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問答者A+1 大学生(感染)|1813文字

休学している僕は、人生の岐路に立たされていた。周囲の友人たちは次々と就職活動を始め、社会に向けたステップを踏んでいた。SNSを見れば、みんなが輝かしい未来に向けて動いているように見え、僕はそこに取り残されているような感覚に襲われた。焦りや不安が胸の中に渦巻く中、僕は自分の選択に自信が持てなくなっていた。

ある日、偶然手に取ったエーリッヒ・フロムの本が僕の心に深く響いた。「人生の意味は、自分の力を発揮し、自分自身のために生きることにある」と書かれていた。これまでの僕は、他人の期待に応えることが生きる意味だと信じていた。親の期待、友人の目線、社会の「成功」とされる基準に縛られ、それに向かって努力することで自分の価値を証明しようとしていた。でも、そんな生き方が本当に自分自身を充実させるものだろうか?という問いが、フロムの言葉を通して胸に突き刺さった。

休学を決断した理由は、自分を見つめ直したいという気持ちが大きかった。けれど、休んでいる間にも周りはどんどん進んでいく。焦りは募るばかりで、自分は何をしているんだろうという疑念に取り憑かれる日々だった。そんな時に、もう一人の哲学者、ニーチェの思想が僕の視野をさらに広げてくれた。

ニーチェは「力への意志」という概念を持ち出し、すべての生命は自己の力を拡張し、成長しようとする意志を持っていると説く。この力の意志は、外からの評価や他人の期待に基づくものではなく、内から湧き出る自己の欲求、つまり自己の可能性を追求する意志にある。フロムが言う「生産的に生きる」という考え方とニーチェの「自己超越」の思想は、僕にとっては全く新しい視点を提供してくれた。僕のこれまでの焦りや不安は、外部の基準に従っていたからこそ生まれたものだった。それは他者の期待に応えることを前提にしていて、自分の内面を無視していた結果だった。

僕は自分の人生を振り返ることにした。親からの期待、友人からのプレッシャー、社会が示す「こうあるべき」というモデルに無理やり自分を当てはめようとしていた。大学生活も、どこか義務感で過ごしていた節がある。でも、フロムとニーチェの言葉をきっかけに、今自分が感じている孤独や不安も、成長するために必要なプロセスだと捉え直すことができた。孤独は自己と向き合うための時間であり、外からの評価ではなく、自分の内なる力に目を向けるための大切な瞬間なのだ。

ある日、友人のT氏と話す機会があった。彼もまた休学中で、何度かアルバイトをしながら、自分が今後どう動くべきかを迷っていた。僕たちは自分たちが感じている不安について、率直に話し合った。おーさわもまた、就職や将来について悩みながら、自分が本当にやりたいことを見つけられずにいた。僕はフロムとニーチェの思想を共有し、彼に伝えた。「他人の期待に縛られるのではなく、自分の力を信じて、自分が本当にやりたいことを見つけてみよう」と。

その対話の中で、T氏も少しずつ自分の内面と向き合い始めた。自分が何を本当に望んでいるのか、そのためにどのように動くべきかを考えるようになった。彼は一歩踏み出すために、今までためらっていた趣味や興味をもう一度追いかけることを決心した。それは大きなことではなく、小さな一歩だったけれど、彼にとっては重要な一歩だった。

そして僕自身もまた、これからの自分の道を決めた。休学している時間は無駄ではなく、自己と向き合うための大切な機会だった。僕は自分の内なる声に従って、哲学や文化人類学に没頭し、また新しいイベントを企画することにエネルギーを注ぐことにした。これは、他人の期待に応えるためではなく、純粋に自分の力を発揮するための行動だ。

結論として、僕が学んだのは、自己と向き合うことの重要性だ。
外部の評価や期待に囚われず、自分自身の内側から湧き上がる力に従って生きることで、人は本当に生産的になれる。現代の学生に伝えたいのは、孤独や不安を恐れず、自分の内面に向き合い、自分が本当に何をしたいのかを問い続けてほしいということだ。そこから生まれる力こそが、あなた自身を超えて成長するための鍵になるだろう。

だから、みんなも今ある不安や迷いを大切にしながら、内なる声に耳を傾けてみてほしい。そして、その声が導く方向に向かって、勇気を持って一歩を踏み出してほしい。それが、あなた自身の力を発揮し、自己を超越するための第一歩になるはずだ。


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