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長月スピカ
2022年10月15日 21:19
二 3何故、由希は失踪したのか--若原の胸をその問いが重苦しく締め付ける。愛し合っていた、と思う。心変わり、とは思えなかった。判らぬが、彼女に失踪させた理由があったのだろうと思う。それなら何故、一言、自分にそれを言ってくれなかったのか--いや、その理由まで言わなくとも良い。何故、別れも告げず消えてしまったのか?--あと、残された手がかりはあるだろうか、と若原は考える。
二 4『馬酔木」のドアを叩くと、しばらくして名美が現れた。「テッちゃん!待ってたんよ。さあ入って」名美は嬉しそうに言うと、若原を抱き込むようにして中に入れた。「すみません。こんな遅くに・・・」歩きながら若腹は詫びる。「何言ってんのよ。ほら、愛人のお待ちよ!」「よお、若原。」カウンターから村上が迎えた。「すまんな村上。邪魔だろうとは思ったんだが、つい甘えてしまった。すまん。