかった。(演者に余裕が感じられるし、見る方も安心感が湧く。)
ジュリアン・ソレルを体現する三浦さんは勿論のことアンサンブルの一人一人皆さん達者な方で固められていた。
では何が物足りなく感じさせるのか。
突き詰めればジュリアン・ソレルの登場シーンが少な過ぎる(と感じる)からではないだろうか。
「赤と黒」を世界十大小説たらしめているのは何故か。主人公ジュリアン・ソレルその人のカリスマ性ではなかったか。
舞台では既に黒服(聖職者)をめざす若者として登場するが、もっと青臭く、上流階級を憎み、ナポレオンに心酔し、才能に満ち溢れ、野心で頭がいっぱいで…鼻持ちならず、決して観客の共感は得られなくとも、それでも視線を向けずにはいられない…そんな人物を、そんな楽曲を数曲、一幕の序盤にぐわーっと吸引力を持たせて歌わせて欲しかった…気がする。「赤と黒」を歌い上げていた三浦さんならそれも出来たろうと思う。
誰もが知ってるあらすじ、設定ありきではなく。二人(それ以上?)女性を不幸にして、それでも彼ならば仕方ないか!という説得力が序盤に欲しかった。
宝塚版もあるそうですが、そちらはどう構成されているのだろうと気になります。
私の場合、ミュージカルは好きだけど恋愛ものは苦手…という一因もあるかもしれません。
この公演、音源化も円盤化もされる予定はないとの事なので実際に舞台に足を運ぶ以外観られる機会は得られません。
当日券が取れる日もありそうなので、ご興味のある方は足を運んでみては如何でしょうか。