ストレスと独り身とホテル暮らしとー【第8回・山梨県甲府《前編》】
2022年1月8日。最初の現場は自宅。ど早朝の3時半。目覚ましより早く起きた私は心の中で唸った。
Go To トラベル再延期決定ッ!!
ここはもう憂さ晴らしに行くしかない。じゃらんで最近運良く手に入った高額値引きクーポンを利用し、地方の愛人を手配する。
で、やってきたのはかなり久し振りの新宿駅(京王線)。地方民からはラストダンジョンとまで呼ばれる程入り組んだ迷宮だ。
新宿から甲府まで特急あずさに乗れば約90分、¥3890。が、時間に余裕がある私は約3時間30分の格安ルート、自宅の最寄り駅から甲府まで合計¥2200で旅を楽しむ。
次に降りたのが高尾駅。新宿駅から約1時間。ホームから見える謎の宗教的建立物。そして、石造の巨大な天狗の顔面。なんたるケツ顎。
高尾駅出発後、民家が点在する山中を走り、綺麗な小川を見下ろし、濃い闇が長く続くトンネルを抜け、バカみたいに広大な葡萄畑を目の当たりにし……約90分。遂に到着。丁度良いタイミングであずさが入って来たので、その御尊顔を拝す。
リニア新幹線が開通すれば、東京から甲府までわずか25分という驚愕の御手軽さ。2027年を予定しているが、最近起きた事故でその予定は絶望的だ。
甲府駅は、夏の時期だと駅構内で巨峰やマスカットの露店が出てたりする。甲府駅と一体化した商業施設『セレオ甲府』。中はミニデパートといった感じ。ベーカリー・生鮮・ファッション・雑貨・書籍・ドラッグ・土産等の店舗が有り、5階は私の大好きなレストラン街になっている。
駅前には、勧誘中の自衛隊員が2,3人うろついてたり、托鉢僧がチリンチリンと鐘を鳴らしてたり。
最近オープンした『ヨドバシカメラ甲府』。レストラン街は併設されていないので今の私に用は無い。
甲府駅から徒歩1分という好立地。
本日の地方の愛人『城のホテル甲府』である💘
東京都内と異なり、周囲に同じ高さの高層ビルがほとんど無い為、その姿は非常に目立つ。青空に良く映える。
まずはフロントに荷物を預ける。
あからさまに身が軽くなった私は空腹の勢いに任せ、先程の『セレオ甲府』の5階・レストラン街へ。食べたい物はこの旅の出発前から決まっていた。
こちらー 蕎麦とほうとうの店『郷土料理 信玄』である。おそらくこの店の一番人気である信玄ほうとう¥1320を注文。
ほっとする味噌の良い香り。モッチモチのきしめんは喉越し最高。具は南瓜、人参、白菜、里芋、山菜、豚肉がタップリと。鍋底から煮干しのような小魚が抄え、しっかり出汁もとってある事が分かる。ああ……旨ぁ~い。
昼食後、駅から見えてた気になる場所へ。甲府の街の観光シンボルとも言える『甲府城』。現状、天守閣は存在せず、石垣や曲輪や門が残るのみ。『舞鶴城公園』として一般に開放されている。
敷地内の寺院のような建物で剣道の試合が行われていた。土曜だが観光客はあまりおらず、ハイキング仕様の高齢者がわずかにうろついてたり、妙なテンションの男子学生グループが談笑してるくらいだ。
高台から眺める甲府の街。街の背景に聳え立つ南アルプスがなんとも壮大で美しい。山頂の所々が雪化粧され、まるで……粉砂糖をまぶされているかのよう。
駅の北口側に見える場違いな貯蔵用球状ガスタンク。そして、オフィスフロアとマンションフロアの複合ビルで、山梨県で一番高い高層建築物『セインツ.25』の雄姿が。
舞鶴陸橋は常に多くの乗用車が行き来しており、陸橋の歩道から中央本線の往来がよく見える。
陸橋を渡った先で小規模に展開した『甲州夢小路』。昔の甲府城下を再現したレトロな雰囲気で、山梨のグルメ・特産品・ワイン・宝石等を扱った店舗が並ぶ。
観光客はまばら。コロナの影響は当然地方にも波及しており、土曜なのに閉店している店もあった。
