冥い(くらい)時の淵より
一 4
村上は、ストイックに自己を抑制し、
大学で兄と共に行動すべく、
着々と日々をこなした。
そして入学したのだった。
しかし、兄の笑顔は見られなかった。
村上と会っても苦しそうな表情が目立った。
本心は常に聞けなかった。
帰省した時の、両親の声が聞こえる。
兄は日本を捨てる気になっていた。
オヤジは怒り、オフクロはヒステリックに泣いた。
今思えば、兄にしても、両親にしても、
仕方なかったのかも知れない。
自分は部屋の片隅で、成り行きを見るしかなかった。
『一彦!考え直し