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ウルトラQ 第17話「1/8計画」感想 1/8計画を荒唐無稽とも言い切れない今の世界


今回はウルトラQ第17話「1/8計画」の感想です。
怪獣や怪物の類が登場しないこのエピソード。
それこそ円谷特撮の真骨頂という感じもしますが。


登場人物

レギュラー陣
万城目淳…星川航空のパイロット。
戸川一平…万城目の助手。
江戸川由利子…毎日新報の記者。

ゲスト
特になし。

あらすじ

朝、東京の満員電車。
由利子もその人の流れに巻き込まれていた…。

ある日、いつものようにドライブに出かけた万城目たち3人。そこで彼らは「1/8計画 第3次募集」と書かれた看板とそこに殺到する人の群れを見る。

興味をそそられた由利子は1人でその会場へ行くことに。そこにいた人たちは「移住」に関する相談をしているらしかった。「1/8計画」とは来る人口爆発に備え、人間を1/8サイズに縮小して、S13地区という特別区域で生活をさせるという計画だった。

役人から「1/8計画」について聞いた由利子は、「非人道的だわ」と断罪するが、流れる人の群れに巻き込まれて、間違ってS13地区の方へと進んでしまう。

光線を浴びて1/8に縮んでしまった由利子が目を覚ますと、そこにはS13地区の区長と民政委員が。彼らから親切に出迎えられる由利子。S13地区では名前はなく、個人は番号で識別される。「電話番号みたいだわ」とぼやく由利子だったが、そこへ突如大きな人間が。由利子にS13地区への無断侵入の疑いがかけられたのだった。

自分だって望んでこんな場所にいるんじゃないと訴えかける由利子だったが、念のため箱に入れられ連行されることに。

由利子は留置所で同部屋になった大きな人間(1/1サイズ)の助けを借りて、留置所を脱出して万城目たちに会いに行こうとする。

なんとかやっとの思いで星川航空にたどり着いた由利子。しかし由利子の目に飛び込んできたのは自分の遺影だった。ショックを隠せない由利子。そこへ万城目たちが戻ってくる。遺影の影に隠れて万城目たちの会話を聞いていた由利子だったが、自分は既に死んだものと扱われている事実に悲しむ。

自分の遺影を見て呆然とする由利子

由利子は自分よりも大きなサイズの電話で毎日新報のデスクに電話をかけるが、幽霊と話している暇はないと一方的に切られてしまう。

もう元の世界に自分の居場所はないんだと悟った由利子はもといたS13地区に戻っていく。

そんな中、S13地区に万城目と一平が出現。まるで巨人のように街を壊さないようにそっと歩いていく万城目と一平。2人は由利子を探しにきたのだった。

万城目と一平がやってきても素直になれない由利子は2人を拒絶。由利子は"巨人"に慌てふためくS13地区の住人の波に巻き込まれて…。

目を覚ますと由利子は病室にいた。
由利子は万城目と一平を見るなり、みんなも小さくなったのねと一安心するのだった。

いや…もちろん万城目たちは縮んでなどいない。由利子は駅で人混みに巻き込まれてそのまま意識を失ってしまっていたのだった。

1/8計画は都内の人混みに巻き込まれて意識を失った由利子の頭の中にしかないようだった…。


荒唐無稽とも言い切れないワケ

1/8計画はいつか現実になる??

なんだ夢オチかい!ってなりそうなこの回ですが、全くもって荒唐無稽な絵空事とも言い切れないところがあります。

まず人間を1/8サイズに縮小してエネルギーを削減しようというところ。今後科学が発展していった未来でそういうことが起こらないとも限りません。

人口増加による食糧難や化石燃料の枯渇など地球規模で様々な問題が起こっている昨今、人間のサイズを1/8にしてそれを解決しようというのはあながちバカな話だとも言い切れない感じがします。

もちろんそれに伴う問題点は多いでしょう。

全世界で同時に人間を1/8にすることはできないわけで、1/8に縮んだ人間とまだ縮んでいない人間との間で少なからず問題が発生することは容易に想像できます。1/1人間と1/8人間の格差が生まれる訳です。

この格差、どっちもどっちな感じがするんですよね。1/8人間は、元のサイズの人間にはどう足掻いても力で勝つことができません。その代わりあらゆるエネルギーは理論上1/8で済んでしまう。元のサイズの人間の価値観や物価で動く社会においてはとても省エネな存在になる訳です。

果たして今後1/8技術が現実のものとなったとして、今環境問題を声高に叫ぶ先進国の運動家たちは我先にと1/8化するでしょうか?個人的にはしないと思います。まず途上国にいる人たちから…となりそうなのがなんともいや感じがしますね。


数字で管理される社会

そしてこの回で出てくる1/8人間の居住スペース、S13地区では、人に名前はありません。代わりに人々は個別に数字が与えられ、その数字を個人の識別に使うのです。

S13地区の区長は自慢げに、名前が被らない、紛らわしいこともないと話します。それはそう。同姓同名というのは紛らわしいものではある。

それでも由利子は自分が数字で識別されることに反発します。私もそんな気がします。数字で管理されるのはなんか味気ない。

でもこれって意外と身近な話になっていると思いませんか?

日本では国の制度としてマイナンバー制度が導入されました。私も持ってます。マイナンバーは国民一人一人に数字を対応させ、それで色々法的な手続きとかがしやすくなるとか云々。保険証と紐付けるなんて話もチラホラ。

S13地区での数字による管理は、マイナンバー制度に通ずるところがありますよね。もちろん今の日本では名前を捨ててマイナンバーでなんでも管理しましょうというほど急進的にことは進んでいません。

しかしそんなことも今や技術的には可能になってきたってことなんでしょう。今はまだマイナンバーがそれほど幅を利かしている感じはしませんが、この力が大きくなってきたとき、私は否が応でもS13地区のことを思い出すでしょう。

他人事ではなくなってきたのだと。

ウルトラQは1966年の放送です。
今から大体60年ほど前。
恐らくウルトラQの中で描かれる空想世界を、当時の視聴者はそこまでのリアリティを、切迫感をもって受け止めていなかったのではないかと思います。それもそのはずで、そんなことは起こり得ないという感覚があったはずです。

しかし、現代の文脈の中で置かれてみると「1/8計画」も「S13地区」も、他人事とは思えないリアリティをもって迫ってくる感覚があります。

CRISPRの登場は遺伝子操作をとても簡便にしましたし、コンピュータの発達は膨大なデータを管理することを可能にします。人間を1/8にすることだってできてしまうかもしれない…。

いや、そんなバカなこと起きないよ。

なんて笑い飛ばすことができなくなってしまった時代に私たちは生きている。
そんなことを考えさせられる回でした。

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