見出し画像

源氏物語 夕顔の巻 概略4(六条から霧の朝帰り)


・ 六条御息所

源氏の秋の物思いは藤壺宮への思慕で満ちていて、左大臣邸にも途絶えがちです。
六条御息所にも、もう以前のような熱意を持つことができないでいます。

難攻不落の人と思い、落とすまではあんなにひたむきに強引だったのに、今はどうしてこんなになってしまったのかと源氏自身が怪しんでいます。

六条御息所という人は、16で前春宮に入内し女宮を儲けて20歳で春宮に先立たれ、その後は、洗練された趣味の美女として孤閨を守り、今は24歳の世間の声望高い佳人です。
17歳ばかりの源氏に口説き落とされた挙句棄てられたなどという評判は耐え難いものです。
思い詰める人だと知っている源氏もそんな恥を掻かせてはいけないと気にしてはいます。

・ 霧の朝帰り

霧の深い朝、源氏は女房に急かされて眠たげに溜息混じりに出てきます。
中将という女房が、格子を一間上げて、お見送りなさいませと几帳をどけるので、御息所は頭を上げて外を見ます。

源氏が前栽の植え込みの花が咲き乱れているのを去り難く眺めているのは類ない美しさです。

・ 中将のおもと

渡廊の方に行くのに、中将がお供します。
中将は若く美しい人で、季節に適った紫苑色の薄物の裳を鮮やかに引き結んだ腰つきがしなやかで魅惑的です。

源氏は、中将を隅の間の高欄に座らせます。
打ち解け過ぎない節度ある態度も髪のかかり具合も見事だと思います。

源氏が「こんな美しい朝顔を手折らずに素通りできようか」と手を取ると、中将は物慣れた様子で、「朝霧も晴れないうちのお帰りとは、こちらにご興味がおありではないのでしょうか」と、御息所の側付きの者としての話にすり替えます。

源氏を少しでも見掛けた人は、下々の者でも、花の蔭で休らいたいと願うように、自分の好きな女や可愛い妹などをお仕えさせたいと願うようです。
まして側近くで源氏の様子に触れている中将ですから、主人の御息所との間柄を気に掛けています。
源氏が明け暮れいつも何か寛いでいない様子なことに一抹の不安を抱いています。

とても洒落た姿の侍童が、裾を朝露に濡らしながら、花の中に入り混じっています。

朝顔を摘んで奉る姿などは絵に描きたいような風情です。

見すぼらしい町家の女が扇に載せて夕顔を奉ったことと対照的な様子かもしれません。

Cf.『夕顔の巻』霧の朝帰り

眞斗通つぐ美

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?