男:よし、行こう。掃除。掃除。 いやー、今日もいろんなもん落ちてるなー。 女:暗闇でもの食べるんですからそうなりますよね。 男:確かにな! ポップコーンって、意外と手からこぼれ落ちるんだよな。 女:高野さん! 男:ん?どうした? 女:これ。 男:ん?指輪だな。 それにしても、でっかいダイヤだな。 女:これ、相当高いですよね。 男:本物だったら高いだろうなー。 女:あとで事務所に届けておきます。 男:ああ、ありがとう。 なんでそんな高価なもの落とすかねー。
男:お前の欲しい本はここにはねえ! 女:なんですか?急に。 男:お前の欲しい本はここには売っておらんと言っておるのだ。 女:いや、私、あなたに欲しい本の話なんかしてないですよね。 第一、 ふらっと寄ってみただけで、欲しい本なんてないし。 男:いや、お前には欲しい本がある。 女:もう、何なんですか? 帰っていいですか?冷やかし失礼しました! 男:ちょっと待て! 女:もう、引き止めたいのか、帰したいのか、どっちなんですか? 男:お前には欲しい本がある。 女:あの、話が
男:おい、姉ちゃん。 若い人が平日に珍しいね。 女:こんにちは。前から興味があったんです。 男:まあ、最近若い人も来るようになったが、 平日の昼間からっていうのは、滅多に見ないな。 女:以前、休日に来たんですけど、平日も見てみたかったんです。 男:ほう。それはまた何で? 女:私、お笑い好きで、いろいろ見に行ってるんですけど、 寄席は独特なんです。 「面白くない芸には絶対に笑わない」っていう雰囲気が ピリピリ伝わってきて。 男:まあ、そうだな。昔から通ってる
男:俺は困惑している。 この会社に入って7年。 人事から経理に異動して1年。 すでに経理の仕事にも少しずつ慣れてきた。 先輩、後輩、年上、年下。誰とでも、それなりに話せるようになった。 そんなときになって、今更何だ? この胸の高鳴りは。 係長。俺より二回りは年上と思われる女性。 数か月前まで何ともなかったんだ。何とも。 何かきっかけがあった訳じゃない。 でも、いつからか、電話してる声を聞いてしまうようになった。 すれ違う時に目が合わ
男:あの? 女:はい? 男:突然話しかけて、すみません。 少しお話いいですか? 女:どうぞ。こちらへお掛けなさいな。 男:ありがとうございます。 私、この美術館によく来るんです。 女:そう。私もよ。 男:ええ、そうなんです。私が来るときいつもいらっしゃる。 それで、どうしても気になってお声かけさせて頂いたんです。 女:おほほほ。それはそうでしょうねえ。私、毎日来てますもの。 男:毎日ですか? 絵がお好きなんですね。 女:ううん。そうでもないわ。 男:え?では、
女:こんにちは。 あれ、ご主人は? 男:なんか家の中入って行ったよ。 女:あらそう。 中村さんの髪切ってる途中で行っちゃったの? 男:そうなんだよ。早く切ってもらいたいんだけどよ。 ところで、貴子さんは何の用だい? 女:町内会費の回収よ。 男:おお、そうか。 大変だねー。 女:そうでもないわ。いい運動よ。 男:それにしても遅いな。 女:いつからご主人いないの? 男:かれこれ10分くらいかな。 女:あら、そう。 じゃあ、私もここで待たせてもらおうかな。 男:
男:寒くなってきたな。 女:うん。そうだね。 男:いやー、受験まであと1年か。 女:そうだね。 男:俺たちも来年3年か。 女:そうだね。 男:前島、なんかいつもと違わないか? ひょっとして、もう今から緊張してるのか? 女:そんなことないよ。 男:そうか。まあ、今から緊張しても仕方ないからな。 リラックスしろよ。 女:だから、違うってば。 2人は黙る。 男:修学旅行、疲れたな。 女:そう?私は楽しかった。 男:そうかあ? 受験までの大事な時期なんだから、 修
男:ちょっとティッシュ取ってくれ。 女:無理。取れない。 男:お前の方にあるんだから、取ってくれよ。 女:届かないもん。 男:ちょっとこたつから出て取ってくれればいいだろ。 女:やだ。寒いもん。 男:今日はそこまで寒くないだろ。 女:それならあなたが取れば良いじゃない。 男:いや、もう俺、ミカンむき始めてるんだよ。 女:だから何なの? 男:ミカン、裸で机に置かなくちゃならないから。 女:どういう理屈なの? 自分でもおかしいと思わない? 男:思うけど、もう、すっと取ってくれ
