ティラノ

狩りは不得手だったに違いない。こけたら終わりだから、危険過ぎて冒険できない。誰かに獲物を倒してもらって確実に横取り、あるいはでかい奴と一騎討ち。遊んでる暇はない、命懸けの戦い。雄ライオンはプライドを守るために、いざという時しか戦わない。雌ライオンが倒した獲物をほとんど横取りのように貪る。それでも一応百獣の王の威厳はある。
残念ながらティラノの巨体を空中に浮かせる翼はどこにもなかった。月に向かって咆哮るティラノの悲しい姿が見えるようだ。六千五百万年前、ユカタン半島沖に小惑星が衝突する以前に、彼らに鳥への変化を決断させた「何か」があるはず。
「鳥」のラストシーンは不気味な静けさの中、車で脱出する。鳥たちも諦めたように地表でおとなしい。闇の中、一筋の光が差す向こうにあるものは明るい未来か、巨大な小惑星か。


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