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Palermo Palermo

先日ヴッパタール舞踊団の青髭とsweet mamboの美しさについて少しだけ言及させていただきました。
今回は引き続きヴッパタール舞踊団1989年ピナによる振付け、パレルモ・パレルモについて少しだけその美しさや面白さをメモさせていただきます。

【stuck活用】
ピナは70年代後半から、stuckと名付けた制作方法を駆使するようになります。それまではダンスがあくまでもメイン、ドラマ性のあるダンスを展開する作品を作っていたのですが、青髭あたりからよりドラマ性、演劇性の高い作品を作るようになります。

振付も、ダンサー一人一人と何回も面談を重ねて、各々のダンサーの表現をマックスに引き出す振り付けを共に模索する。
そして演劇的要素ですが、舞台上で急に、同時期に、全く関係のない劇が繰り広げられる・・・カオスなように見えて、クスッと笑えたり胸がキュッとなったり。そんな感情の揺さぶりがもっと強くなりました。

【パレルモとは?】
イタリアはシチリアにある劇場の名前だそうです。約3週間ほど劇場で滞在(クリエイション)を行い、1989年当時のシチリアに住む人々からインスピレーションを得て生まれた作品です。
そのため、映画でいうとニューシネマパラダイスをみているような、ジブリで言うと紅の豚を見ているような・・そんなノスタルジーを作品全体で感じ取ることができます。

【パレルモ・パレルモの魅力】
オープニングから大爆発です。文字通り、爆発です。舞台上には煉瓦でできた壁があります。なんだろう、この壁?邪魔にならないかな・・うまく使うのかなと思いきや、上演のブザーが鳴った後このレンガでできた壁が崩れ落ちます。

普通、ダンス作品や演劇作品なら、この後一人の女性が出てきてポツリと座り、男性に何をされても「no!」とヒステリックに叫ぶので、この女性を軸に物語が展開するのかな?という感じで頭に情報を叩き込みます。

でも、ヴッパタールはそうじゃない。
その後息をつく暇もないぐらい、日常生活が路上で繰り返されるかのように次々とシーンが変わっていきます。主人公はいないのです。みんながそれぞれのストーリーを持っています。と言っても激しく・ではなく淡々と。

この情景を映し出すのに、演劇とダンスの塩梅が素晴らしいのです。本当に50:50という感じの割合です。女性たちが暴力から逃れるかのような激しい踊りをしているその左隣で、温めたアイロンの上にベーコンや卵を割って落としてご飯を作るおじさんが急に登場したり。全てが同時期に起こっています。関連性もなく。

踊りは往々にして、ピナ作品は男女について、だったり、暴力性だったり。そういったテーマ性を連想させられます。
重たいテーマにさらに華を添えるのが演劇要素です。ダンサーの逃げ惑う様子だったり、ニンマリしたりといった表現性にダンスという体から発せられる以上の何かを私たちは受け取ります。

しかしstuck以降、ダンサーは踊らず本当にただコーヒーを飲んでたりパスタを持って「これぜーんぶ私の!」と数えたり、料理が急に始まったりという踊らないという選択が増えました。
この、作品に関係なさそうな演劇要素が、時にコミカル時に不思議・時に不条理で作品の奥深さを与えます。

このパレルモ・パレルモもピナのアーカイブ並びにyoutubeで無料で観れた気がします・・私は無料で観ました。ダンス・テアトルとは何ぞやに興味がある方はぜひ観てみてください!ミュージカルとは全く違った不思議な作品にきっとあなたも魅了されるでしょう

それでは、良い一日をお過ごしください

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