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源氏物語 夕顔の巻 概略13(枕辺の女)


・ 夢うつつに

夜も更けて少しとろとろと眠りかけた頃、とても美しい女が枕辺に座って、
「私がこんなにお慕いしているのに、こんな平凡な女を連れてきて御寵愛を見せびらかすなんて」「ああ、憎い憎い」
と言いながら、隣に寝ている夕顔を掻き起こそうとします。

・ 暗闇に目を覚ます

魔物に襲われたような総毛立つ苦しさで目が覚めると、灯が消えていて室内は真っ暗です。
気味が悪くて、魔除けの光として太刀を抜いてから右近を呼びます。

右近も同じ夢を見たのか、怯えた様子で這い入ってきました。

「渡殿に宿直している者等に、紙燭を持って来るように命じなさい」と言うと、「こんな真っ暗では恐ろしくてとても参れません」と怯えています。
「子供みたいなことを言うね」と笑って、人を呼ぼうと手を叩くと、木霊(こだま)が返ってたいそう気味が悪いばかりで、誰も参上してきません。

・ 瀕死の夕顔

夕顔はひどく震え怯えて混乱した気配で、汗をびっしょりかいて、闇の中で抱き寄せてみても意識も朦朧としているようです。

「元々怖がりな方ですから、どんなに怯えていらっしゃることか」と右近が震える声で言います。

「繊細な儚げな人で、昼間も空ばかり見ていた。かわいそうなことをした」と悔いながら、
「私が皆を起こして来よう」「手を叩いては木霊がうるさいばかりだ」
「暫くここでこの人をしっかり見ていてくれ」と右近を側近くに呼びます。

・ 渡殿

月の光を求めて西の方の妻戸を開けて出てみますが、渡殿の灯も消えて、風が少し吹いています。
僅かな侍者が皆寝込んでいます。
宿直にいたのは、管理人の息子と、夕顔の微行にいつも従わせる侍童と随身だけです。

「紙燭をつけて持って参れ」「随身には、弦打ちをして魔除けの声を絶やすなと命じよ」
「このような人気のないところで油断して眠り込むとは何事だ」
叱責して指示します。
惟光は御用もないようなので暁にお迎えに参上すると言って出て行ったようです。

管理人の息子は滝口だったので、弓弦を手慣れて打ち鳴らし、「火の用心」「火の用心」と言いながら親の詰所の方に向かいました。

源氏は内裏の様子を思います。
「もう宿直の殿上人の名対面は過ぎたろう。今頃は滝口の宿直奏しの頃か」などと思います。

・ 再び夕顔のところに

灯りのないまま戻って様子を探ると、夕顔は出た時と同じ様子で寝たままで、右近は側にうつ伏しています。

「これはどうしたことか」「この人をよく看ているようにと命じたのに、何という怖がりようだ」「荒れた所にはよく狐などが出て人を脅かすものだが、私がいるからにはそんなことはさせるものか」と言って右近を引き起こします。
「気分が悪くて起きていられないのです」「あの、夕顔さまはどんなに怖がっておいででしょう」
「そうだ、どうなっているのだ」と顔を近付けてみると、女は息もしていません。
動かしてもぐったりして正体もない様子なので、
「ひどく幼い無防備な人だったから魔性のものに魅入られてしまったのか」と思うばかりで、為す術もありません。

・ 灯りに浮かび上がる女

管理人の息子が紙燭を持ってきました。
「こんな時だ、構わぬ」と近くに呼び受け取って、几帳の中に紙燭をかざして見ると、ちょうど夕顔の枕辺に先ほどの悪夢の女が見えて、幻のようにふいと消え失せました。

📌 御息所ではない

先程源氏は、御息所の心配をしながら、もう少し夕顔のように肩の張らない人であってくれたらいいのにと思っていました。
でも、悪夢の中でも枕辺から消え去った時にも、もののけが御息所に似ているという描写はありませんから、御息所がそれを恨んで出て来たということではなさそうです。
夕顔を六条御息所が取り殺したというのは濡れ衣のようです。

Cf.『夕顔の巻』枕辺の女

眞斗通つぐ美

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