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バイオリンデビュー 遅いのはあり?なし?

 60歳前後から始めたバイオリンはどこまでいけるのか?遅く始めてもダメなのか?という問いに、もうすぐ還暦の私がどう受け止めるのかというメモです。

遅く始めるとたしかに…

 実は昨日。ヨガスタジオで、こんな話を聞いた。
「バイオリンはやっぱり遅く始めるとモノにならないよね」
 え?何?そうなん?ダンボの耳状態になった私。
 その人は、アマオケで長年演奏経験があり、今年還暦という女性。バイオリン歴は高校生から、とのことだから、ほぼ半世紀!本番が年に4〜5回はある、とのこと。ベテランちゅうのベテランだ。
 「ある演奏会にエキストラで出た。横で、74歳の人がいて…。つまり、腕前はイマイチというより、かなり・・・って感じ。47歳からバイオリンをやっているって人の演奏だったけれど、バイオリンは遅く始めるとダメだなあって思った」という話。約30年近くやっているのに、かあ。そうなんだ…確かにな。

年齢のせいなのか?

 私が実際見た、古楽のコンソートの練習に参加したり、シニア世代ばかりのアマオケの応援に行ったけれど、確かに、正直、痛々しい演奏。そうでない人もいるだろう。全てがそうだとは思わない。けれど、私の世界が狭いせいだろう、高齢者の演奏は、本人は楽しくて仕方がないだろうけれど、聴衆としては厳しい。これは肝に命じておきたい。しかし、それは年齢のせい?

 60代の知人で、円熟の演奏家もたくさん知っている。それはもう感動ものだ。今でも新鮮に記憶にこびりついているが、ロストロ・ポービッチは、もう演奏中ずっとランナーズハイみたいだった。貧乏学生だった私はなけなしのお金をはたいてチケットを買い、深夜フェリーに乗って大阪まで聞きに行ったが、それはもう大きな衝撃だった。なんて言えばいいかわからなくて、当時の先生から「どうだった?」と聞かれて、適当な言葉が見つからず「気持ちよさそうに弾いていた」と言ったら嘲笑されたが、まさにその通りだった。

 そのほかにも、円熟の演奏家は数えればたくさんいて、歳をとる円熟さを手に入れるのは楽しみになっているが、その違いはなんだろう?やはり、スタートが遅いからなのか?練習量なのか?センスなのか?好きな度合い?情熱?指導の方法?目標の持ち方?

楽器演奏の目標というそもそもの話

 楽器は、楽しい。人それぞれかもしれないけれど、私は見ているだけでは満足できず、つい、やってみたくなる。きっと、そういう人も多いでしょう。そこでわくわくしながら実際に楽器を手に取る。購入する人もいたりして。作ってもらいたいって人もいて。その気持ち、よくわかるな。とにかく、弾けたら楽しいだろうなって感じ。これがきっかけ。
 で、楽器を手に取るわけだけど、その楽器の種類によってその後の未来が大きく変わる。大袈裟でしょう?けれど、結構これが挫折を生むか、幸福を実感するか、分かれ道にもなる。それに、私は、弦楽器だけはいくつかやってきたけれど、金管はよくわからない。なので、ここでは弦楽器だけの話として書いていこうと思う。金管にも共通することがあればいいな。

