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賢木⑧ 反逆としての恋 朧月夜との逢瀬
🌷母后と右大臣の世の中
朱雀帝は院の御遺言通りに、源氏を大切にお思いだったが、
まだお若くお優しい方だったので、弘徽殿の母后や外祖父の右大臣の御言動を退けることがおできにならず、世の政のことも思うに任せられなかった。
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🌷朧月夜との仲
入内されて御不自由な御身とはなったが、朧月夜の尚侍 は源氏と秘かに文を通じていて、長い途絶えがあるのでもなかった。
帝が五壇の御修法をおさせになる。
国家の一大事がある時の密教の御祈祷である。
(📌国家の一大事とは …源氏を重用せよとの桐壺院の御遺言に背いていることにより、院の亡霊が起こされる障り、とも)
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御修法の為に帝が御謹慎遊ばす隙を狙って、源氏と朧月夜は逢引する。
(📌帝の主催遊ばす国家安泰を祈る祈りのさ中に帝の後宮との逢引とは、源氏は、ノンシャランというよりは、朱雀朝に対して積極的に叛逆的なのか?)
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帝は殿上におわしながら、地上で礼拝あそばすことになる ≫
源氏20歳、朧月夜16歳の年の桜花宴の夜に初めて契った、あの弘徽殿の細殿の局に、
事情を知る朧月夜の女房の中納言の君が、人目を忍んで引き入れる。
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かの 昔おぼえたる細殿の局に 中納言の君 紛らはして入れたてまつる
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御修法で清涼殿への人の出入りが多いので、簀子が狭くて端近になる細殿の局での逢瀬は空恐ろしい。
(📌危険を楽しむ源氏の悪趣味?)
朝夕に見ている人でも源氏の美しさには見飽きないのに、まして待ちかねたたまさかの逢瀬である朧月夜にとってはどんなに嬉しかろう。
朧月夜は朧月夜で二十歳を迎えて美しい盛りである。
威厳には少し欠けているが、華やかに若く美しく、男を惹き付けてやまない魅力に溢れている。
そろそろ夜も明けて行こうかという時に、すぐそこに、宿直申し(とのゐまうし)を呼ばわる声が聞こえる。
時間的には 右近衛府 の者である。
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(※亥の刻から子の刻までが左近衛府の、丑の刻から卯の刻までが右近衛府の役人の宿直奏しと決められていた)
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源氏は今は 右近衛大将(うこんえのだいしょう) であるが、
「自分以外にも、誰か近衛府の者がこの細殿の局の女房に忍んで来ているのを知って、同僚がわざとらしく意地悪しているのだろう」などと思う。
面白くはあるが、面倒なことである。
あちこち歩いて「寅ひとつ(午前3時)」と言っている。
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もう別れなくてはならない。
朧月夜が詠む様が、儚げでいじらしい。
〽心から かたがた袖を濡らすかな 明くと(飽くと)教ふる声につけても
辛くて泣いています。別れの朝が来て、あなたが私に飽きたと教える声が悲しくて。
〽嘆きつつ わが世は かくて過ぐせとや 胸の開く(あく)べき時ぞともなく
私は満たされぬまま心の晴れぬまま嘆いて生きていかねばならないのか。辛いなあ。
源氏は応えて、慌ただしく出て行く。
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🌷承香殿女御の兄君 髭黒少将に見られる
まだ朝に遠い暁の月夜に、言いようもなく霧がかかる中、身をやつしてひっそりと出て行くが、源氏は際立って美しくて、他の男と見紛いようもない。
藤壺の女房の誰かに忍んで出てきた藤少将が、立蔀の影に佇んでいたのに気付かないのは運が悪かった。
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藤少将は、後に髭黒大将と呼ばれる、承香殿の女御の兄君である。
いずれこの人の辺りから非難の声は起こるだろう。
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📗Cf. 後に 麗景殿女御の弟君 頭の弁に見られる
後に、朱雀帝に、「藤壺中宮に御挨拶に伺います」とお断りした上で向かう源氏を、右大臣家の麗景殿女御の元に伺う途上の頭の弁が見て、
『史記』の、燕国の太子が謀反を企てた故事を語る一節を、あてつけがましくゆっくりと朗誦するが、文句を言う場面でもないので、煩わしく思ったが知らぬふりで通り過ぎる、という場面もある。
その一節 …白虹日を貫けり 太子畏ぢたり
※白い虹には兵乱の兆しとの故事がある
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🌷朧月夜を思うにつけ 隙のない藤壺中宮
こんな軽々しい恋をするにつけても、隙をお見せにならない藤壺中宮の高貴なお心を御立派だと思う一方で、
自分の勝手な恋心からすれば、つれなさを恨めしく思うことも多い。
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この部分の周辺に関する動画です。
源氏のサディスティック?な行動に関する言及は動画の中にあります。
眞斗通つぐ美