女:あら、高橋さんおはようございます。 今日はお早いですね。 いつもは夕方いらっしゃるのに。 男:今日からよ、朝来ることにしたんだ。 女:あら、どういう風の吹き回しで? 男:今まで夕方に新聞見てただろ? 俺なんか夜の10時には寝るからよ。 ほぼ一日終わりかけに新聞見てることになんだよ。 よく考えたらよ、そこからニュース見ても仕方ねえと思ってよ。 女:そうですか? それ言い出したら、その日のニュースがその日の新聞に 載るわけじゃないから、キリがないん
男:志乃さん、今日もお疲れ様でした。 女:お疲れ様。 男:いやー、お化け屋敷のバイトってホント面白いっすよね。 人怖がらせてお金もらえるの、このバイトだけっすもんね? 女:違うわ。 男:え?他にもあるんすか? 女:そうじゃなくて。 「怖がらせる」が違う。 男:そんなこと言って、志乃さん、今日も口裂け女で、 お客をヒーヒー言わせてたじゃないですか。 女:お客様が勝手に怖がるの。 口裂け女は怖がらせようとは思ってないわ。 男:哲学的っすね。 女:あ。その言い方は納
男:暇っすねー。 まあ、こんな田舎の遊園地で、しかも今年一番の寒波の日っすからね。 お客さん来ないっすよね。 しかも、冬はお化け屋敷って感じじゃないっすもんねー。 聞いてます?志乃さん? 女:お化けは喋らない。 男:志乃さんはプロっすねー。 でも、口裂け女なら、少し話してもいいんじゃないっすか? 人よりも口が大きいんだから。なんちゃって。 女:口裂け女が話すのは襲うときだけ。 ミイラ男は一言も話さない。 男:分かってますけど。朝から誰も来てないっす
男:どうだ?進展は? 女:悪くないわね。あと1ヶ月ってとこかしら。 男:それはいいな。 女:ちょっと物足りないくらいだけど。 男:余裕ぶっこいてんじゃねえよ。 取れると思ったら取れないんだよ。 女:このUFOキャッチャーみたいに? 男:ああ、そういうことだ。 女:にしても、何でいつもここなの? 男:誰も俺たちに関心を持たないからだよ。 みんな、自分が楽しむことしか考えねえ。 それに爆音で会話も聞かれねえしな。 女はUFOキャッチャーを見る。 女:でも、そろそろ
男:どこにいるんだろう。 女:きゃっ! 男:あ!ごめんなさい。 前見て歩いてなかったもんですから。 あれ? もしかして、美代ちゃん? 女:え? 男:やっぱり美代ちゃんでしょ! 懐かしいなー。 俺だよ、俺。田口。田口純。 女:田口君って、南小の? 男:そう!南小の同級生の田口! 女:本当に?何年ぶり? 男:小学生の卒業式以来だから、15年ぶりだよ! そっか、美代ちゃんも高木たちの結婚式呼ばれたんだ。 美代ちゃん、夏子と仲良かったもんねー。 女:えっ?
女:どう? 男:いまいちだなあ。 女:そっか。 カレーって難しいのね。 男:おいおい、オープン初日に言うなよ。 女:大丈夫。今日一日オープンして、お客さん一人も来なかったから。 もはや開店日じゃないわ。 男:そうだな。 それにしても美味しくないな。 女:何が足りないのかしら? 男:コクじゃないか? 女:あのさあ、ずっと前から思ってたんだけど、コクって何? 男:うーん、俺も分からん。 女:それにコクの意味が分かったところで、 どうやって出したらいいかも分からない
男:すいません。そこ、ちょっといいですか? 女:あ、ここ?ごめんねー。はい。どうぞ。 あなた、コーヒー好きねえ。 さっきからコーヒーばっかり。 男:はあ。 あの、失礼ですけど、ここで何されてるんですか? 自分、ドリンクバー何回も来てますけど、 ずっとここにいらっしゃいますよね? 女:ここが好きなの。 男:あの、まさかと思いますけど、 無断で入って来てるわけじゃないですよね? ドリンクバーだけ楽しみに、みたいな。 女:あら、失礼ね。ちゃんと料金払って
女:竹本君、何してるの? 男:あー、梅さん。ちょうどいいところに来た。 書類探すの手伝ってくれる? 女:何?また社長から言われたの? 男:そうなんだよー。 さっき電話かかってきてさ。 「書類忘れたから、駅まで届けてくれ」ってさ。 もう、本当に毎回、毎回大変だよー。 女:本当にね。私が入る度に、机の上、ぐちゃぐちゃだからねえ。 男:そうでしょ? もう、梅さんから言ってやってよ。 女:そうはいかないわよ。私はただの清掃員だもの。 男;だよなあ。 女:そう。それ