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86なんちゃって図像学(3) 紅葉賀巻⑦ 喪明け、私には婿君がいる
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・ 尼君の喪明け
北山からずっと若紫について来ている少納言の乳母は、
「思いがけなく何という幸運が巡ってきたものかしら」「故尼君が姫君の行末を案じられて熱心に勤行していらした霊験なのかしら」と思います。
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これも 故尼上の この御ことを思して 御行ひにも 祈りきこえたまひし 仏の御しるしにや
「でも、左大臣家の奥様は歴としていらっしゃるし、殿様はここかしこに沢山の愛人をお持ちだし」
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まことに 大人びたまはむほどは むつかしきこともや
「まだお小さいからこんな風で済んでいるけれど、姫君がもっと成長なさったら、面倒なことになって、ご苦労なさるのではないかしら」
とも思います。
でも、ここまでの特別扱いをしてくださる愛情がおありなのだから、心強いことだとは思っています。
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母方の祖母の服喪は三か月と定められています。
尼君は9月20日に亡くなったので、12月の末には喪が明けました。
喪服を脱がせて可愛い衣装に着替えさせます。
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親のない子ですから、派手な色ではなくて、紅や紫や山吹の地紋だけの小袿などを着ています。
最新流行の衣装がよく似合って、とても可愛いくなりました。
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📌
1月7日の白馬の節会の後、末摘花を訪問して、その後、二条院に戻って若紫と一緒にお雛遊びをしたり鼻を紅く塗って遊んだりする場面が『末摘花』の巻の最後にありました。
その時に若紫は、喪服を脱いで、無紋の桜の細長 を着ていました。
(📖 無紋の桜の細長 なよらかに着なして 何心もなくてものしたまふさま いみじうらうたし)
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・ 二条院の新年
元旦です。
源氏は、宮中の新年の朝拝の儀式に参列する前に、夫らしく西の対に顔を出します。
「年がひとつ改まって、あなたもひとつ大人らしくなりましたか?」と言って微笑みます。
素晴らしく魅力的です。
姫君は、新年の朝から、早くもお人形遊びに夢中になって没頭しています。
三尺の厨子にお道具を並べて、源氏が小さな御殿をいくつも誂えて与えたのを部屋いっぱいに広げて遊んでいます。
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🌷🌷🌷『二条院の新年』の場の目印の札を並べてみた ▼
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📌Cf.
『若紫の巻』に、若紫をさらって来た時に、寂しがらせないようにと源氏が一緒に雛遊びをする場面があります。
御殿に源氏と若紫がいて雛人形があるのは同じですが、
源氏が、新年の参内の束帯姿でいるのと、くつろいだ直衣でいるのとが区別点かと思います。
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姫君は、「追儺をやろうと言って、犬君がこれを壊してしまったから、直しているの」と言います。
姫君にとっては大事件なのです。
「犬君は本当にうっかりさんだね」
「すぐに治させるから、泣いてはいけませんよ」「元旦に縁起の悪いことを言ったりしたりしてはいけないからね」
と言い残して、源氏は出掛けます。
殿様の新年の正装が惚れ惚れするほどに御立派なので、女房たちは皆、端に出て見送ります。
姫君は幼いので、膝行でなく、立って端まで出て見送ります。
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姫君も 立ち出でて 見たてまつりたまひて
お人形の中の源氏に見立てたのを内裏に参らせたりします。
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・ 私には婿君がいる
少納言は、
「今年からはもう少し大人らしくなさいませ」
「10歳を過ぎた方は、もうお人形遊びなどなさるものではありません」
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かく 御夫など まうけたてまつりたまひては
あるべかしう しめやかにてこそ 見えたてまつらせたまはめ
「もうお婿様がいらっしゃるのですから、奥様らしくおしとやかになさいませ」
「御髪を梳くのまで嫌がられているようではいけませんわ」
などと、言います。
少納言は、お人形遊びにばかり熱心なのは恥ずかしいことだと自覚させようとして言ったのですが、
姫君は、
『そうなのね』『私にはもう夫がいるのね』
『女房たちの夫は皆醜いけれど、私はこんなに美しい若い夫を持っているのね』
というようなことを初めて思いました。
ひとつ年を取ったしるしなのかもしれません。
幼い様子が、何かにつけてこぼれ顕れるので、御殿の人達もいぶかしむのですが、
まさかここまで世間離れした名ばかりの夫婦だなどとは、誰も思っていません。
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眞斗通つぐ美
📌 まとめ
・ 若紫の二条院初めての新年
https://x.com/Tokonatsu54/status/1711309950541246892?s=20