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フランス国家認定ダンス教師の資格を得る道③

試験の最終科目として解剖学・生理学があります。
(毎年試験は歴史→音楽→解剖学という流れで行われているように感じます)
こちらもフランス人でさえも専門的な言い回し・名前で覚えるのに四苦八苦している様子でした。ここでは外国人・フランス人関係なくただひたすら覚える。スタートラインは一緒です。
ただし生理学は(Physiologie)呼吸がどう影響するか、骨の仕組み成長、筋肉の成長過程や構成、脳神経からの伝達、心臓の動きといった内容はフランス語話者のほうが上手に伝えられるので、ちょっとした工夫が必要になります。

【解剖学・生理学】
Anatomie と Physiologieは初め新たな言い回しがなかなか頭に入らずてんてこまいとなりますが、慣れればこちらの方がより正確に指示できるのでダンスの練習でもよくこの言い回しが使われるようになります。
(日本語でも内回し、回転というより内旋という一言で済む感じです)

解剖学の観点から、骨の名前、位置、特徴と筋肉や靭帯・腱の名前、位置、特徴を丸暗記します。普段の生活でどう使っているのか、筋肉の収縮も3タイプに分かれますので踊るときにどこがどう使われているのかはっきり理解することが求められます。

生理学は冒頭でも述べたように、呼吸がどう筋肉に役立つのか、筋肉が働くときエネルギー源はどこにあるのか、脳神経から信号が出た際どういう流れで筋肉に情報がたどり着くのか・脳からの信号ではない反射神経とは、、、といったより内部の内容になります。

授業ではひたすら骸骨人形オスキュレット君(通っていた学校で名付けられた名前です)を見て触り動かし学びます。
ペアになって実際に自分が動いたとき、どの筋肉が動いたかなども触って確かめたり。

【当日の試験】
文化省のサイトに毎年テスト対策の問題文が掲載されています。こちらを利用してテストに備えましょう。
先生もよく言いますが、基本サイトに掲載されている問題文と当日の試験内容はほぼ変わらないし、刷新もほぼされないので(新たな新事実が発覚されない限り)これさえしっかりやりこんでおけば大丈夫です。

基本は細長い紙にanatomieから一問、physiologieから一問、問題が書いてあります。2つ紙を引いて、自分が得意と思う方を選んでもう一つを返します。
30分間の準備時間で、口頭試験に向けて回答を用意します。音楽の口頭試験は全体で15分という枠はあるものの、試験官によってもう少し時間をとってくれたりと融通が効きます。
が、解剖学はきっちり15分。解剖学・生理学合わせて15分の中で説明をしていかないといけません。問題によっては質問内容が広範囲だったりもするので、回答文をどう構築していくか、どこを掘り下げるべきでそしてダンスにどう繋げるか。ここが一番大事なポイントになってきます。

私が選んだのは解剖学から”両足をパラレル(並行)状態にしてプリエ(膝を曲げる)しつつポアント(爪先立ち)の状態にいるとき、どの筋肉がバランスを保っているか”、生理学からは”バランス感覚はどこから支えられているか”です。

質問要項を選んでから机に向かって、言い回しがしにくいフランス語の単語だけ用意したり、実際ポーズをとりつつ確認をしました。同室にはもう一人いて、どちらの質問要項も難しい、どうしようと叫ぶ子がいました。そしてそれを宥める試験アシストの子。外でやってほしいと思いつつ最終日なので非常に自身は集中しています。

私は先生から、理解していることは伝わるが言葉の壁がある。躊躇せずに試験会場にある骸骨人形を使って指し示したり、紙を使って絵を書いて伝えたりとビジュアルを使いなさいと指導されました。なので当日は自分の体を使ったり骸骨人形を使って説明をし、自分の経験なども交えてここを鍛えるべきという観点も追加しました。

音楽の試験と比べて3人の試験官は常に冷静沈着、質問事項も繰り返し聴いてくるのでもしかして間違っているのか?とパニックになりました。とても暗い面持ちで試験会場を後にしたのを覚えています。ギリギリ落ちたかなと思ったのですが、18/20というこれまた高得点を得ることができました。

フランス語話者でない私たちがやるべきは、とにかくまずサイトにのっている質問(合わせて200問ほどありますが、被っている内容もあるので実質はその半分ほどです)に対する自分なりの構成と答えを用意する。そしてひたすら声に出して15分以内で答えられるようにする。発声しないと緊張で真っ白、単純なフランス語でさえ出てこなくなってしまいます。ひたすら声に出して用意した答えを暗唱する。これに限ります。

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