源氏物語 夕顔の巻 概略22(幼な児の行方 )
・ 幼な児の行方
「幼い子の行方がわからなくなったと頭中将が言っていたが、そんな子がいたのか」
「はい」「一昨年の春にお生まれになったとても愛らしい姫君がおられます」
「それで、その子はどこにいるのか」「誰にも言わずに、その子を私にくれよ」「儚くなった人の形見にその子をもらえればどんなに嬉しいだろう」
「父親の頭中将にも伝えなければばらないが」「母親にああいう死に方をさせたことで恨み言を言われるのはかなわない」
「母親との関係から言っても、血筋の上からも、私の手元に置くことに問題はなかろう」
「西の京の乳母とやらにうまく言い繕って、その子を連れて来てくれ」
「そうなりましたらどんなに嬉しうございましょう」
「西の京の家などでお育ちになるのはお気の毒でございますもの」
「五条には、若い者ばかりで御養育できる者もいないからということであちらにお残ししたのでございますが、方違えの忌が明けましたら、山里の方のそれなりの邸にお連れする筈だったのでございます」
Cf.『夕顔の巻』右近の述懐2
眞斗通つぐ美