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長月スピカ
2022年9月5日 20:03
一 3およそ、生き甲斐とか理想とかと、対極的な位置に自らを設置しようと思って来た村上であった。股間からは継続して快感が届けられていた。名美は、まるでペットを可愛がるかの様な熱の入れようだった。この数瞬に、彼女のそれまでの知識全てを動員させて、村上の局所に対峙しているかであった。「もう!マーちゃんったら、また考え事してるんでしょ!少し真面目に感じなさいよ!」村上の股間で、
2022年9月5日 20:51
一 4村上は、ストイックに自己を抑制し、大学で兄と共に行動すべく、着々と日々をこなした。そして入学したのだった。しかし、兄の笑顔は見られなかった。村上と会っても苦しそうな表情が目立った。本心は常に聞けなかった。帰省した時の、両親の声が聞こえる。兄は日本を捨てる気になっていた。オヤジは怒り、オフクロはヒステリックに泣いた。今思えば、兄にしても、両親にしても、仕方なかったのか
2022年9月9日 23:25
一 5「名美さん、またモスコ?」村上は、二人の時間の空虚を少しでも言葉で埋めようとするかのように言う。「モスコねえ。ふん、やっぱりモスコ飲もうかなあ。」名美は殆ど独り言のように言うと、グラスにアイスボックスから氷を放り込み、ウォッカに手を伸ばした。モスコミュールはすぐに出来た。名美はカウンターから出ると、村上の横の椅子に坐り、今一度村上の唇を求めた。ふたりがグラスを合わ
2022年9月22日 21:24
二 1広瀬由希が失踪して一週間になる。若原徹也の焦燥は日ごとに深まり、快活な顔に苦悩の翳りが刻まれていた。深夜。若原は安物のコートの襟を立て、寒風に晒されて東山通りを南に歩いていた。どこに行くのか、あては無い。頭の中は、広瀬由希の行方の事で一杯であった。この一週間、若原は、刻一刻と身を削がれる思いで暮らしていた。由希の家には毎日電話を入れた。母親は、今日も帰っていな
2022年9月22日 21:30
二 2ひとつの光景が目の前にある。むしろ妄想であった。由希の、清楚な白い肉体が見える。その周りに数人の男達が居る。どれも残忍な目を持ち、毛だらけの無骨な体をしている。男達は、美味そうな餌を前に、その体の奥から欲情の焔を燃やしていた。由希は無力であった。恐怖と絶望に見開かれた由希の目を、若原ははっきりと見た。誘拐の妄想は、若原を絶望の淵に追い込んだ。もしそうなら--若