源氏物語 夕顔の巻 概略7(源氏の不安)
・ 源氏の不安
女への惑溺につれ、源氏の不安も募っていきます。
「この女は頭中将の常夏の女なのだろうか」
「その女のように突然姿を消してしまうのではないか」
「素性を明かされないままそうなっては、私も探しようがない」
「今の家も仮の隠れ家のようだ」「あちこち根無し草のように彷徨っていく暮らしの女なのだろうか」
「楽しい遊戯だったと笑って忘れられるような女ならいいが、この女に限ってはそんなことはとても無理だ」
宮中の宿直などでどうしても逢えない夜が続くと苦しくなります。
「二条院にさらってしまえば、逃げられる心配もなくなる !!!」「他の男にさらわれる心配もなくなる !!!」「素性は伏せて二条院に囲ってしまおう !!!」
「それで悪評が立とうと、それはあの女に溺れてしまった私の宿世なのだ」
「それにしても、我が心ながらここまで女に惑ったことはない」「どんな前世からの因縁があったというのか」
・ 外に誘う
女を連れ出そうと、「ねえ、もっと静かなところに行ってゆっくり話そうよ」と仕掛けます。
女は「お名前もお顔さえ知らないのに恐ろしくて無理よ」と子供っぽく言うので、
源氏が「それはそうだね」と笑ってから、
「あなたも素性を明かしてくれないのだからどっちもどっちだよ」「どちらが狐やら」
「そのまま化かされていらっしゃいな」と優し気に言うと、女もその気になります。
「ああ、なんと素直な女なのだろう」「ああ、ますます愛しい」「ああ、なんと可愛い女なのだ」と、源氏の狂おしさは更に募ります。
掴みどころのない不思議な柔らかさに、頭中将の常夏の女の話を思い出さずにいられませんが、
なぜか素性を隠している理由を聞き糺すことに躊躇してしまいます。
機嫌を損ねて急に姿を消すような人には見えないのですが、
「役儀に追われて間遠になるうちに他の男に心を移して消えてしまうこともあるかもしれない」「ああ、そうなれば私はどんなに苦しむことか」と次々に思われてきて、
あまりの苦しさから、「私もここまで一途でいるのがよろしくないのだから他の女に少し気を紛らわした方がいいのかもしれない」と思ったりします。
Cf.『夕顔の巻』源氏の不安
眞斗通つぐ美
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