楽器演奏の難易度

 楽器は、簡単なものから超難易度が高いものまで、本当にいろいろある。これは、演奏を聞いていればわかる超絶技巧が求められるもあれば、実際に楽器に触れて、やってみないとわからないものも。あと、本人の器用さとか経験もあるでしょうしい、できるようになりたい!と言う熱意もある。習得は、全て掛け算だ。それをいうと収拾がつかなくなるのでやめておくけれど、確かに、バイオリンは難しい。弦楽器の中でも最上級レベルの難易度だと私は思っている。構え方一つとってみても、肩はこるし、右手は腱鞘炎になるし、頭痛もするし。弓の持ち方はまだまだだし、肩に楽器を乗せるのも落ち着かない。左手の微妙な動きも全然ダメ。力づくでフレットを握ろうとするのはギターの癖が抜けず、三味線の時も「力を抜いて」とよく言われて治せずにいる。だから余計に細かい動きができない。弓なんて酷いものだ。いつしか駒を超えてしまったり、ロングトーンでは音色が木材修理工場のような雑音に変わってしまったり、弓が足りなくてこんなところで返すの?って思うようなボウイング。ありえない。これじゃ確かにオケは無理だ。

 演奏技術の難易度を解決するとしたら、前にも書いた「ヴィオラ・ダ・ガンバ」が弾きやすい。バイオリンのような難しい譜面は、まず、ない(多分)。ビブラートもない(構造上、ない)。細かいスキルの指示はあっても、超絶技巧を求められる主役的な位置付けではない。フレットがあって音程がほぼ安定している。しかも、何より通奏低音は楽しい。まして、低音は心にいい響きだし、これは最高だ。だから、ガンバがやりたい。欲しい。どこかに弾いていないガンバ、譲ってもらえないだろうか?

 でも、そういう判断基準で選んでいいの?とも自問自答。楽さ、難しさ、可能性は大事だ。年齢的に、これからどんどん歳をとっていくとできることもだんだんできなくなっていく。実際、右手が腱鞘炎。一昨年は左手が腱鞘炎だった。こうやって不調があると、途端に楽器が苦痛にもなる。はぁ・・・困った。歳をとることの一番困るのは、こうした「できることができなくなっていくこと」で、それに合わせてどれだけ妥協ができるか、といった悩みだ。

その楽器でどうしたいか

 冒頭のヨガで聞いた話にとても興味があったので、お友達になった。聞けば私とほぼ同じ年齢。仕事の業界も近い。頑張り屋さんであることや、歩く速さもあっている。いいお友達ができて嬉しい。その彼女に私の話を少ししたら「若い時に少しでも楽器の経験があるなら、大丈夫じゃない?」って言ってくれた。「譜面も読めるでしょ」そう、譜面は大丈夫。固定ドだけど。ヨガスタジオで、お正月の福袋があったので2人で同じものを買って帰った。
 その後、その楽器でどんな楽しさを味わいたいか、これがいちばんの問いになった。結局、私は相変わらずバイオリンの練習をしている。ハープも弾いている。たまにだけど、津軽三味線も弾いている。こう3つの楽器をやっているからなかなか上手くならない。これに、さらに、ガンバを始めるだなんていうと、呆れる人もいるでしょうね。けれど、楽器が好き。演奏できるなら演奏していたい。さらに、できるならストリートもライブもやりたい。講演しながら演奏もしたい。かしこまったコンサートもいいけれど、ライブ感がある機会の方が伝わりやすいし、反応がダイレクトに返ってくるので、そっちの方が楽しい。

 好きなことってなんだろう?と考えることや、これからしたいことを考えるのは、ある意味、それ自体が幸せなことだ。私の周りでは、がんの治療をしている人や、命を落としてしまった人もここんとこ増えているし、そういう有名人、著名人もいつもニュースで流れてきている。経済評論家の山崎元さんが、「希望と予測を分けて考えることが大事」と言っていた。食道がんで再発し、あとどのくらい?の問いに医者が答えてもらえないほどの状態になった彼が、未来に対してそう言ったのだ。

 バイオリンで超絶技巧を習得できる可能性は高くない:予測
 バイオリンで半径数メートルの人を楽しませたい:希望

予測を踏まえてどんな楽しみかた、楽器との付き合いをすれば良いかを考えることは、長年、人間をやってきた世代にならわかるだろう。体が動く間は、演奏を楽しみたい。糸を弾いて、引っ掻いて、木の空間から流れて来るnoteを感じていたいな。


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