
GIF付き源氏物語 須磨⑧春 旅立ち
🌷紫上との別れ
出発の当日は、紫夫人とのんびり語り合って過ごした。
(📖三月二十日あまりのほどになむ 都を離れたまひける)
旅立ちの通例で、朝暗いうちに出て行く。
旅の装束の狩衣なども、目立たぬようにひどく地味にしている。
「月が出て来たよ」「もう少し出て来て見送ってよ」「あれもこれも話しておけばよかったと思い出すことが沢山あるだろうなあ」「たまに一日二日離れているだけでも何だか気の晴れない思いがしていたぐらいなのだから」

そんなことを言いながら御簾を巻き上げて端近に誘う。
紫上は涙を流して沈み込んでいたが、辛い気持ちを抑えて、別れにいざり出て来る。
有明月の光の中に大層美しい。

月影に いみじう をかしげにて ゐたまへり ≫
源氏は、
『自分にもしものことがあったら、この人はこの世をどうさまよっていくのだろう…』
と気掛かりでならず悲しくなるが、そんなことを言えばもっと悲しませることになるだろうと思って、
🧑🏻🦱✨➡️生ける世の別れを知らで 契りつつ 命を 人に 限りけるかな
はかなし
「生き別れということがあるなどと思いもせずに、命のある限り一緒にいられるものだと思っていた」「儚いものだね」
などと、殊更に、軽い口調で言って見せる。
紫上が、
⬅️👧🏻✨惜しからぬ命に代へて 目の前の別れを しばしとどめてしがな
「惜しくもない私の命に代えて、このお別れを、ほんの少しでも引き留めたい」
そんな風に返すのも痛々しいばかりである。
🧑🏻🦱✨『ああ、そんな風に思ってくれているのか…』
と思えば、源氏は尚更別れ難く見捨て難く辛くなるが、
夜が明けてしまっては見苦しいので、急いで出るしかなかった。

眞斗通つぐ美