物見やぐらのような塔は『甲府時の鐘』と呼ばれ、看板の説明によるとボタン一つで鐘を鳴らせるとあった。観光の家族連れが押すのを近くから見ていたのだが、塔の上のほうから「ガコンッ」と何かが開くような音が聞こえた後……「ガコンッ」とまた音がして閉まった。……鳴らねぇし。
駅北口を出てすぐの所に建つレトロ西洋風建造物。最初は高級なコーヒーショップか何かと思ったが、『藤村記念館』という明治8年に建てられた学校校舎だった。校舎内は明治期の教室の様子が再現されてるらしいが、工事中で外から眺めただけ。
で、記念館のすぐ傍には信虎公像。
駅構内に戻る。山梨県の名産品を集めたブース。お土産として是非とも各店で買ってくれたまえという意気込みを感じる。
たまたまやってた催し。甲府の礎を築いた武田家が開府して約500年を記念したブース。甲府一帯の名所や温泉地の紹介。
国内有数の宝飾産地である山梨県の宝石達。私は宝石そのものにはあまり関心は無いが、換金したらいくらになる? → 大金が発生する → 欲しい★ という考えには至る。
佇む鎧武者。私独自の印象として、七五三で無理矢理お着換えさせられた子供みたいだ。
『武田二十四将』……中二病の症状が悪化する属性。そこに美少女要素をブチ込み、あからさまな若者ウケを狙ったこの空気。地元の県民はどう御考えだろうか。
因みに……この催事場のすぐ傍に、年季の入ったホームレスが2名程住み着いていた。大勢の一般人が利用する駅構内で淀む貧富の格差である。
駅の南口を出てすぐで待ち受ける、皆さん御存知の武田の信ちゃん像。そして、更に有名(私の中ではな)な駅前宿泊の『東横イン』。山梨名物『鮑の煮貝』。
海に面していない山梨で鮑だと!? 最初は誰でもそう思う。江戸時代、伊豆沖で獲れた新鮮な鮑を甲州に送るため、醤油で煮びたしに加工して運んだのが始まりと言われる。土産物屋などで一般に目にするのは、1個¥2000~¥2200の鮑の煮貝。観光客よ、その場のテンションで衝動買いする前に、商品の包装の裏側を見てくれ。「チリ産」と記されていないか? 念のために言っておくが、日本国内にチリという県は無い。要するに、海外産が多いという事だ。国産物は確実に¥3000を超えるので注意しよう。
街のメインストリートである平和通りを歩いていると見えてくる、博物館のような外見の山梨県庁。繁華街がひしめき合うエリアに向かう途中、献血してくださいよ~的な集団に遭遇。ゆるキャラのデザインが……うん、しょぼい。
駅から徒歩10分くらいのアーケード商店街なのに、土曜の真昼間なのに、この閑散具合。コロナ不況の犠牲なのか、それ以前からのシャッター街化なのか。
『岡島百貨店』。漂う昭和臭と重厚な貫禄。一応、最上階に小規模なレストラン街が有る。その様子を一通り見て私見を述べさせてもらうが……百貨店の従業員しか利用してないような気が(ボソッ)。
駅から距離が離れる程、商店街の静寂さも強烈になっていく。店舗の数こそ多いが、営業時間外なのか潰れているのか区別が難しい。で、唐突に消防車とパトカーと軍用車両が並び、公僕達が近隣住民と触れ合いイベントを実施していた。よっぽど暇なのだろうか。
延々と続くシャッター街。通行人が少な過ぎて、常に一番奥まで見通せてしまう。あちこちに垣間見える昭和のビルデザイン。ある意味重要文化財だ。
再度言うが、県で一番の繁華街の土曜日真昼間である。東京都に隣接した県なのに、人流とは無縁な光景。日が落ちれば多少賑わうとは思うが……。
紳士諸君お待ちかね、風俗横丁をちょっぴり謁見。2軒並んだソープランドの前にはスーツ姿のオッサンが立ち、道行く人に小声で客引きしていた。まともに声掛けしてしまうと摘発されるので大変。それにしても『スチワーデス』とは……店のプレイスタイルよりこの出落ち感が気になる。
さて、今宵はここまで。
後半へ続く(キートン山田風の口調で)。
補足ー
アーケードの片隅でポツンと佇んでいた女性の全裸像。この真冬に強制露出とは何て惨たらしい仕打ち。タイトルは『暖流』……このアマ、まさか自ら!?